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02話 赤い髪の少女

「ふ~、さっきはマジで漏れるかと思ったぁ~」


度重なる妨害にあいながらも、ようやく用をすませた爽快感につつまれながら先程の戦闘を思い出す。

あの子がゴブリンと呼んでいた化物はどう考えても地球にはいない生物だった。

となると俺は本当に異世界に転移してしまったのだろう。


「ちょっと」


異世界かぁ、漫画やアニメを見ている時は行きたいと思っていたがいざ自分がその立場になると少々気が引ける。

考えても見て欲しいんだが、さっきのみたいな化物が普通に森にいる世界だ。きっと人間の生死が日本なんかとは比べ物にならないぐらい身近なんだろう。


「ちょっとあんた聞いてるの!?」


とはいえいつまでも及び腰じゃいられないな。転移してしまったものはしょうがないし、とりあえずはこの世界で生き抜くことを第一に考えよう。

そうだな、まずは街を目指してグヘッ


これからの事を考えていたら急に後頭部に衝撃が走った。

後ろを振り返ると赤髪の女の子が顔まで真っ赤にして仁王立ちしていた。

「いってぇな!なにすんだよ!?」

「あんたがこの私を無視するのがいけないんでしょ!」


こいつ、さっきはあんなにフラフラだったのに元気が有り余ってるみたいだ。


「だからってお前、命の恩人を殴るか普通?」

「う、それは感謝してるわよ」

「大体お前、なんでこんなところであんな化物に追われてたんだよ?」

「ねぇ、そのお前って言うのやめて!私にはエレナって言う名前があるんだから!」


エレナと名乗った少女は赤い髪をはらい、私は不機嫌ですと言わんばかりに鼻をならした。


「悪い悪い、俺は龍斗だ」

「リュート?変わった名前ね!」

「リュートじゃなくて龍斗なんだがまぁいいか。で?エレナはなんであんなのに追われてたんだよ」

「それは...どうでもいいでしょそんな事!あんたこそなんでこんなところにいるのよ!」


自分の事ははぐらかすのに俺には聞いてくるのかよ。


「俺にもいろいろあるんだよ」

「まぁいいわ!ひとまずここから離れましょう。血の匂いにつられて他の魔物が寄ってくるかもしれないし。少し行った先に荷物を置いてきたから回収して森を抜けるわよ!」


エレナはそう告げると歩いていく。

どうやらホブゴブリンから逃げる際に荷物を全て投げ出してきたみたいだ。

有無を言わさない勢いに負け、俺は後についていくしかなかった。


するとエレナは突然振り返り

「忘れてたわ!ホブゴブリンから魔結晶回収してないじゃない!」


と言うとナイフを取り出しホブゴブリンの死体に向かったかと思うことホブゴブリンにナイフを突き刺し始めた。

何してるんだこいつ。急に死体をいじりだしたぞ。

そんなにホブゴブリンに恨みが溜まっていたんだろうか。


そんな事を考えながら眺めているとエレナが黒い宝石の様な石をこちらに投げてきた。


「あんたが倒したんだからそれはあんたの物よ!」

「なんなんだ?これ?」


俺は疑問を口に出すとエレナは心底呆れたと言わんばかりの顔をした。


「あんたどんな田舎に住んでたのよ!魔結晶も見たことないの!?」


なんだが物凄く馬鹿にされてるみたいが、そんな事言われても知らないものは知らないので大人しく聞いてみる。


「知らないから教えてくれ。これは何なんだ?」

「しょうがないわね。いい?それは魔結晶と言って文字通り魔力の結晶よ!主に魔道具の動力源として使われているわ!魔力濃度の濃い場所や魔物の体内で生成されて、大きいものだととっても高値で取引されるんだから!」


知識を披露できるのが嬉しいのか、エレナは得意げに胸を張った。

ここはおだてておくか。


「エレナは物知りなんだな」

「当然よ!私はフィオガ辺境伯の娘なんだもの!王都の学校に行っても恥をかかないようにずっと勉強と鍛錬を続けてきたんだもの!」


エレナはハッした顔をこちらに向けた。

何を慌ててるんだろうか?


「だからあんなに剣も上手だったんだな。なんていうか凄い綺麗だった!」

「うっさいわね!あんたみたいな素人に私の剣のなにが分かるのよ!」


そう言いエレナはそっぽを向いてスタスタと歩き始めてしまった。

素直に賞賛したつもりだったんだけどちょっとクサすぎたかな?

