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初めてバーに訪れた日

昨日も今日も毎日一緒のことが続くてそう思ってた。

毎日、会社に行っては同じような作業を繰り返し。少しはやりがいのある仕事をしているけど、流行りのキラキラ女子にはなれない。

上司には怒られることもあるし、先輩にも嫌みを言われることもある。同期だって、後輩だって気が合う子ばかりでもない。

毎日が嫌になる

そんなことを考えながら帰路につく。


ふと、いつもと違う道を通ってみようと思った。


たまにはこのまま帰らなくてもいいかなって


「えっ?」

こんなところにバー??なのかな?

重たそうな鉄のドア。上には店の名前の看板。

そして、「OPEN」にされている文字


普段ならそんな不思議なドアに手をかけることはない。

だって初めて訪れる場所で中はわからないところ。


でも今日はなぜか開いてしまった

おそるおそるではあるけれども


「?」

中は薄明るい証明

目の前の棚の奥は鏡なのかわたしが移り込む

その中に遊び心が加えられているボトルの並び


「いらっしゃいませ」


奥から男の人の声がする


振り返ると長身で黒いシャツに深い色のジーパンを履いた男の人。

髪はあごより長く伸ばしている茶髪

バーテンダーっぽくはないけど、なぜか少しだけ懐かしい気がした

初めて逢ったよね?



「えっと…」

店内にはカウンターの席が7つ。

赤い椅子のみ


「こちらへどうぞ」


入り口から2晩目に近い席に誘導される。

そのままそこに腰掛け、隣の席に黒い鞄を置く


「ご注文は?」


少しハスキーな声

聞いていて心地いい


「えっと…ジントニック…?」


いつものクセで初めて来たバーでは注文してしまうもの。

ただの本の受け売りにすぎないけど、バーテンダーの特徴がでるものだってみたことがある


「かしこまりました。」


そのまま、彼は手際よく、ジントニックを作り始める。

長い綺麗な指だなって見とれてしまっている


「お待たせしました。ジントニックです。」


コースターと共に出されるシンプルなジントニック。

でも、これ…


「おタバコは吸われますか?」

笑顔で尋ねられてので無言でうなづく

そのまま出される灰皿。


「ジントニックにレモンもライムも入っていないんですね。」

そう、このジントニックには生のレモンもライムも入っていない


「ええ、でもそのまま味わってみてください。」


促されるまま、一口。


「あっ…」


かすかなライムの柑橘の風味


「ちゃんとジントニックですよね?」

悪戯っぽく笑っている彼にもう一度頷いてしまい、もう一口飲んでしまう


「美味しいです。」

「それはなにより。」


すっかり彼のペースになってしまい、落ち着かせるためにたばこに火をつける。

家では吸わない。仕事場でもほぼ吸わないので、わたしを喫煙家だと知っている人は少ない

でも、ずっとお気に入りでもう10年も吸っている銘柄。


ゆっくり火をつけ一息。


やっと少し落ち着いてきた。

なんだろう。

不思議な居心地のよさを感じるのにお客様はわたし以外誰もいない。


どうして…


「まぁ、ゆっくりしていってください。」


なんだろう。

「わたしが思っているバーっぽくないですね。」

正直な感想。

「そうですか?」


ええ、バーテンダーさんももっと何か、正装というかそんなイメージだし。

カクテルももっと、『バーのカクテル』って意識が高いイメージだった。


「でも、この雰囲気、わたしは好きです。」

「ありがとうございます。」


にっこり笑うバーテンダーさん。


ドキっとなぜか鼓動が1つ跳ねる

なんだろうイケメンって呼ばれる部類の人の笑顔ってズルイ。


一杯のジントニックを飲み干すころには、タバコは3本程吸っていた。

そして、落ち着いた心。


「ありがとうございます。お会計お願いします。」

明日も仕事があるし、今日はこのくらいでいい。


バーテンダーに言われたテーブルチャージと合わせた2000円を支払って、席を立つ。

そして、元来た重たい鉄の扉は彼が開けてくれる。



『えっ…』



彼が開けてくれた扉の向こうは見知らぬ豪華な廊下に続いていた

こんなところだった??


シャンデリアがあり、赤い絨毯がひかれた廊下


「またのお越しをお待ちしております。姫。」



そうって、バーテンダーさんは扉を閉める。



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