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第10話 新しい土地

 翔太とジルはエルフの里を出でる。とりあえず、里の東側にあるとされる王都を目指す。二人は魔物と出くわしながら森を進む。


 「もう見慣れた魔物ばかりでつまらなくなってきたよ」


 「それもそうね、でも金稼ぎになるから我慢してね」


 そんなやり取りをしていく内に森を抜けていく。その先は、緑が広がる草原と白く高い壁に囲まれた王都があった。そして、その中には大きい城がある。


 「絶対あれが王都だな」


 「ええ、結構立派な街だね」


 二人はつい呟くほど立派な街だった。王都を見た途端翔太の足取りは軽くなる。


 「ちょっと待ってよしょーた、歩くの速くない?」


 「だって早く見回りたいもん」


 翔太は止まりジルの方へ見て言う。その時、大きい影が翔太を覆った。ジルの顔は青くなりながらも武器を構える。翔太は一瞬何が起きたか分からなかったがジルの顔つきで察する。


 「なあ、後ろに何かいるんだろ。確実に何かいるんだろ」


 「いるよ。確実に私たちを食べようとしてるわね」


 翔太は後ろを向く。そこには大きく佇む熊の魔物がおり、今にも翔太達を食べようとしているのか涎を垂らしている。


 「ぎゃああああ熊だああああ」


 大きく叫びジルの所へ向かいとりあえず武器を構える。


 「ちょっとうるさいわよ、あまり気に障らないようにして隙があったら逃げましょう」


 ゆっくりと大きい熊の方を見ながらなるべく興奮させないよう後ろへ下がる。なぜか熊の魔物は動く気配はしないが、ジルと翔太はどうしていいか分からず固まったままでいる。すると、熊の魔物は白目を向きながらゆっくりと倒れていった。


 「大丈夫かい、君たち」


 倒れた熊の魔物の後ろにいたのは豪華なフルプレートと青いマントを羽織っており、武器は背丈と同じぐらいの大きさをした大剣を装備した騎士がいた。その騎士は二人の前に


 「大丈夫ですよ。特に怪我はないです」


 「あなた、只者ではないでしょう。何者ですか」


 ジルはフルプレートの騎士に聞く。


 「私はイルグス、王都アルカナの騎士団団長を務めています」


 「騎士団団長ってなんですごい人がこんなところに」


 翔太は感じる、団長の強さは僕の倍はあると瞬時に分かった。漂う歴戦の雰囲気、覇気を感じたのだ。ただ疑問が残り、なんでそんな立派な人がここにいるのか。


 「目的はこの熊の魔物<グリズリー>なんだ。この魔物はこの辺りに生息しないはずなんだけどねなぜかここにいるって情報が来たんだ。で、こいつ並の戦士三人四人束になっても勝てない相手でね私が呼ばれてここに来たんだ」


 「なるほど、ご丁寧にありがとうございます。僕は翔太です」


 「ジルです。よろしくお願いします」


 「ああ、困ったときは私に頼ってくれ」


 そう言いイルグスはお辞儀をした。人柄も良く実力も高い、あの大きいグリズリーを素早く倒すほどに強い。結構女性陣に人気あるんじゃないかと考える翔太だが、その時うしろにいたグリズリーがゆっくりと立ち上がった。


 「「後ろ後ろ、イグルスさん」」


 「え」


 イグルスが後ろを振り返るがグリズリーを見た途端、パクっと彼の頭が食べられた。


 「「団長が、食べられたあああああ」」


 翔太とジルは叫び慌てるがイグルスの声で落ち着きを取り戻す。


 「あー、大丈夫だよ。もうこの魔物は死んでるから」


 「いや、なんでこの状況で冷静でいられるの」


 「ジル、多分この人天然だわ」


 とりあえずグリズリーの口を開けて彼の頭を開放させようとする二人。すると、どこからか女性の声が聞こえる。徐々に大きくなってくる声に少なくともこっちに向かってくる。


 「何か声がするね」


 「だな、何だろう」


 声のする方へ目を向けると馬車が高速でこっちに向かってくる様子が見られる。


 「ねえ、あれヤバいんじゃないか。馬車ってあんなに速かったっけ」


 「知らないけど馬に速度アップの効果がある魔術をかけてるんじゃない。兎も角避けるわよ」


 ジルと翔太は前に飛び出て回避する。二人が飛び出した途端グリズリーが高速馬車に当たってぶっ飛ばされた。団長も一緒に。


 「あっぶねえ、誰だよ馬車に乗ったやつ。僕の世界だとスピード違反で捕まる速度だよ」


 「ねえ翔太、イグルスさん忘れてない」


 「あ」


 あまりにも急な出来事だったので二人はついイグルス団長のことを忘れてしまった。しかも、遠くでグリズリーと一緒に倒れてる。グリズリーの口にイグルスの頭が食べられる寸前だったがぶっ飛んだ勢いで離れていた。そして、馬車は二人の目の前に止まっている。


