5話 家出
叔父さんから養子の話をもらってから三日。
私はどうするか迷っていた。
いきたくない、だけどいったほうがいいんだろう。
これは親孝行の一環。
そう考えれば行く、という判断しかできなくなっていた。
「お姉ちゃん?」
「ああ、どうしたの。美代」
お風呂あがりであろう美代は、まだ髪が少し湿っている。
「ママから話、聞いたんだ。お姉ちゃんがいなくなるかもって……」
まだ、決めてない話を美代にしたんだ。
これって、もう決定ってことなのかな……。
「美代、お姉ちゃんがいなくなるの嫌だよ! まだまだ、お姉ちゃんと一緒にいたよ!」
「るさい」
「え?」
「煩いって言ってるの! もとはと言えば、美代が」
美代がいなければなかった話なんだ。
「っ」
今まで隠していた気持ちが全て溢れ出てくる。
この話は美代のせいじゃない。美代がいなければとっくの昔に家族はばらばらになっていただろう。
私はどうしたんだろう。
「ふぇ、ひっく」
美代が泣いている。
けどどうしても、慰める気持ちにはなれなかった。
「どうかし……」
「美代、恵美。どうしたんだい?」
私の怒号を聞いたのか、美代の泣く声を聞いたのか知らないけど両親が私の部屋に入ってきた。
母は美代を慰めようと美代を抱きしめ、父は私の肩に手を置いた。
「妹を泣かせては駄目だろう。ほら、一緒に……」
どうして、私は美代を泣かせてはいけないの。
お姉ちゃんだから? 年上だから?
「私は」
「ん?」
「私は、美代のお姉ちゃんなんかじゃない!!」
「こら、恵美!!」
私は父の手を振り払い、玄関まで走った。
そして……。
「恵美! 恵美っ!!」
靴を履かずにそのまま家を出た。
よくある姉妹喧嘩だけど、姉のせいだったり妹のせいにされたり、親はどちらの味方でもあるかもしれないけど、それは時に残酷ですね。