第3話
「ここはどこだ?。」俺は見渡す。
ここはどこかの室内。
書斎のようだ。
それよりなんだ?コレは?。
眼鏡をかけているとクラクラする。
この感覚は目が悪くなる前に、子供の頃、ふざけて父親の眼鏡をかけて頭がクラクラした時のような感覚だ。
堪らず眼鏡を外す。
俺は視力は0.1ない。
眼鏡がないとぼやけて何も見えないはずだ。
なのに眼鏡をかけているとクラクラして頭が痛くなる。
眼鏡をしていなくても、世界がクリアに見える。
俺は試しに書斎の本を手に取りパラパラめくってみる。
クッキリ見える。
見えるが・・・コレは何語だ?。
しかもコレ、印刷物じゃねーぞ。
一字一字、書かれている。
英語なら読めないまでも「アルファベットで書かれているな」くらいはわかる。
しかし、書かれた言語を見た事もない。
どの本を開いても知らない言語で書かれている。
途方に暮れていた時、一角の本が見た事のある文体だった。
「ドイツ語だ」
俺にドイツ語がわかるわけない。
でも大学で第二外国語としてドイツ語を専攻しているから『ドイツ語で書かれている。』というくらいはわかる。
ドイツ語で書かれた本は印刷されており、写真もプリントされている。
何が書かれているかはわからない。
だが、写真をみればだいたい『何について書かれているか』の見当はつく。
「医学書?」この膨大な書物は医学について書かれているようだ。
そういえば俺は廃病院の姿見を通ってこの部屋に来たんだっけ?。
この本は病院関係者の物なんだろうか?。
どうやら廃病院の医院長は夜逃げしたんじゃなくて、鏡の中に姿を消したようだ。
そう考えていると見た事のない言語でも、ドイツ語でもない言葉で書かれている冊子が一冊書斎のテーブルの上から見つかった。
「日本語・・・コレは日記帳だ。」
『この日記帳を見ている日本人がいると信じて日記を残す。
ここは異世界だ。
私は若かった。
医者になる前の私は
「世界中の人々を救いたい」などと思っていた。
医者になるための大学に通うのにも大金がかかる。
医者になった後にも必要なのは金とコネと権力だった。
医局にいた時は処世術に長けた者が評価を得た。
それに嫌気が差して開業してみたら、商才のない私はすぐに廃業間際に追い込まれた。
私は廃業し、病院を畳もうと片付けをしていた。
そんな時、診察室にある姿見が目に止まった。
姿見は異世界へ繋がっていた。
異世界の文明レベルは中世程度。
科学が遅れているので、医療も遅れている。
手術という物は存在しない。
公衆衛生の程度は低く、下水道は都心部でも完備されていない。
トイレも汲み取り式だ。
そのせいか、コレラやペストといった伝染病も定期的に発生している。
だが、医療が未成熟だからと言って死者が大量発生している訳ではない。
彼らは怪我や病気の多くを魔法で治癒する。
そうだ。
ここ、異世界は剣と魔法の世界なのだ。
私達はステージの進んだ癌の治療は出来ない。
だが、異世界での癌は死の病ではない。
魔法でステージⅣの癌も治療してしまうのだ。
私達の世界で癌の治療法は「手術療法」「化学療法」「放射線療法」の三大療法がある。
だが、異世界にはそんなものはなく、ただ「魔法療法」があるのだ。
私は医学の知識で、異世界の人々を救えないか?。
日本に魔法での治療法を持ち帰れないか?。
それが私の存在意義なのではないか?。
とにかく私はしばらく日本には戻らない。
もしこれを読んだ日本人がいたなら、私の年老いた両親に「息子は異世界で息災だ」と伝えて欲しい。』
と、言われても・・・。
俺はアンタもアンタの両親もどこの誰だか知らない。
誰に誰の事を伝えれば良いのか、全くわからない。
とにかく、俺は異世界に来たみたいだ。
この姿見は異世界と日本を繋いでいるとこの日記には書かれている。
そして日記の主は「日本には戻らない」と言っていた。
「日本には戻れない」じゃなくて。
俺はいつでも日本に戻れる・・・はずだ。
あくまでも日記の内容を信じればだが。
そして、いつでも異世界に来れる。
俺は異世界に興味がある。
だって異世界だったら俺は『最強の男』になれるかも知れない。
そうだ、大学の講義が休みの木~日は異世界で冒険家になろう。
月~水はしょうがない、普通に大学生をやろう。
そう簡単に俺は考えていた。