第14話 遭遇
翔太とジルとフィースは昼食を食べて再び旅の歩みを進める。しばらく森を歩いているとどこからともなく雄叫びが聞こえてくる。あまりのうるささに三人は耳を塞ぐ。
「な、何なんだよこれは」
「知らないわよ」
すると目の前には大きな爬虫類っぽい足が空から降りてきて、着地と共に地響きがする。翔太は大きい魔物の全体像を眺める。それは途轍もなく大きいドラゴンだった。
「おいおい、どうすんだよコレ」
「落ち着いてください。とりあえずドラゴンに刺激を与えないように」
慌てふためく翔太はフィースの言葉に従い深呼吸をして取り戻す。ドラゴンはゆっくりとこちらに振り向く。
「攻撃をしてはいけません。僕たちの実力ではあっという間にやられます」
「わ、分かっているわ」
三人とも冷や汗がゆっくり頬を伝って落ちていくのを感じ取る。今すぐこの場から立ち去りたいそんな思いが徐々に湧いて出てくる。しばらくこちらを見ていたドラゴンは興味なしというような顔をして羽ばたきで再び飛び去って行く。
「っあああ、心臓が飛び出ると思ったー」
翔太はとフィースは膝に手を置き、ジルは完全に腰を抜かしている。そんなに体は動かしてないのに息切れをしていた。まるで呼吸という動作を忘れたかのような状態を永遠のような時間を感じ取ったからだ。
「あれは確か、ヘルカイトという地獄の門番と言われるほどのドラゴンです」
「私たちがいくら強くても勝てないよあんなの」
翔太は飛び去るドラゴンを見てふと思ったことをつい口走る。
「なあ、ジルとフィース。あのドラゴンが飛んでる方向って僕らの目指している方向と同じじゃね」
その言葉を聞いた二人は少し固まる。
「そ、そんな不吉なこと言わないでよ」
「多分、翔太の考えすぎでしょう。それと、ドラゴンは滅多に人を襲わないので大丈夫だと思います」
「それは、ごめんなさい」
翔太は頭を下げて二人に謝り、三人は気合を入れ直して旅をする。魔物に襲われながらも、友に助け合って戦っていく。
「やったわ、レベルアップしたわよ」
ジル・アレクシア Lv.8
<体力> 87
<魔力> 52
<力> 43
<知力> 51
<俊敏> 70
武器 コンポジットボウ <スキル> 矢の装填速度が上がる(小)
「ジルってさ、俊敏の数値結構上がったな」
ウィンドウを見た通りにジルのステータスは俊敏が高い。この項目は足の速さ以外にも持久力も関わってくるので以外と冒険者達からは重要視されていることをフィースから説明された。
「戦闘中はずっと動きっぱなしだもんな。高いに越したことないか」
空を見るともう真っ赤になっていた。今の場所は森の中かつ少し開けた場所にいた。ちょうどいい場所なので暗くなる前に野営の準備をする。
「夜に出てくる魔物は強いからね」
「何が出てくるのさ」
昼と夜に出てくる魔物の違いが気になったので聞いてみることにする。里にいた時は夜で外に出る事は無かったので疑問になることは無かった。今は夜に行動するかもしれないので疑問に出た翔太。
「それはですね。幽霊や妖怪の類の魔物が出てくるからです。そういった魔物は結構強いので戦うことはお勧めしません」
「幽霊も魔物として出てくるのか。さすが異世界だな」
翔太は苦笑いをするが、それをみたジルは彼を煽る。
「もしかして翔太は、そういうの苦手なの?」
翔太を見てニヤニヤしながら焚火の作業をするジル。それに対し翔太は少し焦った表情で答える。
「ち、ちげーよ。怖いものは怖いし、怖くないものは怖くないんだよ」
「・・・何言ってんのよ」
「大丈夫。その類の魔物は火と光などの明るいものは苦手ですから」
ジルにはジト目で、フィースは可愛いですねっと思っているような笑顔で見られる。
「それはそうと、昼にとっておいた物を食べますよ」
三人は道具袋から食材を取り出しジルが完成した焚火で焼く。
