第7話 前日
「うっせーな、筋肉痛だから仕方ねーだろ」
不満げに言いながらも、壁に手を付けながら宿の部屋に戻りベッドで横になる。全身の痛さで今日は何もやる気が起きない、てか動きたくない。
「今日はどうする? 魔物狩るかそれともレベル上げかどっちにする」
「どっちも同じじゃねえか」
ジルには悪いが本当に前進が痛いのでそっとしてほしい。こうなるんなら前世からちゃんと運動すればよかったと後悔してる。大体休日は家でゲームばっかしている人が急に異世界に来て無双することは夢物語でしかない。
「働きたくないでござる」
「なにニートみたいなこと言ってんのよ」
そう言いながら翔太の太ももを軽く叩く。
「うぎゃああああ」
「・・・ごめん、そこまでひどいとは思わなかったわ」
少し涙目になりながらも耐える。
「お願い、筋肉痛の痛みが引く薬があれば買ってきてください」
「しょうがないわね、サ〇ンパス買ってくるからじっとしてなさい」
この世界にサロンパスがあるのかよとツッコミたくなったが、その気力は今はない。それよりも、知らない薬よりも知ってる薬の方が良いので安心する気持ちが大きい。
「じゃあついでに今日の分の宿泊費からってください」
翔太はジルに500エイナ渡す。彼女は任せてと言わんばかりの顔でお金を受け取り部屋を出る。いざ1人になると暇だ。前世ではスマホなどで暇を潰せるが、それを持っていないのですごく暇。
「はああ。暇だ」
思わずため息を吐く。体を仰向けからうつ伏せにし顔を枕に埋め込みながらこれからの事を考える。今の目標としてこの里の北にある洞窟にいるキッズギドラという魔物を倒すことだが、その後はどうしようと考える。
「(旅に出るはいいが、どこに何があるかも分からないし)」
この世界の地理は何も知らないのでどこに国があるか分からない。そんなこと考えていく内に、うつ伏せのまま寝てしまった。
「・・・ざめよ。目覚めよ勇者よ」
なんか女性の声が聞こえる。なんか違和感があるが寝てしまったのか頭が冴えないのでそんなことはどうでもいい。勇者って言ってなかったっけ。僕また転生してしまったのか、いやまだ死んでないから転移か。頭がボケたので普通に信じて飛び起きた。
「ここはど・・・こ」
そこは何も変哲もない宿の部屋だが、今翔太の目の前に鼻を摘みニヤニヤしながら翔太を見ていたジルがいた。
「っぷ」
「お前かよ」
そう言いながら枕をジルに投げる。たった一度だけだったが転生された経験があったのと、寝ぼけた頭だったので信じてしまった。
「いやー、ただ起こすだけだと面白くないなーと思って」
「お前、意外と悪戯が好きな性格なんだな」
ジルの意外な一面を見た翔太は、ヤレヤレと呆れた顔で思う。少し寝たおかげか筋肉痛が少し治った気がする。あくまでも気がしただけで結構痛いことには変わりなく。
「いででででで」
「急に起きるから。はいこれ、サ〇ンパス」
ジルの手には薬があるにはあった。だが翔太が思う物ではなかった。それは・・・
「錠剤かよ」
「え、サロンパスは錠剤タイプしかないよ。文句言ってないで飲んだ飲んだ」
薬と一緒に水が入ったコップを翔太に渡す。彼は薬をまじまじと見ており、不思議な目で見ていた後にゆっくりそれを見た後に飲んだ。
「な・・・な・・な」
「どうしたの、気分が悪くなったの」
見るからに彼の様子がおかしくジルはすごく慌てる。もしかして薬が彼に合わなかったのか、
「治ったあああああ」
「早くない、ねえ、さすがにここまで早く治ると思わなかったよ」
あまりにもなるのが早すぎたので一瞬コケそうになった彼女だったが、翔太の元気な姿を見て安心する。翔太は飛んだり跳ねたりしており、全身の痛みが嘘のように動き回ってた。いや、ここまで元気になると想像してなかったが。
「本当に感謝するよ」
「そ、そう。元気になったらよかったわ」
元気になったところで本格的に明日の準備に取り掛かろうとする。必要なものを再度確認して買い物をする。
「毒消しは買ったよね、翔太」
「5個買ったよ。ジルは」
「もともと持ってたから大丈夫よ。それよりも、翔太の武器大丈夫?」
装備しているロングソードを見ると一見まだまだ使えるように見えるが、よく見ると若干刃が欠けてるところもある。最初のと比べて切れ味は落ちたがまだ使えるであろう。
