十話 県警の援助と電動バイクの旅
デニム上下の一行
ぐったりした四人が、知事室の椅子に座っている。
その四人はもちろん、胡桃に鳥飼に犬飼に猿飼である。
「これ着とかんとおえんのか?」
多大な不満を顔に出して猿飼が言う。
「いや……県庁の職員の方に聞かれても……」
と、困惑する胡桃。
「逆にわしらが聞きてぇわ」
そう呟く犬飼。
「私 泣きそう……」
自分の今の姿に激しく悲観している鳥飼が言う。
「あ、お待たせしました」
報道陣の囲み取材から戻ってきた茨木。
「さて、先ずは岡山県警の本部に行って、警察とも連携が取れる様にして下さい。県庁は全面的に支援しますが、安全確保の面のサポートは、県警にして貰いますから」
そう四人に告げる茨木。
「ほんなら行くか」
と、猿飼。
「「「はい……」」」
と、三人。
「一階に調査の移動用の電動バイクが準備されています。それを使って下さい」
茨木がドヤ顔で言う。
「あ、ありがとうございます……?」
お礼を言うのに抵抗感のある胡桃
「あり…が…とう…ご…ざい…ま…す……」
鳥飼も納得いかない感じでお礼を言う。
「まあ…ありがとうございます」
投げやりな感じで言う犬飼。
「行こうか」
と、猿飼。
「これかぁ……」
ため息混じりに言った胡桃
「(充電しながらバイクで旅をする番組と同じ?同じ様なのじゃん……)」
四台の電動バイクを見た胡桃の素直な感想である。
「最近 乗って無かったから大丈夫かな?」
と、鳥飼が呟く。
「俺もじゃ、バイク乗ってねぇからのぅ……」
と、犬飼。
「わしもじゃ」
そう言いながら頭を掻く猿飼。
そうして、四台の電動バイクで岡山県警本部を目指す。
岡山県警本部に着いた。
移動しようとした時に鳥飼がわたわたして、
移動途中には、犬飼と猿飼の電動バイクが掠って、二人が口論になったりしていた。
「受付に行こうや」
猿飼が誘導する。
「「「あ、はい」」」
素直に従う三人。
「あ、すまんのう。県庁の猿飼なんじゃけど、ここに行けって言われたから来たんじゃけどなぁ……」
と、猿飼は受付の警察官に言う。
「なんか県警がやらなならん事を、わしらやる事になってよ。ホンマ えれぇ事になっとんよ…… いや でぇれぇ事やぞ…… なんでわしがなぁ……」
と、受付で警察官に言っているのか、独り言なのかわからない事を、猿飼は呟き続けている。
「お待たせしました。こちらにどうぞ」
警察官に促される四人。
県警本部内の一室に案内される。
ガチャ
「こちらに座ってお待ち下さい」
警察官は、そう告げて部屋を出て行く。
黙って待っている四人。
猿飼は明らかにイライラしている。
犬飼は意気消沈。
鳥飼は胡桃をチラチラ見ている。
胡桃は扉をぼーっと見ている。
ガチャ
「お待たせしました」
一人の警察官が入って来た。
「山本です。今回の調査のサポートに関する担当です。これからの事を説明させて頂きます」
と、一礼する。
「「「「宜しくお願いします」」」」
と、四人。
「先ず、こちらの地図をそれぞれお持ちになって下さい」
と、岡山県内の大きな地図を、四人それぞれに渡す山本。
「青い点を付けさせて頂いているのが、管内の警察署です。それより沢山有る緑の点が、交番と言われる物です」
と、山本。
「確認頂けましたか?話を進めます。食料の補給など、基本的な支援は、市役所や役場や出張所と言われる県や市の機関に行って貰いますが、警察組織と較べると、数が少ないですし、24時間の対応が出来ません。その県や市のサポート出来ない部分を、県警がサポートします」
県警の姿勢を説明する山本。
「そして、県や市の施設は赤い点で示しています。食料など県から支給される物は、そちらで受け取って下さい」
続けて説明する山本。
「すいません。質問 良いですか?」
と、犬飼が発言する。
「はい。どうぞ」
と、山本。
「結局 県警は何をしてくれるのでしょうか?」
率直に質問する犬飼。
「例えば……宿泊関係ですね。テントでは大変でしょうが、宿泊施設が無い地域もあります。そんな時に寝泊まり出来る所を準備したり……」
と、山本。
「なるほど……」
と、犬飼。
「後 ジャングルから獰猛な獣が出たりしたら、調査隊の皆さんでは、対応が出来ませんよね?そんな有事の際のサポートなど、県や市が出来ない部分を受け持ちます」
そう四人に説明した山本。
「そんな事態は嫌だなぁ……」
と呟く猿飼。
「それと、一番 大事なサポートがあります」
と、続ける山本。
「なんですか?」
と、聞く胡桃。
「電動バイクの充電拠点としても機能します」
そう四人に告げる山本。
「「「「あー!なるほど!」」」」
と、四人共に納得した。
「某テレビ番組みたいに、行った先の店舗や個人宅に交渉するのも大変でしょうからね」
そう説明する山本。
「次に、日本刀の取り扱いに関してです」
と、山本。
「身の危険を感じる場合のみ、使って下さい。そこの管理は猿飼さんにお任せします」
そう説明する山本。
「わかりました」
と、猿飼。
「それでは、説明は終わりです。先ずはどちらに向かわれるか決まってますか?」
と、確認する山本。
「まだです」
と、胡桃。
「突然だったしなぁ……」
犬飼がボヤく。
「ホントに……」
と、鳥飼。
「大体 わしがなんで……」
と、猿飼もボヤく。
「それなら、ジャングルとの境界を、ずっと進まれてみると良いと思います」
そう勧める山本。
「そうしてみます」
と、胡桃が応える。
「じゃあ行くか?」
と、猿飼。
「「「「はぁ……」」」」
四人共 大きなため息を吐きながら移動する。
調査隊としての仕事が始まる。