七話 胡桃太郎(勇者)は冒険の準備の相談をした!
ゴールドと装備を貰って、即 冒険……とはいかないのが、現実の世界ですよね。
PR人員としての活動どころか、岡山県の周辺が大森林になった原因を調査する仕事をする事になった胡桃 太郎。
今は稲葉社長の運転する車の中だ。一緒に居るのは、鳥飼と……猿飼。
あれから猿飼は、知事に考えを変える様に、長々と進言したが、結局 変わらず、これからの事を話し合う為に、一緒に行動する事になった。
「あれよな……おかしいって…なんでわしが……おかしいじゃろ……いや、マジで……」
ずっと、この調子でブツブツ言っている猿飼。
「・・・」
対して、鳥飼は、考えが追い付かない様で、県庁を出てから、ずっとボーッとしている。
「色々と課題が有りますよね……そこをどうするか…ですよね」
と、稲葉とこれからの事を話している胡桃、もう状況の変化に諦めた様だ。
会社に着いてから
「犬飼を会議室に呼んで来てくれ」
と指示を出す稲葉。
「はい。社長 何の御用でしょうか?」
と、ボリボリと身体を掻きながら、直ぐに来る犬飼。
「君も会議に加わってくれ」
と、犬飼に告げる稲葉。
「一緒に県庁で聞いた者は知っている様に、県のPRを委託されていた我社、と言うか、PR人員として採用された胡桃 太郎君、それとうちの社員の鳥飼と犬飼は、今 起きている大異変の調査を行う事になった。
県庁職員の猿飼さんも、サポートとして同行される事に決まっている」
「えっ?」
大規模停電が起きてはいるものの、岡山県の周辺の異変を知らない犬飼は、困惑の表情を浮かべる。
「えっ?何なんですか?大異変とか調査って?」
当然 質問をする犬飼。
「今 稲葉さんが話しとるんじゃから黙っとけぇ犬飼」
イライラしながら言う猿飼。
「はい……」
納得いかない感じの犬飼。
「県知事の説明だと、この大規模停電の原因は、岡山の周辺がジャングルになったからだそうだ」
そう犬飼に説明する稲葉。
「えっ?ジャングル?ジャングルですか?」
混乱する犬飼。
「そうだ。ジャングルだそうだ。その原因などの調査を、PR人員の胡桃君や鳥飼 犬飼、そして県庁職員の猿飼さんのサポートも含めて、四人で調査して欲しい」
更に続けて告げる稲葉。
「移動手段はどうしましょう?」
鳥飼が稲葉に問う。
「車だと渋滞に巻き込まれたりするから、バイクだろうね」
と、稲葉。
「ジャングルと言う事は、猛獣とかもいるかも…ですよね?」
鳥飼が呟く。
「猛獣って、どうするんな?なあ?無理やろ」
と、言葉を吐き捨てる猿飼。
「いや……それ……県職員の猿飼さんに言われると……困るかなぁ〜」
と、少し怒ってるっぽい犬飼。
「なんや?わしが悪いんか?」
そう犬飼に返す猿飼。
「そうは言いませんけど……ねぇ〜?」
と、鳥飼に同意を求める目線をやりながら言う犬飼。
「じゃあ、なんじゃっちゅうねん?」
納得いかない感じの猿飼。
「まあまあ、落ち着いて下さい。取り敢えず、調査に必要な物をリストアップする所から始めよう」
と、ホワイトボードに書き始める稲葉。
「先ずは “移動手段” と……」
キュキュッ
とホワイトボードに書き込む。
「他には?」
と、稲葉。
「食料ですよね。楽に携行出来る物が良いですよね」
と、胡桃。
「“食料” ね……」
キュキュッ
と、書き込む。
「宿とか困るので、テントや寝袋なども必要でしょうね。野宿は嫌ですけど、バイクで移動なら、他に手段が無いですよね」
と、鳥飼。
「“キャンプ用品” って感じかな?」
キュキュッ キュキュッ
と、書かれる。
「猛獣がいるかもなら、武器じゃろ」
と、猿飼。
「武器ですか?なら “護身用品” かな……」
キュキュッ
と、書く稲葉。
「スマホとかでインターネットが利用出来ないので、紙の地図ですね」
と、胡桃
「そっ!それ!大事!」
と、一番大きく反応する鳥飼。
「うん。要るな」
と、犬飼。
「要るか?要るかぁ……? 居るなぁ……」
と、徐々に納得する猿飼。
「“地図” と……」
キュキュッ
と、書かれた。
「取り敢えずはこんな感じかな?」
と、稲葉。
「また報告に行く時に思い付いたら言ってくれ」
ホワイトボードの物をメモに書き写す稲葉。
「さて、今度は、それぞれをどう入手するかだね」
と、稲葉が会議室の面々を見ながら言う。
「移動手段のバイクな、県に準備させるから」
と、猿飼。
「ありがとうございます」
と、返す稲葉。
「食料やキャンプ用品も県が準備するから」
と、続ける猿飼。
「それも、ありがとうございます」
と、更に返す稲葉。
「問題は、護身用の武器じゃなぁ……」
悩みながら言う猿飼。
「あっ!あれを忘れてた!」
と、何か思い出した鳥飼。
「どうした?鳥飼」
と、稲葉。
「どう考えても調査なら服が汚れますよね?作業着みたいなのも要りますよね」
と、困り顔の鳥飼が言う。
「なるほど……“調査中の服” ね……」
と、メモに書く稲葉。
「地図も県が準備してくれるのでしょうか?」
と、猿飼を見ながら言う胡桃。
「おう、それらも準備したらぁ」
そう返す猿飼。
「問題は、護身用の武器ですね」
と、胡桃が言うと……
「「「「うーーーーん…………」」」」
と、悩み込む会議室の一同。
「しゃーねぇーなぁー 知事に相談してみらぁ……」
と、猿飼。
「それじゃ、それぞれ自宅に帰って、調査に出る準備をして戻って来て下さい。私はその間に、猿飼さんとまた県庁に行って、必要な物を準備して貰う交渉をしてますから」
と、胡桃と鳥飼と犬飼に指示を出す稲葉。
「それなら太郎君 送るね」
と、胡桃に声を掛ける鳥飼。
「それじゃ行こうか?」
と、犬飼が声を掛け。
胡桃と鳥飼は、鳥飼の車で、犬飼は自分の車で移動する準備をする。
「(何だか大変な事になったなぁ……)」
「(何かヤバい事になったわぁ……)」
「(何やでぇれぇ事になったなぁ……)」
「(何やえれぇ事になったわぁ……)」
と、それぞれ心の中でぼやく胡桃、鳥飼、犬飼、猿飼の四人だった。