なんてことを考えながら俺は彼女の後を追いかけるのだった。



「それじゃああんたはトイレしようとしたら森にいたって言うの?」

「だからさっきから何度も言ってるだろ!本当に気が付いたらあの森にいたんだよ!」


現在俺たちは森から少し離れた平原で休憩していた。

あれからエレナと森の中を歩き、ホブゴブリンから逃げる時に置いてきたという荷

物を取りに行った。


残念ながら食料は動物に食い荒らされていたがテントやその他の道具は無事だったので回収することができた。

今は森から少し離れた小川でなぜ俺が森の中にいたのかを離していた。


「ふん!まぁいいわ!本当の事を言う気になったら話してちょうだい!」

「本当のことを言ってるんだけどなぁ」


エレナには異世界からきたということは伏せ、トイレに入ったら森にいたと言ってある。

どうやら唐突に転移したなんて話は異世界でもなかなか聞かないらしく半信半疑のようだ。


「で?あんたこれからどうするのよ!」

「...考えてなかったな」


ここが異世界なのは確定として、これから俺はどうすればいいんだ?帰る方法を探すか?帰る方法なんてあるんだろうか?

いや、そもそも俺は元の世界に帰りたいのか?

好きな漫画やアニメの続きが見れないのは残念だけど、それだけだな。


「行く当てがないなら私の家にしばらく滞在するといいわ!」

「いや、そんな事言ってもお前...」

「いいのよ!私の家は貴族なのよ?あんたはその私の命の恩人なの!お父様も邪険にはしないはずよ!」

「本当にいいのか?自分で言うのもなんだが、俺ってかなり怪しいぞ?そんな人間を家に招待するなんて」

「良いって言ってるでしょ!それにあんたを見てたらなんだかワクワクすんのよ!これから楽しいことが始まりそうな予感っていうの?だから私は私の直感を信じるわ!」


エレナはニカッと満面の笑みを浮かべた。


「それに命の恩人を野垂れ死にさせるような恩知らずにはなりたくないわ!」


それだけ言うと照れくささを隠すようにそっぽを向いてしまった。

なんだか真正面から命の恩人と呼ばれて俺も気恥ずかしくなってきた。


俺とエレナの間に少しの沈黙が流れた。


「そ、それじゃあ今後の方針を固めるまではエレナの家で世話になろうかな」

「え、ええ!それがいいわ!」


若干妙な空気になったが、ひとまず俺はエレナの家に滞在することになった。


「ところでエレナは貴族なんだろ?なんでこんな森に1人でいたんだ?」

「それは…」


なにやら言い淀むエレナ。


「何か言えないようなことなのか?」

「そういう訳じゃないけど…はぁ」


何かを諦めたようにため息を吐くと森に1人で来ていた理由を話してくれた。

まとめるとこうだ。


エレナの父はそれはそれは娘を可愛がっているのだが、その娘が15歳になったら王都にある学校に通いたいと言ってきた。娘と離れ離れになるのが嫌だった父はそれを却下。

エレナは己の実力を示せば父も入学を許可してくれるだろうとゴブリンを狩りに来たのだが、ゴブリンの集団を倒した後に運悪くホブゴブリンと出くわしてしまい逃げていたそうだ。


なんとういうか、エレナの父も父だがエレナもエレナだ。

入学を却下されたので、実力を示せば許可がおりると考えるその脳みそは筋肉で出来てるんだろうか?


「それって結局、実力を証明しても親父さんが許可をだしてくれるか分からなくないか?」

「お父様は何よりも武を重視しているわ!私が実力を示せば絶対に入学を許可してくれるはずよ!」


どうやら親子揃って脳筋だったらしい。


ふむ、学校か。そういえば俺も高校受験を控えた学生だったんだよな。あれ?ってことはエレナと俺って同い年なのか?


「その学校って俺みたいな一般市民でも入れるのか?」

「リュートも学校に興味があるの!?」


エレナは身を乗り出してキラキラした目を向けてきた。


「あ、あぁ。ちょっと興味があってな」

「それなら一緒に通いましょう!!リュートは私の命の恩人なんだもの!お父様だって入学金ぐらい払ってくれるわ!」


そこまでしてもらうのは流石に申し訳ない気がするが、何はともあれエレナの親父さんと話してみないとな。なにせ滞在も許可をもらったわけではないのだ。


「とりあえず街に向かおう。それからの話は実際にエレナの親父さんと話し合いながら決めよう」

「リュートがそれでいいならいいわよ!お父様もリュートを気に入るはずよ!魔力強化も凄かったし!」


ん?魔力強化?よく分からない単語が出てきたけどとりあえずスルーしておく。


「じゃあ休憩もここら辺にして街に向かおうか」

「分かったわ!街まではあの丘に見えている街道をまっすぐ行けば着くわ!行きましょう!」

そうして俺たちは歩き出すのだった。

ここまでお読み頂きありがとうございます。


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