「焚火なんて、フィースの魔法でやれば良かったような気がする」
「何言ってるの。魔術師にとって魔力は貴重だからね、そんなことで使ったら無駄になっちゃう」
「そうか、すまないなフィース」
「大丈夫ですよ、気にしてないので」
そんな他愛ない会話をしながら楽しく食事をする。ここの世界にきて一か月も経っていないのに、この世界も悪くないと思い始める翔太であった。
~翌日~
朝日に眩しく顔を照らされて翔太は起きる。残りの二人はもうすでに起きているようだった。
「ねえ、近くに川あったっけ」
「川は無かったけど池なら向こうにあるよ」
ジルの指を指した方向に行く。少し進むと綺麗で小さな池がありそこで顔を洗い眠気を覚まし、元の所に戻り後片付けをして出発する。
「計算通りに行けたのであれば、お昼ごろ村に到着する予定です」
「それじゃあ村で昼食を食べるか」
また暫く三人は歩く。村に近づくにつれ魔物の群れに出会う事が多くなってきた。ゴブリンやコボルトの魔物は単体では弱い魔物だが、群れだと対処は少し厳しくなっていく。
「はぁ、これで何体目だよ」
「翔太腕に傷だよ、ほらポーション。確かに群れが多いわね」
「フィース、魔力の残量大丈夫か」
「魔力のポーション何個か常備ているのでご心配なく」
翔太はフィースの接近攻撃の手段がこの戦いの中で気づく。ジルは接近された時のための対処法はあるがフィースには無かった。なので彼は持っているダガーをフィースに渡す。
「いいんですか」
「どこでも買えるダガーだから大丈夫だよ。なんならコレあげるよ」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げて翔太に礼を言う。何度も二匹以上の群れに何度も戦闘になるが、フィースは彼に渡されたナイフを左手に杖を右手に持って戦う。さっきほどの戦いよりも戦いやすくなっている様子。
三人はついに村に到着する。予定よりも遅くなってしまったがようやく村に着いたという安心で一気にこれまでの疲れが出てくる。
「よーやく着きましたねローヌ村。ですが何か荒らされたような跡がありますね」
フィースが言った後、翔太とジルも周りを見渡すと畑や建物も言った通りに荒らされている。気になった翔太は近くにいた村人に話しかける。
「すみません、何かあったのですか?」
「最近、ゴブリンやコボルトの群れに畑を荒らされて困っているんだよ」
原因は魔物の群れだった。まさか群れが昼夜問わず問題になっている事にため息を吐く。その問題にフィースが疑問を持つ。
「おかしいですね。魔物の名前を聞く限り昼型の魔物です。通常ならば、巣穴で寝ているはずなんですけどね」
「この問題が解決できりゃあなんでもいいよ」
男はどっか去っていく。三人はとりあえず道中戦ってきた魔物の魔石を換金する。群れのおかげでお金に余裕ができ、ついでにこの村で少し遅めの昼食をとることにしてレストランに入る。
「王都より少し高いね」
畑が荒らされたせいなのか値段が少し高騰していた。
昼食を食べ終わった後レストランから出ると、村の物見やぐらにいる人が
「群れが来るぞ。戦える奴は武器を持て」
と叫ぶ。その数は二十数体ほど。そこら辺のハンター四、五人だと苦戦するレベルだったが、翔太達含め集まったのはざっと5人ほど。多少苦戦はしてしまったが何とか全滅させる。
「・・・ふぅ、とりあえず今のところ被害はないな」
「村で戦える人少ないですね、原因を突き止めないと酷くなると思います」
原因とは言ったもののどうやって探っていくか分からず悩める三人だった。
「あ、いい事思いついた。ちょっと聞いてよ」
ジルが何かいい案を思いついたみたいだ。翔太とフィースは彼女の考えた案を聞く。
「シンプルでいい案だな」
「次来た時のために準備しましょう」
三人は宿で次の群れに向けて体を休めることにする。




