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霊童〜Lost of memory looking for end〜  作者: 秋桜
第三章『トイ・ボックスと招かねざる客』
37/41

Which one is the mirror?

 

『ねぇ、アリス。今日は何して遊ぶ?』

「ねぇ、()()()()。何して遊ぶの?」


 私と瓜二つの姿の女の子。

 顔や背丈、好きな食べ物や好みのものも同じ。

 世間では私たちの事を双子なんて堅苦しい呼び名で呼称するのね。

 けど、それは正しい言い方じゃない。

 もっと深い関係で結ばれてる特別な存在。


『またお父さんの目を盗んで遊園地に行きましょう?』

「遊園地に? 使用人さんがあまりチョコは食べ過ぎちゃいけないって言ってたよ?」

『そうね。でも、大丈夫よ。私たちが大騒ぎすれば必ずくれるから』

「それだとアリシアが怒られちゃうよ。もっと安全な方法を考えないと」

『心配性ね、アリス。じゃあ────』


 ─────コンコンッ!


「失礼します。お嬢様、旦那様がお呼びですが……お邪魔でしたか?」

『ごめんね、アリス。ちょっと行ってくるわね』

「気にしないで。お父さんが呼んでるんじゃ、仕方ないから」


 クライム・ストレリチア。

 私のお父さんの名前で一番理解してくれない分からず屋。

 幼少期の頃から厳しくて勉強も稽古も食事の作法だって、毎日同じように繰り返し言いつけられてきた。

 嫌になって家出を決意したけど失敗。

 お父さんには私の気持ちがわからないのよ。

 でも、何故か最近のお父さんは人が変わったように話しかけてくることが多くなった。


『あまり寝れていないのか?』

『チョコが好きなのか? 今度一緒に買い物にでも行かないか?』


 なんだか弱々しい感じで私を見る目は怯えている。

 私が好きな食べ物だって知ろうとはしなかったのに、こっそりメモしてるくらい知ってるのよ?

 だから、今日という今日は聞いておかないと。

 部屋まで歩くといつもは椅子なのに来客用のソファーにお父さんは座っていた。


「アリシア、調子はどうだ? 今日は街に出かけたりしないか? 絵本とかも結構、品揃えが良くなってた」

『絵本? 私は小さい子どもじゃないわ』

「その、一緒に食事でもどうだろう。海鮮料理にデザートも豊富なレストランとか」

『お父さん! いい加減にして! 私に対してなんでそんなにも余所余所しいの!? 私の好みなんて興味すらなかったのに!?』

「お父さんもほら、仕事とかで忙しくてなかなか構ってやれなかったからだろ? だから……」

『もういい! お父さんなんて知らない!!』


 私はわざと大きな足音を立てて自分の部屋に戻る。

 誰も私を見てくれないもの。

 誰も私のことを見ないもの。

 お父さんも、使用人も、誰だって私のことなんかどうだっていいのよ。

 ベッドのシーツごと身体を覆うとそのまま蹲る。

 このまま誰にも見つからずにいれば少しは心配してくれるかしら。

 別にどうでもいい。私のことなんて、みんな────。


「────アリシア、みーつけた」

『アリス……どうして?」

「なんか音が聞こえたからこの部屋に隠れたんだけど、そしたらアリシアが泣いてたから」

『誰が泣いてるのよ、誰が』

「ほらっ、泣かないで。よしよし、アリシアは一人じゃないよ。アリシアには僕がいるよ」


 そうだ。私にはアリスがいる。私は一人じゃない。

 他の人間、ましてやお父さんには理解できない私だけの存在。

 アリスの胸に飛び込むように抱きついた。


「おっと、どうしたの?」

『怖かったの。お父さんにまた怒られるかもしれなくて』

「よしよし、もう怖くないよ。アリシアは僕が守る」

『ホント?』

「うん、心配しないで。僕がアリシアの傍にいる限り、絶対に守るから。安心して」

『……うん。ありがとう、大好きよ。アリス』

「僕も大好きだよ、アリシア」


 私たちは瓜二つ。

 唯一無二の理解者で誰にも理解されることのない二人。

 誰にだってない私たちだからこそ理解できること。

 私とアナタ、二人だからこそ通じ合う。

 二人だからこそ私たちは存在する。


「ちょっと〜、我輩を忘れては困るな〜」

『チェシャ!? もぅ〜、せっかくアリスと二人っきりだと思ったのに〜』

「チェシャも寂しかったのかな?」

「だって二人して仲良くなってたから邪魔したくなっちゃった〜」

『仕方ないわね。特別に私の膝元なら許すわ』

「やった〜」


 ♢


 他愛もない二人と一匹の会話。

 双子でも姉妹でもない二人、アリスとアリシア。

 片方は金髪で、片方は()()()

 ────けれど、これは既に過去の出来事。

 終わりゆく夢に向かっていく彼女の記憶。

 何かを変えようとしてもそれは遅すぎてしまった。


 これは失われた記憶の断片。

 私が思い出す、僕の思い出せない楽しかった思い出。


────望んでたモノは、ただ一人の理解者なのに。

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