普通の人で,ごめんなさい
「僕は,変人が好きなんだ! ごめんなさい」
そう言って彼は逃げるように去って行かれました.
私は,変人ではありません.当然の結果だと思います.
でも,こうもあっさりと断られるのはガテンがいきません.
「僕は,怪人が好きなんだ! ごめよー」
そう言って彼は跳ねるように去って行かれました.
私は,怪人ではありません.当然の結果だと思います.
でも,こうもあっさりと断られるのはシャクでたまりません.
「俺は,アホな子が好きなんだ! あばよ」
そう言って彼は坂を転がるように去って行かれました.
私は,アホではありません.当然の結果だと思います.
でも,こうもあっさりと断られては,お怒りたくなります.
「私は,獣人が好きなんだ! すまない」
そう言って彼は消えるように去って行かれました.
私は,獣人ではありません.当然の結果だと思います.
とうとう,人から外れてしまったようです.
「俺は,魔女っ子が好きなんだ! バイバイ」
そう言って彼は,ダッシュで去って行かれました.
私は,ファンタジーの住人ではありません.当然の結果だと思います.
チチンプイプイ.
「私は,吸血鬼が好きなんだ! 血が足りない」
そう言って彼は真っ青な顔をして去って行かれました.
私は,吸血鬼ではありません.当然の結果だと思います.
多分,血液型が合わないと思います.
どうやら私は,とんでもない人達に声を掛けていたようです.
私の心は傷つきましたが,いたって普通の私では仕方ありません.
相性とでも言いますか,余りにも違いすぎて困惑しています.
しかし,とうとう出会ってしまいました.いつも恋は突然です.
「僕は,君が好きだ! ごめんなさい」
そう言って彼は真っ赤な顔をして去ろうとしました.
私は彼の腕をがっつりと掴み,離しません.
「私の,どこが好きなのですか? 言うまで離しません」
彼は言葉を,私に対する気持ちを幾千もの言葉から探します.
「君は,強情で,欲張りで,身勝手極まりない.自分が大好きな人だ」
「随分と間違った認識をお持ちなようですよ」
「僕にはわかるんだ! 君のその,変わったところが大好きだー.
僕も変わってるからー」
衝撃です.この私が変わっているなんて.
変人や,怪人,獣人,魔女っ子,果ては吸血鬼が大好きな人達から,
『君は普通すぎる』と太鼓判を頂いているというのに.
「ごめんなさい.私は普通の人ですから」
「そんなはずはー,君は〜」
私は,一目散に彼から去って行きました.
普通の私には無理な相談です.