肉体的自傷行為と精神的自傷行為に違いはない
「自傷行為と言いますと、よく言う『メンヘラ』と呼ばれる方々が周りの目を引き付けるために行う、代表例としては『リストカット』が最初に浮かぶものでしょうか」
「私はそうだったのですが、ある小説を読んでいて、『自嘲するその人物が精神的自傷行為で心を落ち着けようとする』という描写を目にしました。今作はそこからふと連想した物をここに記していきたいと思います」
「まず精神的自傷行為ですが、これは『他者と自分の認識の差を埋めるための行為』だと考えます。『やらかしたことに対し、自分を貶めることで仕方ないと納得する』心の反射的保護行為も含まれますが、この場合は前者を前提に話していきたいと思います」
「一般的に、自らを貶めるような発言をする時とはどういった場合があるでしょうか。何か頼みごとをされた時、上げた成果を成果以上の褒められ方をした時。多くは誰かから『自身を持ち上げる発言をされた』時に発生するものだと思います。」
「それは元をたどれば、『他者から見た自分』と『自分が認識する自分』との差が明確になり、そこに不安を覚えるからだと言えると思います。『少しでも自分の思う自分に他者の認識を近づけたい』から、自らを褒めた相手や、自身の能力を買って今から頼みごとをしようとしてくる相手に『そんなことない』『自分なんて』といった言葉が出てくるのでしょう」
「それは正しい評価を求める心の声であり、自らが自分をどう思っているのか、他者が知るための数少ない機会でもあります」
「これは個人的なことですが、絵の上手い友人はしきりに自らの絵を『ゴミだ』『へたくそ』と言って譲りません。出るところに出れば輝く人材も、自らの認識によっては輝く機会を失ってしまう可能性もあるのではないかと考える機会となりました(後程絶対に認識を改めさせてやります、絶対にだ。お前の絵がゴミだったら文章やらゲームやらあっちこっち手を出している私の絵は何か、カスか?その絵すべて言い値で買い取ってやろうじゃないか受けて立つぞ?)……失礼、私怨が混ざりました」
「えー、脱線しましたが、以上が私の考える『精神的自傷行為』の心的内容分析です。そして本題の『肉体的自傷行為』ですが、これもまた『何かの差』を埋めるためのものだと考えています」
「それすなわち『肉体と精神の差』です。メンヘラ、精神病、自傷行為などとインターネットで調べてみると、よく『現実に引き戻すため』だとか『肉体から離れていく精神をつなぎとめるため』とか、そう言った文章を目にすることがあるのではないでしょうか」
「これを私なりに解釈した結果。『精神的自傷行為』が『他者と自分の(自分に対する)認識の差を埋めるための行為』なら、『肉体的自傷行為』は『(自分自身の)肉体と精神の認識の差を埋めるための行為』だと考えます」
「『心はこんなに傷ついているのに、私の体はなぜこんなにも無事でいるのか』『この体は、私が傷ついていても傷つかない=私のモノではない』という認識による不安が『傷ついている自分の体』を見て『精神と肉体の差を埋められた満足感』を得てしまうという結果に至ってしまうものだと思っています」
「実をいうとこの一連の考えは、私が中学生の時に一時的に陥りかけた思考回路そのままなのですが、痛いのは普通に嫌だったので『絵を描く=心情を具現(可視)化する』ことを代償行為としてリストカットを踏みとどまりました(そうならず実行してしまった人には、最終的に自傷行為を後押しする要因が存在する、もしくは感覚のマヒによるハードルの低下などの原因があると思われます)」
「予防策として肉体的自傷行為は何かで身代わりにするか、自らの認識を改めなおさなければならないという体からの警告だと思うことが重要だと思います(本当のところはお医者様かネットで調べていただきたい)」
「そしてここまで来てやっと話せるこの話の趣旨ですが、このように、肉体的自傷行為は何も特別なことではなく、皆さんも普段一度はやったことがあるであろう『自虐』『自嘲』『(過度な)遠慮』などの延長戦に在ることだと言いたかっただけなのです」
「皆さんもどうかそのような行為をただ忌避するだけでなく、ある程度の理解を示してみたり、一緒に考えてみたり、認識の差を埋める手伝いをしてみたりと、いろいろできることは多いはずです。この文がこれからの皆様の心身の健康と、人間関係をよりよくするための一助となることを心からお祈り申し上げます。短いですが最後に、ここまで読んでいただいた方、これから感想を打とうとしてくれている方(もしいればですが、大歓迎ですので是非)へ感謝を」
――会話形式(「」付けただけ)でやる意味はあったんですか?
「いいえ?私が思考の整理をする際にやりやすい形をとっただけで、特に意味はありません。これも私なりの『思考と文章の表現の差』を埋めるための行為として受け流していただければ幸いです。それでは皆様――ごきげんよう!」