六話 冒険開始の合図?
茨木 良太県知事 との面会です。
胡桃 太郎が知事室に入ると、険しい顔の県知事 茨木が椅子に座っていた。
「あ、稲葉さん 申し訳無い。連絡も出来なくてね。PR人員として来てくれた桃太郎さん?かな?も申し訳無いね。」
と、謝罪する礼儀正しい茨木。
「いえ、それは良いのですが、電話も通じないので、挨拶に伺った次第です」
と、稲葉。
「宜しくお願いします! 胡桃 太郎と言います!」
本当の名前で挨拶する胡桃。
「えっ?胡桃? えっ? 太郎?あれ?胡 桃太郎さん…だよね?」
と、胡桃を見て、視線を社長の稲葉に移す茨木。
その稲葉は
「おい?どうなっとんじゃ?」
と、怒り混じりに鳥飼に声を掛ける。
「・・・」
黙ったままの鳥飼。
「どうなっとんな?」
猿飼も鳥飼に聞く。
「まあ、良い。今はPRなんてしている場合じゃ無いからな」
そう呟く茨木。
「えっ?それは今のこの状況に関係しているのでしょうか?」
直球で聞く稲葉。
「ああ、その内 誰もが知る事になるだろうから話すが、PRしようにも、その相手が消えた。全て消えた」
と、告げる茨木。
「「「「消えた?」」」」
稲葉、鳥飼、胡桃、猿飼 全員がハモる様に問う。
「ああ、岡山以外 日本が消えた。いや、もっと広くかも知れん。兎に角 岡山の周りは、全てジャングルになった」
と、現状を教える茨木。
「「「「はぁーーー???」」」」
また同時に、稲葉、鳥飼、胡桃、猿飼 全員がハモる。
「どう言う事ですか?知事!?」
猿飼が高圧的に言う。
「そのままだよ。消えたんだよ」
と、茨木。
「冗談じゃなくですか?」
そう聞く稲葉。
「こんな事 冗談にもならないだろう?!」
少し苛つき答える茨木。
「えっ?えっ?私の仕事は??」
と、困惑する胡桃。
「PRする相手が居ないんだから無いよ。それより、原因などの調査をする人員の確保が出来ずに困っているんだよ」
と、ため息混じりに頭を抱えながら茨木が答える。
「えーーっ?そうなんですか?」
青い顔の胡桃。
「それなら、調査は稲葉さんとこに頼めば良いんじゃないですか?」
猿飼が告げる。
「PR出来んのですし、調査の人員 要るんですし」
と、更に猿飼が続ける。
「それだ!」
茨木が椅子から立ち上がり、稲葉の所に歩み出る。
「宜しく頼むよ!」
と、両手で稲葉の手を握り頼む。
「宜しくな!桃太郎君!」
今度は両手で胡桃の手を握りながら言う茨木。
「「「えっ?えーーーっ?」」」
驚く稲葉と鳥飼と胡桃。
「名前も桃太郎で、冒険に出て貰うのに縁起のええ名前やしの」
と、猿飼。
「私も電気の復旧などのライフラインの復旧やらなんやらで、やる事が多くてね。本当 協力してくれて助かるよ」
茨木は一つ肩の荷が下りてホッとしている。
「電気 使える様になるんですか?」
猿飼が聞く。
「ああ、電力会社には現状 使える火力や太陽光などの発電所からの電気で、早く復旧する様に頼んである」
と、茨木。
「携帯電話などの通信も、電気が回復次第 使える様にして貰う予定だ」
と、間を置いて茨木は続ける。
「そりゃあええ。助かる」
猿飼が言う。
「桃太郎さんに同行してのサポートは、猿飼君にに頼むよ。稲葉さんの所の鳥飼さんも宜しくね」
と、二人を見ながら言う茨木。
「「「えっ?」」」
猿飼と稲葉と鳥飼が驚いてハモる。
「あ、後 稲葉さんの所には、犬飼って人も居たよね?その人も頼むよ。あ、これで犬猿雉が揃うじゃないかっ!こりゃ運命だね!」
と、言い出す茨木。
「「「えっ?」」」
今度は、稲葉と鳥飼と胡桃が驚いてハモる。
「えっ?こ、これは決定ですか?」
と、稲葉が確認する。
「そりゃそうでしょう!?仕事が無くなったからと桃太郎さんを解雇するのも可哀想だしね」
茨木が涼しい顔をして告げる。
「わしも決定ですか?」
猿飼が聞く。
「当然だろう。サポート要るからね。各役所と県警には、協力の要請をしておくから、その取次などの業務を現地で頼むよ」
と、猿飼に告げる茨木。
「食料などの必需品や調査に必要な物は、役所で準備するよ。しっかり頼むよ」
と、続けて稲葉や鳥飼、胡桃に告げる茨木。
「「「「・・・」」」」
知事室で立ち尽くす四人。
最初に現実に戻ったのは、一番 負担の軽い稲葉だった。
「と、言う…事…らしいので……頼むよ。鳥飼、胡桃」
そう、稲葉が二人に告げた。
「なっ なんでじゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
県庁に猿飼の声が響き渡った。