「大丈夫だよ、充分使えると思う」
「翔太が良いならいいけど」
そうしていく内にいつの間にか日が落ちていた。は翌日に待ち合わせの場所と時間を決めてジルは家に翔太は宿屋に行った。
宿屋の部屋でベッドに横になるが午前結構寝たせいなのか全く眠くならない。ラスボス決戦前日でもないのに結構緊張して眠れないのもある。むしろ、何のせいで眠れないのかが分からなくなってきた。
「(眠れない、というかこっちの世界に来た時から睡眠の質が悪くなってる気がする)」
というのもやはり自分の使い慣れた布団や枕の方が寝やすい。こういう考えが故郷の日本がより愛おしく感じる。
「(親や友達今頃どうしてるかな。死因は階段からの落下死だから多分笑ってるだろなあ)」
落下して死亡したことを急に思い出し恥ずかしい気持ちになる。何かさっきよりも眠気が覚めたような気がする。
「(だめだ。地球にいた頃を思い出すとさらに寝付けなくなる)」
目を閉じて無理矢理にでも寝てやるという気持ちになった彼だった。
翌日
二人は中央広場で待ち合わせという約束をしたが、しばらく経っても翔太は来なかった。彼女はてっきり早く来たのかと思ったがいつもはもっと早く彼は来ていたが今回は違った。いくら待っても来る気配がないのだ。
「何してるのよー。あいつビビッてバックレたんじゃないでしょうね」
彼女はイライラしながら街中であるにも関わらず叫んでいた。
「もういっそのこと翔太が泊まってる部屋に行ってやるわ」
プンスカと怒りながら彼の泊まっている宿に行く。
彼の泊まっている部屋に着き、何やらボソボソと呟いてる声が聞こえた。彼に何かあったのではと思ったが彼女はそんなのは気にしてなかった。
「翔太、何や・・・って」
そこには、どこから手に入れたか分からないアイマスクを着けながら(羊が6842匹、羊が6843匹)と言っている翔太がいた。どうやら彼はジルが来たことに気づいていない。彼女は無言で冷たい目をしながら矢を取り出し彼の頭を刺した。その時の悲鳴が里中に響いたという。
2人は里の外を歩いており、翔太の頭はまだ矢が刺さっているのと顔は血まみれだ。そんな彼をほっといてジルはなぜか怖いほどニコニコしている。
「ありがとう、おかげで目が覚めたよ。でもあともうちょっと永眠しそうだったけど」
そう彼は乾いた笑いをしながらジルに言う。恐る恐る彼女の機嫌を伺うと。
「大丈夫よ気にしてないから、決して君を囮にするとか思ってないから決して」
「絶対思ってるよね、今回仕留める魔物を囮にしようとしてるよね完全に」
魔物を必死で倒した後よりも汗がでる。この人恐ろしい娘だと思う、人ではなくエルフだけど。
「ほんと勘弁してください、僕が悪かったです」
彼女の目の前で深々と頭を下げたその姿は綺麗な90度をしていた。
「じゃあ、今日の夜君の奢りで」
「分かったよ、それでいいんなら」
とりあえずホッとした翔太だが、この恐ろしさは忘れないだろう。そんなバカやってるうちに2人は北の洞窟に着いた。
「思ったり普通だな」
「洞窟に地味も派手もないでしょ」
2人は洞窟に入りそれぞれ武器を構えながら進み緊張状態が続く、翔太はこの場所にくるのは初めてなので警戒心が高い。突如奥からコウモリ型のモンスターが3匹出てきた。
「くそ、コウモリにギリギリ届かねえ」
「こいつらブラックバットよ、血を吸われないように気を付けて」
思ったより天井が高い上に飛び回るので攻撃がなかなか当たらない。その時、ジルの矢が1匹のブラックバットに当たり動きが鈍くなり、これはチャンスだど彼は思いっきり斬った。その調子で残りの2匹の魔物も無事に倒す。
「ありがとう、矢のおかげで倒しやすかった」
「さすがにあれも弓だけで対処は難しいからお互い様よ」
あれからブラックバットは遭遇するが二人のコンビネーションにより難なく攻略する。しばらく歩くと広い場所に出た。その広場の中央には大型犬ぐらいの大きさに太い手足、大きい翼、さらには硬そうなウロコがついた魔物がいた。そうこの魔物こそが<キッズギドラ>だったのだ。
そろそろ序章が終わりです。まだまだ物語の本編には到達してませんがブクマや評価お願います。




