7話 幸せになるためには
「めぐちゃん、いるかな?」
十分ほどすると、よもさんのような声が聞こえてきた。
「うん、いるよ」
私はそっと顔を出し、よもさんを見た。
すらっとした体系にあまり見えないけど美形そうな顔立ち。
「よもさん?」
「うん。本名、蓬俊介」
「私、須藤恵美っていうの」
「恵美でめぐちゃん。可愛い名前だね」
「よもさんも、俊介ってかっこいい」
「おいで」
私は差し出された手を握り、よもさんの車に乗り込んだ……
「兄さん! あれほど恵美ちゃんには美代ちゃんの扱いに対して言わないでって言っただろ!?」
「……すまない」
恵美ちゃんが家出した、というメッセージを見た瞬間、俺は兄夫婦が住む家へ車を飛ばした。
「捜索届けは?」
「まだ」
「どうして!?」
警察官である俺はすぐに、知り合いに捜索届けを出してもらうように頼んだ。
兄さんと呆然としているお義姉さん、美代ちゃんを車に乗せ、警察署へ向かう。
「須藤くん!」
連絡した知り合いはすぐに俺達を見つけ、捜索届けに印を押してくれた。
「ご両親には酷なお話かもしれませんが、少女の家出はあまり捜査されにくいです。そこをご了承の上、捜索届けをお出しください」
「恵美っ」
お義姉さんは恵美ちゃんが家出したという事実を今飲み込めたようだ。
ぼろぼろとなくお義姉さんを慰めようとする美代ちゃん。
お義姉さんの肩を抱いた兄さんは恵美ちゃんがいなくなっても幸せそうな家族に見えた。
「須藤」
「お疲れ様です。警部」
「須藤が紹介してくれた恵美ちゃんが家出したんだろう? どうするつもりだ?」
「それ、は……」
恵美ちゃんを養子にしたい、と申し出てきたのは警察内部の上の方の人だった。
顔と名前が一致するぐらい、有名な人が恵美ちゃんの才能を察したのか引き取りたいと申し出てきたのだ。
俺が紹介したのだが、最後の決断は彼女にしてもらいたい、と言われたのでその通りにした。
けれど判断もなく、彼女は家出で現在行方不明。
どうすることもできない、俺はここで終わりだろう。
自分の出世のために恵美ちゃんを使いたいわけじゃなかったけど、良かれと思ったことが裏目に出てしまったようだった。