恋愛シュミレーションゲームのエンディングを迎えるために
バーから走って、15分。
住み慣れた、1Kのマンションにたどり着く。
そう、ココがわたしの住んでいるところ。
鍵で部屋を開けて、明かりをつける。
そう一人ぼっちの部屋。
「帰ってきた…」
ため息1つ。
誰もいないけど、この部屋はわたしのなじみのあるところ。
ずっと、仕事とこの部屋の往復だった。
あとは一人で成り行きまかせ。
あんなゲームのように人と出会う事はない。
会話をして好感度を上げて、恋愛したり指名を果たしたりすることもない。
でも、わたしの現実は私がいる今だ。
だから、きっとあの世界にも戻って、「フィーナ」にもなる。
それがわかったら必要なの。
違和感の正体を知るべく、知識が。
「あのゲームどこだっけ??」
最近プレイしてなかったから思い出せない。
セーブデータもあったはず。
ゲームを起動させて懐かしい画面が目の前に広がる。
「ああ、コレだ。」
わたしが自分の時間の大半を費やしたモノは。
セーブデータを1つずつ確認しながら、卒業式の1週間前のイベントを出す。
一押しのオルフェ様のものはもちろんセーブデータにあった。
「コレだぁ。」
やっと見つける事ができたデータ。
大好きだったキャラのオルフェ様。
部屋に訪ねてきてくれて、渡される髪飾り。
そこからのスチル。
映し出された髪飾りは金がモチーフでオルフェ様の瞳の色の宝石。
そして、白い花…
「えっ?」
白い花なんて、私が頂いた髪飾りにはなかった。
どういうこと?
見間違い?
実際に手元に持った髪飾り。今はなく、あの世界に置いて来た。
でも、たしかに白い花なんてなかった。
「どうして…?」
ゲームの画面はわたしの疑問をよそにどんどん進んでいる。
卒業式当日。
主人公はオルフェ様からいただいた髪飾りで髪をハーフアップにしている。
ドレスもその髪飾りと同じ色。
卒業式の会場に入場する前にオルフェ様に呼び止められる。
正装のオルフェ様の胸元には髪飾りについているのと同じ白い花。
「え…。あっ…。」
そうだ、思い出した。一番好感度が高いキャラが卒業式の日に会場入場前にエスコートを申し出てくれる。
そして、その時に胸元にお揃いのブートニアを胸につけているのだ。
あとはエンディング。卒業式の後に告白されてそのキャラのスチルが映し出される。
ってことは、あの白い花がついていない髪飾りの意味は?
このオルフェ様の正統のエンディングではないってこと。
キャラエンディングではないなら、大団円かバットエンド。
でも、バットエンドの場合は一週間前のイベントがない。
大団円の場合は、髪飾りは贈られない。
知らない、あのオルフェ様から贈られた花のない髪飾りのエンディングなんて。
「このゲームはオールクリアしている。必死になって全員の好感度を上げて、逆ハー状態にもしていたくらいやり込んだもの。」
ってことは、一週間後の卒業式には何が起こるの?
そのままオルフェ様エンディングではないってこと?
わからない。
それでも、懐かしい攻略本などをみてもでていない。
となれば、実際に体験するしかないの?
でも、状況がわからない以上、あっちの世界に戻っていいの?
「どうしよう…」
つぶやいてベッドに身を投げる。
そのまま目をつぶると疲れからか、そのまま眠ってしまっていた。