扉の向こうはゲームの世界だった
ガシャンと重たい扉が閉まる音がする
「待ってここ…」
どこ?
見慣れない場所
「お嬢様!!」
ぼぉっとしていると聞き慣れれたような、懐かしいような、それでいて知らないような女の人の声がする。
って、お嬢様??誰?
自分のことだと気づくのに10秒程かかる
「エンジュ?」
口だからでたのが彼女の名前だと気がつくのに5秒。
「お嬢様、こんなところにいらしたんですね。」
待って。
ここ。
わたし、知ってる。
学生のころにプレイしていたゲームの世界。
夢中で、徹夜した事もある。
「一週間後の卒業式のドレスの打ち合わせの際に席をはずされるなんでどうなさったんですか?」
心配そうな顔をした彼女は、私が生まれた時から傍にいてくれた侍女だ。
って、私…?
「セラフィナ様?」
何も答えない私を心配そうにのぞきこんでくる彼女。
「ごめんなさい。ちょっと疲れてしまって。続きは明日にしてももらってもいいかしら?」
頭の整理が必要だ。
だってさっきまでわたしは普通のOLで、残業の後、初めて訪れたバーでジントニックを飲んでタバコを吸っていた。
それが今は「お嬢様」と呼ばれていることを受け入れようとしている自分。
考えることが多すぎる。
「ええ、もちろん、明日の夜にしていただくことは可能ですが。」
「じゃあ、お願いするわね。自室にいるから、紅茶をあとで持ってきてもらえるかしら?」
それだけ伝えて、自分の部屋へ急ぐ。
「かしこまりました。」
さすが、私と長年いる最も信頼のおける侍女。
自室のドアをあけて入る。
そして、ため息をひとつ。
「どういうことなの?」
自室も見慣れたことがあるような、ないような場所。
混乱する頭
「とりあえず、落ち着いて状況を整理しないと…」
つぶやいて、ふいに自室にある、一番大きな姿見に目をやる
「これ、私…」