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飛んで火に入る秋の虫

作者: はるき



まただ。

また恋人でない人と一夜を共にした。

恋人がいるのに、恋人が好きなのに。

パンツ一枚で椅子に腰掛け、タバコに火をつける。

ここまできたらもう話が盛り上がることはなく、あとはくっついて眠るだけだろう。

なぜ体を交わすのかは分からない。

温もりを求めているのか。

秋だというのに、まるで飛んで火に入る夏の虫のようだ。

温もりがあれば、そこへ一直線に向かう。

頭の悪いことこの上ない。

そこでタバコを灰皿に押し当てる。


「寝よっか」


ベッドにもぞもぞと入り込みながら呟く。

罪悪感に苛まれることがわかっているのに、なぜこのようなことをするのだろう。

そう考えるとさらに自己嫌悪に苛まれる。

きっと罰を欲しているのだ。

こんな愚行を続ける僕にぴったりの罰を。

そうでもないときっと悩み続けるのだろう。

嫌な思いをした方が正当化された気になれる。

それなのに、僕はきっと恋人には伝えないのだろう。

LINEのアイコンに赤く「2」と表示されている。

恋人からだ。

長く付き合っているからか、頻繁に連絡を取ることはなくなった。

ただこの連絡は緊急の事態ではないと予測できるのは付き合いが長いからだ。

そう思いそのまま画面を暗くし枕元に置いておく。

一先ず人肌で温いベッドで無心に眠りにつこうと思う。




目を覚ませば抱いていた子がいなかった。

眠い目をこすりながら部屋の中を歩いていると、髪の毛を整えている姿があった。


「おはよう」

と言われるも何も言葉を出す気になれず、後ろから抱きしめる。

僕はバカで弱虫なのだろう。

こうしていないと保っていられない。

こうしていないと保っていられないと思い込んでいるのだ。

そうして心の均衡を保っている。

それがわかっているのにそうしている。

僕はバカで弱虫だ。


各々の時間を悠々自適に過ごすと時刻はお昼前を指す。


「帰ろっか」


そうすると「うん」と楽しげにも悲しげにも見えるような表情で返してくる。

本当に女の人は狡いとつくづく思う。

ホテルから出ると空は青空が広がっていた。

2人の間を気持ちの良い秋風が吹く。

憎い程良い天気だ。

ああ、憎い。

読んで頂きありがとうございました。

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