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5話

「あーしんど」

「ご、ごめん……任せっぱなしにしちゃって」

「それは別にいいんだけどよ……『アンバーラ』までの帰り道が長いんだよな」


 あの後、集まってきたゴブリンを討伐した俺は、ギルドに報告するために『アンバーラ』へ帰っているのだが……遠い。


「……あ、そういや……なあランゼ」

「なに?」

「この世界の……『魔王』ってどこにいるんだ?」

「何でそれも知らないの?!」


 いや、そんなことを言われましても。


「……今から約3年ほど前、『魔神王』と名乗るやつが『アンバーラ』に……いや、この世界の国々に現れたの」

「3年も前なのか……」

「そこで『魔神王』は『魔界だけでは土地が足りん、よって貴様らの土地を奪うことにした』とか言って、どっかに行ったわ」


 ……土地が足りんって、どういうことだ?何か栽培してんの?


「その時に『魔神王』が連れてきた『魔王』がこの世界に残り、この世界を侵略しようとしているの」

「……『魔王』の所在は?」

「……2年前に、女神を自称する女の子が現れて、とある伝承を伝えていったわ」


 女神って……ヘルアーシャか?


「『異世界から現れし勇者、『七つの大罪』を引き連れ『ゾディアック』を討つ。さすれば『魔王』への道は現れるであろう』ってね。その時に『ゾディアックセンサー』っていう『魔導具』を置いていったんだけど……」

「『七つの大罪』に……『ゾディアック』?」


 『七つの大罪』……『強欲』『嫉妬』『怠惰』『暴食』『色欲』『憤怒』『傲慢』ってやつだったよな?

 もう1つの『ゾディアック』は確か……『黄道十二宮』か?

 話の流れから察するに、『七つの大罪』ってやつを引き連れた勇者が『ゾディアック』を倒せば『魔王』の居場所がわかる、ということだろうか?


「その『七つの大罪』ってのは、誰か判明してんのか?」

「いえ……『七つの大罪』に選ばれた人は、手の甲に紋様が浮かび上がるらしいんだけど……まだ1つも確認されてなくてね」

「クソゲーじゃん……じゃあ『ゾディアック』ってのは?」

「『魔王』の幹部……って感じね」


 ってことは『ゾディアック』……つまり『魔王』の幹部は―――


「『黄道十二宮』……『魚座』『乙女座』『蟹座』『牡牛座』『水瓶座』『獅子座』『牡羊座』『蠍座』『双子座』『天秤座』『山羊座』『射手座』……おいおい、幹部が12人もいるとか……マジのクソゲーじゃねえか」


 てか『異世界から現れし勇者』って……


「まさか……まさかな」


 俺は異世界から来たけど……俺ではないだろ。


「ん、やっと帰ってこれたわね!」

「あ、ああ……長かったな」


 とりあえず、ギルドに報告しないとな。


――――――――――――――――――――――――――――――


「あら、イツキ君、ランゼちゃんおかえり!」

「ただいまヘルエスタさん!」

「……ただいまです」


 ギルドに報告を終え、宿に帰ってきた。


「イツキ君、お疲れのようだね」

「はあ、まあ……」

「それじゃ、お風呂にする?ご飯にする?それとも―――ランゼちゃんにする?」


 俺の顔を見て、ヘルエスタさんがそんなことを―――


「ランゼで」

「はいよ、ちょっと待っててね。部屋を用意してくるから」

「ち、ちょっと?!ほ、本気なの?!」

「冗談に決まってんだろ」

「あ……冗談なの……」


 なぜかランゼが落ち込んだ。


「……じゃあ風呂にします」

「お風呂ね、お風呂はあそこの扉の先だよ」

「わかりました」


 まだ落ち込んでいるランゼの横を通りすぎ、お風呂に向かう。


「……ん、男湯と女湯が一緒なのか」


 まあ俺とランゼ以外の客はいなさそうだし……大丈夫か。


「お……なかなか広いな」


 風呂場の扉を閉め、体を洗う。


「……『服はここへ』って書いてあるところに服を入れたけど……一体何だったんだろ」


 洗濯機とは思えないし……


「はあ……わかんねえことだらけだ」


 体を洗い、湯船に浸かる。


「……俺、マジで異世界に来たのか」

「そう、君は本当に異世界に来たのさ!」

「え?」


 ……背後から幼い声がした。


「やあ!異世界での生活はなかなか順調そうだね!」


 俺の顔を見たヘルアーシャが、そんなことを―――


「へっ、変態だ!こいつ幼女の皮を被った変態だ!」

「ちょっと!女神を変態呼ばわりしないでよ!」

「ふざけんな!何で風呂に入ってるタイミングで現れんだよ!」


 ヤバイ、『何を』とは言わないが、隠さないと!


