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6話

「それじゃあ……この『魔水晶』に手をかざしてくれる?」

「わかった」


 テーブル越しに向かい合い、ランゼの言う通り手をかざす。


「いくわよ……『この世界を創造せし神、ヘルアーシャ様、この者に歩むべき魔道を示したまえ』」


 瞬間、水晶が光を放ち始め―――


「おいおい大丈夫か?爆発とかしないよな?」

「―――ん、終わったわよ」


 ―――少しずつ光が収まっていき、何やら興奮したようなランゼが俺を見つめる。


「……す、すごいわ!イツキの『魔法適性』、『光魔法』だったわよ!」

「『光魔法』……『特殊魔法』か?」

「そう!まさか『光魔法』の適性があるなんて……すごすぎるわ!」


 ……そんなにすごいのか?


「確か使えるだけで『能力持ち』と同じくらい珍しいんだよな?」

「そうよ!」

「その……『能力持ち』ってなんだ?」

「え……それも知らないの?」


 先ほどの興奮が消え、胡散臭いものを見るような視線を向けてくる。


「……『能力持ち』っていうのは、魔法とは別に『特殊能力』を持った人のことよ」

「『特殊能力』……?」

「そうね……わかりやすいので例えるなら『魔眼』とかね」


 シャルの『魔眼』は『特殊能力』だったのか。


「……てかこの『魔法適性』って、1人1つしかないのか?」

「そうよ……極希に2つ持つ人がいるらしいけど……見たことないわ」


 ……そういや『光魔法』ってどんな魔法なんだろ。


「……この辺に図書館とかあるか?」

「図書館?町の中央にあると思うけど……なんで?」

「んや、『光魔法』ってどんな魔法か調べたくてな」

「それなら、私も付いていくわ!」


 ランゼが『魔水晶』を持ち、そんなことを言ってくる。


「……え?付いてくるの?」

「じゃあイツキは文字が読めないのにどうやって調べるつもりなの?」


 ……確かに。


「……じゃあ、付いてきてくれ」

「もちろんよ!」


――――――――――――――――――――――――――――――


「……ぁ、ああ……ん?」


 朝、目を覚ます……見慣れない室内だ。ここは―――


「ああそうだった……異世界に来たんだった」


 ―――寝ぼけた頭を振り、ベッドから降りる。


「……着替えねえと」


 冒険服で寝るのは汚いかな、と思い昨夜は制服で寝た。


「……寝巻きも買わないとな」


 コスプレのような冒険服を着て、懐に『魔導銃』を入れる。


「行くか……」


 フラフラとおぼつかない足取りで扉を開け―――ランゼが立っていた。


「おはよー!イツキ!」

「ああ大声出すな……寝起きにゃキツい」

「……どうしたの?」

「寝起きがわりいだけだ……気にすんな」


 ……朝は頭が回らない、昔からだ。


「ふーん……大丈夫?図書館行ける?」

「大丈夫……早く行こう」


 階段を下りようとして―――足を滑らせ、落下する。


「い、イツキー?!」

「どうしたんだい?!今の物音は―――」


 ……朝はダメだ、こうなっちまう。


「……だ、大丈夫?」

「大丈夫だ……ああヘルエスタさん、おはようございます」

「お、おはよう……怪我はないかい?」

「お気になさらず……朝はいつもこうなので」


 むくりと体を起こし、宿の外に出る。


「あー……太陽が眩しい……太陽なんて朽ち果てれば良いのに」

「何物騒なこと言ってるのよ!」


 目が……焼ける……


「はあ……やっと落ち着いてきた」

「……歩ける?」

「ああ、もう大丈夫だ」


 やっと頭が回ってきた。


「……えっと……図書館はどっちだ?」

「ん、付いてきて!」


――――――――――――――――――――――――――――――


「……でけえな」


 図書館の館内……元の世界ほどはないが、それでもかなり広く造らている。


「イツキ、持ってきたわよ」

「お、サンキュ」


 ランゼが持ってきた本を見る。


「……どう?」

「……やっぱ読めねえ」

「そう……じゃあ読むわよ?」


 くそ……何か屈辱的だ!


「『『光魔法』は、腕力を一時的に上げる『フィスト』、脚力を一時的に上げる『クイック』など『肉体強化』がメインとなる。詠唱時に込める『魔力』の量によって強化量が変わる。ただし『光魔法』は自身にしか使えない』……強化量ってなんだろ」

「……『魔力』をたくさん込めたらめっちゃ強化されて、少し込めたら少し強化させるってことか?」

「……なるほどね」


 『光魔法』って『強化魔法』なのか……まあ下手に使いにくい魔法よりは良いか。


「『フィスト』に『クイック』……他にはないのか?」

「ちょっと待ってね……後は暗闇の中が明るく見える『ルック』、聴力を強化する『ヒアリング』……かしらね」

「……ん?4つだけ?」

「……そうみたい」


 少なっ!


