2話 おばあちゃん
「まあ、恵美。いらっしゃい!」
「うん、急にごめんね。おばあちゃん」
「いいのよいいのよ。さ、座りなさい」
私は歩いて五分ほどの所にあるおばあちゃんの家に来ていた。
学校帰り、通学路にある祖母の家は私が家に帰りたくない、と思う時に時間を潰すのに最適だった。
祖母は祖父がなくなって一人で住んでいるから心配だし、様子を見に来るのも兼ねているけれど。
「また、何かあったの?」
「……ううん、大丈夫だよ。美代がおばあちゃんに会いたいって言ってたんだ。明日ぐらいに連れてくるよ」
「そうかい、美代ちゃん用のお菓子を準備しておくよ」
「うん」
祖母は私のことを「恵美」と言い美代のことは「美代ちゃん」と呼ぶ。
年も関係しているのだけれど、どこか祖母の呼び方には差別というか区別があるような気がした。
祖母や両親にとって甘えられるのは嬉しいことなんだろう。
可愛げのない私と違って、可愛げがあって甘えて。
私だって、いつか……。
「恵美?」
「ああ、どうしたの? おばあちゃん」
「恵美は最近元気がないねぇ。学校で何かあったのかい?」
「ううん、何もないよ。しいて言えば、友達が一人転校しちゃったぐらいかな」
「そうかい、それは悲しいことだねぇ」
「うん」
咄嗟に嘘をついた。
祖母に、両親が喧嘩していることを言うわけにはいかないし、その他に悲しいことなんてない。
だから学校関連のことで嘘をついた。
「おばあちゃん、そろそろ帰るね。美代が遊びから帰ってくる時間だろうから」
「そうかい。またね」
「うん、また」
私は祖母に手を振り、家に向かって帰った。