「……よし、これでいいか」


 とりあえずタオルを巻き、ヘルアーシャと向かい合う。


「……で?何の用だよ変態女神」

「君……いい加減にしないと2、3発くらい天罰を与えるよ?」


 怖いこと言うなこの幼女。


「君の異世界での様子をみて、大変そうだったら手伝ってあげようと思ってたんだけど……私の助けは必要なさそうだね」

「ああ……てかこの世界どうなってんだよ?異世界に来ていきなりドラゴンと戦い、チンピラとおっさんたちと喧嘩して、極めつけは仲間の魔法でぶっ飛ばされるって」

「……嫌なの?」

「いや……これなら退屈しなさそうだ」


 俺の答えに、ヘルアーシャが満足そうに頷く。


「そういや……お前が伝えた伝承の『異世界から来る勇者』って誰のことだ?」

「もちろん、君に決まってるさ」

「……え、俺、勇者とか嫌なんだけど」

「な、何で?!普通男の子なら『俺が勇者か……まあ悪い気はしないな』って言いながら『魔王』を討伐するものじゃないの?!」

「お前の中の男の子って、チョロすぎない?」


 慌てるヘルアーシャに背を向け、風呂場を出る。


「で、でも、この世界の『魔王』を討伐するには君の力が必要なんだ!」

「嫌だよ……俺、痛いのとか嫌いだし」

「そ、そんなあ……」

「……でも、『魔導銃』を貰ったり『無限魔力』や『身体能力の底上げ』とかしてくれてるし……ちょっとくらいは戦ってもいいけど」

「ほんと?!」


 ヘルアーシャが心底嬉しそうに笑う。


「『魔神王』ってやつはどこにいるんだ?」

「『魔神王』は『魔界』にいるよ……現在私たち『四大女神』が『魔神王』と戦ってるんだ」

「は?ヘルアーシャが戦ってんの?」

「うん、さすがに『魔神王』を君に任せるのはしんどいと思ってね」


 ……てか『四大女神』って?


「もう1つ言っておくと、『魔王』は1人じゃないんだ……『魔王』は4人いるんだ。私たちはこの4人の『魔王』を『四天王』って呼んでるんだけど」

「いやいや何それ、ムリゲーもいいとこだぞ」

「話は最後まで聞こう?……私たち『四大女神』は1人3つの世界を見守ることが義務づけられてるんだ」


 あー……初めてヘルアーシャに会ったとき、なんかそんなこと言ってたな。


「『四大女神』1人につき3つ……つまり12個の世界が存在する。『魔神王』はその12個の世界の内、まずは4つの世界を侵略しようとして、4つの世界それぞれに『魔王』を送り込んだの」

「わけがわからん」

「つまり、君が倒す『魔王』は1人でいいってこと」


 おお、わかりやすい。


「一応、ここまででわからないことはある?」

「……4つの世界にそれぞれ『魔王』が送られた。ヘルアーシャたちが『魔神王』をどうにかするから『魔王』をどうにかしてくれ、ってことか?」

「うん、簡単に言うならそういうこと!」


 ……何か色々大変だな。


「それじゃあ私は『神界』に帰るよ……『魔王』の討伐頑張ってね!」

「……気が向いたらな」

「ちょっと!そこは頑張るって言ってよ!」


 そんなことを言うヘルアーシャの姿はどんどん薄くなっていき―――消えてしまった。


――――――――――――――――――――――――――――――


「ん、ずいぶんと長かったわね」

「ああ……ちょっとな」


 『服はここへ』と書いてあるところに服を入れたら、何か綺麗になって返ってきた。

 洗濯みたいなことをしてくれたのだろうか?


「あら、イツキ君も来たのね……それじゃあご飯を持ってくるね」

「あ、ありがとうございます」


 ヘルエスタさんが厨房に引き返していく。


「……なあランゼ」

「どうしたの?」

「俺にも魔法って使えるかな?」


 昼間ランゼが『破滅魔法』を使ったのを見て、俺も魔法が使いたくなってしまった。


「自分の『魔法適性』も知らないの?……ほんと、イツキってどこから来たの?」

「そ、それは……その……」


 異世界から来た、というのは隠しておきたい。


「……まあ話したくないならいいけど。それじゃあ『魔法適性』を調べる道具を持ってくるから、ちょっと待ってて」

「……ああ、わかった」


 そう言い残し、ランゼが宿の階段を上っていく。


「イツキ君、ご飯を持ってきたよ」

「……ありがとう、ございます」

「あら?ランゼちゃんは?」

「『魔法適性』を調べる道具を取りに行きました」


 ……なるほど、異世界では唐揚げとサラダが主菜なのかな?


「……ねえイツキ君」

「何ですか?」

「ランゼちゃんのこと、どう思う?」

「どう思うか……ですか?」


 そうだなあ……


「普通に、良いやつなんじゃないですか?あいつがいないと俺はこの宿にも来れなかったですし」


 それに、俺の出身地を無理矢理聞こうともしないし。


「……ランゼちゃんから聞いたよ、イツキ君恐ろしく強いんだってね」

「まあ……それなりには」

「男に連れ去られそうになっているところを助けてもらえるなんて……惚れるにはしょうがないシュチュエーションよね」


 ……惚れる?


「あの、それはどういう―――」

「イツキー、持ってきたわよー」


 水晶玉を片手に持ったランゼが、階段から下りてくる。


「ん、何を話してたの?」

「別にー?ねえ、イツキ君」

「あ……はい」

「えー何よそれ!気になる!」

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