 「なあそこの二人、イグルス団長を知らないか」


 高速で馬車を操った人は銀髪で長い髪をした女性だった。その女性は先ほどのイグルス団長とほとんど同じ装備をしている。違う所と言えばマントの色が緑なのと、腰に差している2本の直剣がある。


 「あー、イグルスさんなら向こうで倒れてます。さっきまで元気だったんですけど」


 ジルは倒れているイグルスを指さして御者の女性に説明する。御者の女性はため息を吐きながら倒れているイグルスの所へ向かう。


 「あの、あなた一体」


 翔太はつい思ったことを口にしてしまった。あ、ヤバいと思いつつも彼女の正体も知りたいと思ってしまう。彼女は歩んだ足を止めてゆっくり振り返る。


 「紹介が遅れました。私マリアと言います。アルカナ騎士団副団長を務めており、只今彼イグルスを迎えにいったところです」


 これはまた大物と思われる者が現れた。翔太とジルはポカーンと口を開けたまま呆然としている。あっと思い出したように翔太は自分も言わなきゃと。


 「僕は翔太と言いこの世界を旅している者です。まあ、旅して日は浅いですが」


 「私はジル。翔太と同じ旅をしているわ」


 ジルが自己紹介が終わった途端マリアは軽い会釈をした後再びイグルスの所向かう。


 「団長、こんな所で寝ないで職務に戻りますよ」


 「あ、ああ、そうだな。速く戻らないと行けないな。痛くは無いが衝撃がすごく、視界がまだ揺れてるから少し待って」


 団長は右手で頭を支えている。どうやらまだ視界が定めっていないようだ。そこにジルと翔太がここに向かう。


 「おーい、大丈夫ですか」


 翔太は大きい声でイグルスの安否を問う。上半身が起き上がっているところを見ると無事のようだ。


 「大丈夫ですよ、団長はこんなんで死にはしませんから」


 表情を変えずにいつも通りの声のトーンで言う。それには翔太とジルは苦笑いする。イグルスとマリアの関係性がかなり気になるところ。


 「よし、大丈夫だ。アルカナに戻ろう」


 イグルスが立ち上がりマリアに言う。その後彼は大剣を背中に差して馬車に乗る。


 「そういえば君たち、行く宛てはあるのか」


 相変わらずの無表情っぷりで何考えているか分からない彼女。その質問に正直に答える。


 「とりあえず、王都アルカナに向かおうとしているところです」


 「ならば団長と一緒に馬車に乗るがいい、ついでに送るよ」


 「ありがとうございます」


 意外と親切な人かもしれない。無表情は相変わらずだが。翔太は嬉しそうに馬車に乗るがジルは納得いかない様子だ。翔太の肩を掴み、


 「翔太大丈夫?あの馬車高速で移動した事忘れてない」


 と耳元で囁く。


 「完全に忘れてた。でも、せっかくだし乗せてもらおうよ」


 「どうした。早く乗れ」


 「はぁ~。分かったよ乗ってやるわよ」


 なぜかある意味前に戦ったキッズギドラの戦う前より緊張しなくもない。二人は意を決して馬車に乗る。


 「お、翔太たちも乗るのか。この馬車に乗るならしっかり捕まった方がいいぞ」


 「「(ですよね~)」」


 翔太は団長の隣に、ジルは翔太の正面に座る。予想通りに高速で行くことが確定したことで二人は固唾を飲む。マリアの方に視線を向けると杖を取り出し馬に魔術を唱ているところだった。


 「魔術【俊足】、よし移動するから捕まって」


 マリアが言った後すぐに馬車は高速で移動する。ぶっ飛ばされそうになりながらも、翔太は手すりをジルは椅子の足をしっかり捕まる。あまりの速さに翔太とジルの体は地面と平行になっていると同時にこの馬車に乗ったことを後悔するのであった。


イグルス・アルガーナ アルカナ騎士団団長 武器:アルカナの大剣


団長のイグルスはその立場通りアルカナの騎士団の中でも最も強いが、それでもまだ高みを目指している。まるで、誰かに追いつくために。





マリア・エスパルダ アルカナ騎士団副団長 武器:アルカナの双剣


副団長を務めており、補助魔法で味方をサポートしつつ前衛にもなる攻守ともに優秀な騎士。めったに表情を表に出さないがとても仲間思いな人。

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