「それに、この魔法の中から使える魔法と使えない魔法に分けられるから……」

「え?『光魔法』の適性があったら『光魔法』全て使えるんじゃないのか?」

「違うわよ?私だって『ビッグバン』しか使えないし……」


 ……マジかよ。


「……実際に使ってみないとわかんねえ、ってことか」

「そういうこと……それじゃ『光魔法』を使ってみるついでにクエストに行きましょ!」

「お前は『破滅魔法』が使いたいだけだろうが」


――――――――――――――――――――――――――――――


「いらっしゃいませ―――あ」

「あ?」

「あなたは昨日の……」

「……?……あー、えっと……リオンだっけ?」

「はい、そうです!」


 ギルドに入ると同時に、昨日の気の毒な店員が駆け寄ってくる。


「……昨日はお世話になりました」

「は?俺、お前に何かしたっけ?」

「あの……『テルア』さんたちのことです」


 いやテルアって誰。


「……昨日、あなたが決闘した男たちのリーダーです」

「ああ、あのおっさんたちか」

「はい……おかげさまでしつこく声をかけられなくなりました」

「そりゃよかったな」


 まだ何か言いたそうなリオンを置いて、クエストの貼ってあるギルドボードへ向かう。


「……『コボルトの群れの討伐』『デスタイガーの討伐』『『ユグラ樹海』の調査』『魔鉱石の納品依頼』『ドラゴンの討伐』……どれにしましょうか」

「『ドラゴンの討伐』で良いんじゃねえの?」

「何言ってるの?!ドラゴンなんて勝てるわけないでしょ?!」


 ランゼの大声に、ギルド内が静まり返る。


「もう!『デスタイガーの討伐』にするからね!」

「ええー……何か名前からして三下感が半端ねえんだけど」

「するからね?!」

「わかったわかった……」


 ランゼがギルドボードに貼られているクエストの紙を乱暴に剥がし、リオンに手渡す。


「あー……悪い、そういうわけだ。ちょっと行ってくるわ」

「……あ、あの!」

「ん、何?」

「……クエストから戻ってこられたら、少しお話がございます」

「……話?」


 告白か?なんちゃってな。


「わかった……じゃあまた後でな」

「はい!お気をつけて!」


 俺だって年頃の男の子なのだ……話がある、といわれたらワクワクというか、ソワソワしてしまう。


「……イツキ?」

「な、何でもない」

「まだ何も聞いてないんだけど……」


――――――――――――――――――――――――――――――


「また『ユグラ樹海』なのか……遠いから嫌なんだよな」

「文句言わない……あ、見えてきたわよ」


 はあ……帰るときがしんどいんだよな。


「デスタイガーねえ……」


 タイガーって……虎だろうか?


「まあ『魔導銃』使えば瞬殺だな」

「ねえ、早く行きましょ!」

「お前はどんだけ『破滅魔法』が使いたいんだよ」

「……………」


 否定しろや。


「……ちょっと試してみるか―――『ヒアリング』!」


 俺の詠唱に従い、聴力が強化され―――ない。


「……『ヒアリング』は使えないみたいね」

「……ちくしょう」


 後は……『フィスト』と『クイック』、『ルック』だけか。


「……あ、いたわよ」

「うお、マジで虎じゃん」


 茂みの向こう―――黒と赤のシマシマ模様が目立つ虎が10匹ほどうろついていた。


「んじゃ早速―――『クイッ―――」

「『ビッグバン』!」


 俺の詠唱より早く、ランゼの詠唱が森に響き渡る。


「おまぇ―――」

「ギャォオ―――」

「ガォ―――」


 ランゼを止める間もなく、圧倒的暴力が一面に広がり―――


「……こ、の……バカヤロウ!」

「ご、ごめん……デスタイガーがこっちに気づいてなかったから……撃ちたくなって……」


 何こいつ、どっかのアニメにやたら魔法を撃ちたがる女の子がいたけど、こいつも同じ感じ?


「……ん?」

「ゴロロロロロ……!」

「ガルルルルルル……!」


 なんだ、まだ生き残ってるやつ……というか、巻き込まれなかったやつがいるじゃん。


「……『クイック』!」

「ゴァアアアアアアア!」


 試しに『クイック』を使い―――


「うぉ―――」

「え?!」


 ―――一瞬でデスタイガーの背後に回り込んだ。

 いや、速すぎない?魔力の込め方で強化量が変わるって書いてあったけど……今の、あんまり魔力込めてないつもりなんだけどな。


「―――『フィスト』!」


 がら空きの背中に、握った拳を―――


「グルルッ!」

「あっ?!」


 避けられてしまった、が―――


「―――きゃっ?!」

「……嘘だろ」

「グル、ガロロロロロ……」


 ―――放った一撃は空振った、のにも関わらず、辺りに轟音が響き渡る。


「な、何今の?!」

「おいおい……これってまさか……!」


 まさか……空振った風圧で、地面を粉砕したってのか?

 いや半端ねえな!


「……こりゃ危険だな」


 懐から『魔導銃』を取り出し、デスタイガーに向ける。


「『フィスト』と『クイック』は使える……と」

「クギャァアアアアア!」

「ガォオオオオオオ!」

「うるさい」


 弾丸を放ち、こちらに吠えるデスタイガーを仕留める。


「……帰るか」

「なんか……強すぎない?」

「強すぎだな」

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