6話 我慢の限界
「あ~あ」
やっちゃった。
でも後悔はしてない。漣を聞きながらそう思った。
月明かりもなく、街灯もない。海だけが見える真っ暗な場所。
「私って、我慢できなかったんだな」
いっそのこと、家族なんて忘れて養子を取ると言ってくれた人の所へ行った方が私は幸せかもしれない。
だけど、どうしてもそれができなかったのは生んでくれた、育ててくれた両親に恩返ししたかったから。
どれだけ喧嘩しても、どれだけ美代のことしか思っていなくても両親であることは紛れもない事実。
「私、これからどうしよう……」
通知ばかり来る携帯。それをぼーっと見ていると一つ、違うアプリからの通知を発見した。
『めぐちゃん、大丈夫かな? なんか、めぐちゃんが苦しんでそうな気がして……よければ話聞くよ?』
「っ」
私の味方は、よもさんだけかもしれない。
そう思わされる一文だった。
ププププ
「あ、めぐちゃん」
「よもさん」
「……やっぱり、僕の勘は当たってたのかな。何かあった?」
「私、もう駄目かもしれない」
全てを話した。
養子のこと、妹のこと。そして、よもさんにまで隠していた両親の過去を。
「それは、苦しかったね。めぐちゃんは偉いよ」
よもさんが傍にいればどれだけ助かっただろう。
よもさんが今、傍にいれば私はこうならなかったかもしれない。
「会いたい」
「え?」
「私、よもさんに会いたいっ」
始めて、誰かと会いたいと思ったかもしれない。
親身になって話を聞いてくれて。考えてくれて、自分のことも話してくれて。
私、会いたいよ。
「僕は、欲深い人間だ。君に会えば離してあげられないかもしれない」
「いいよ、そんなの。どうせ、帰る家はもうないのかもしれないから」
今だ来る通知は、私を上辺だけで心配しているように感じた。
だって、私のことを探す声が聞こえないから。
「分かった。めぐちゃんはどこに住んでるのかな?」
私は今、自分がいる場所を教えた。
「僕はその少し離れた町に住んでるんだ。案外近かったんだね」
「うん」
「そこまで迎えに行くよ。少し待っててくれるかな?」
「うん」
私は誰にも見つからないように物陰に隠れ、携帯の光も消した。
こうして、ネット関係の出会いって生まれるのかな?ってちょっと予想して書いてみました。
皆さんはどう思いますか?