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2話

「んー……『魔力』を弾丸として射出するねえ……」


 道なりに進みながら、『魔導銃』を眺める。


「……ちょっと撃ってみるか」


 その辺に生えている木に狙いを定め―――


「―――おっ」


 ―――引き金を引いた瞬間、軽い衝撃と共に青白い弾丸が射出された。


「……おい、おいおいおい……なんだ、この威力は……」


 ―――弾丸が当たった木は、真っ二つにへし折れていた。


「……これって……かなりチート?」


 へし折れた木に手を当て、引き笑いを浮かべる。


「うーん……とりあえず、町に行きたいな」


 お腹減ったし、泊まる宿を探さないと。


「……ん、なんだあれ」


 後ろから……馬車だろうか、馬車がこちらに向かって走ってきていた。


「……一応、道を譲っとくか」


 道の端に寄り、馬車に道を―――


「―――ゴシャァアアアアアアア!」

「んな?!なんだ?!」


 突然の雄叫びに、辺りを見回す。


「……あ、あれは……まさか……?!」


 隣を通りすぎようとした馬車の御者が、上空を見て絶望の表情浮かべた。


「「―――ドラゴン?!」」


 俺と御者の声が被る。


「ゴォ―――ォオオオオオオオッ!」

「ひっ、ど、ドラゴンなんて……なんでこんなところに……?!」


 ……逃げよう。

 いや、常識的に考えてドラゴンなんかに勝てるわけがない。

 ほら、今にも襲いかかってきそう―――


「そ、そこの少年!ドラゴンの注意を引いてはくれないだろうか?!」

「嫌だよ、なんで俺が―――」

「頼む!陛下を無事に王国へ送り届けないと―――」

「先ほどから何の騒ぎだ?」


 大きな馬車の中から、1人の男が降りてきた。


「ぐ、『グローリアス』様!実は上空にドラゴンが現れまして……」

「ふむ……そうか」


 降りてきたのは、長いローブに身を包んだ若い男性だった。


「……『シャル』、すまない。私はここでおしまいのようだ」

「そ、そんな悲しいことを言わないでください!お父様!」


 ……?馬車の中から、女の子の声が―――


「死ぬときは、私も一緒です!」


 ―――馬車の中から、眼帯を付けた可愛い女の子が降りてきた。


「……ちっ……おい御者、その女の子に免じて少しだけ注意を引いてやる、その隙にどっか行け」

「す、すまない!陛下、王女様!すぐに出発を―――」

「何を言っておる……たった1人の少年にドラゴンを任せて逃げろと言うのか?そんなの、私のプライドが許さない」


 ……どうやらこの国王は、見ず知らずの俺を置いて行くのが嫌みたいだ。

 国王には向かないくらいのお人好しだな。


「……上空の相手か……どうするかな」

「ォ、ォオオオオオオオ……!」

「とりあえず―――撃ち落とすか」

「ゴォォオオオオオオオ―――」


 俺が『魔導銃』を構えると同時に、ドラゴンが口から火の玉を吐き―――


「―――バキューン」


 俺のふざけた効果音―――それに相応しくない威力の弾丸が射出された。

 青白い弾丸は、火の玉に衝突し―――


「―――グギャゴォオオオオオオ?!」

「す、すごいです……!」

「……今のは……?!」


 ―――衝突した火の玉を打ち消し、ドラゴンの腹を撃った。


「ひゅー……イカれた威力だな、こりゃ」

「ゴォ、ォオオオオオオオ!」

「うるさい」


 銃を構え直し、連続して弾丸を放つ。


「ゴア、ァオオオオオオ……!」

「あ、くそ!逃げやがった!」


 高速で飛び去るドラゴン……銃を下ろし、追撃を諦める。


「……異世界に来ていきなりドラゴンとか……そのドラゴンも、俺のチートの前じゃ、ただのザコじゃん」

「すまない、助かったぞ!私は『人国』を治める国王『グローリアス』だ。君は?」

「……俺は樹、百鬼 樹です」


 俺の名前を聞いた国王は―――グローリアスさんは首を傾げた。


「ふむ……なきりいつきか」

「いや、百鬼が名字で樹が名前ですよ」

「……名前はわかるのだが、そのみょーじとは何だ?」


 ……もしかして異世界に名字ってないのか?


「……それなら、イツキって呼んでください」

「うむ、わかった」


 ……スゴいな、異世界に来て国王を救ったぞ。


「あの」

「ん……あんたは?」

「私は『人王 グローリアス・ゼナ・アポワード』の1人娘『シャルロット・ゼナ・アポワード』です!」


 なんで眼帯を付けてるか気になるけど……聞かない方がいいだろうか?


「俺はイツキだ、よろしくな、シャルロット」

「……シャルロットではなく、気軽にシャルと呼んでください!」

「え?……じゃあシャル、よろしく」

「はい!よろしくお願いします!」


 ……いやめっちゃ可愛いな!


「あ、えっと……グローリアスさん」

「どうした?」

「ここから一番近い国はどこですか?実は道に迷ってしまって……」


 まあ道に迷ったってのは嘘だけど。


「ここから一番近い国は、私の治める国『アンバーラ』だな。何なら一緒に来るか?助けてくれたお礼もしたいしな」

「マジっすか」


 よっしゃラッキー。


――――――――――――――――――――――――――――――


「よし……着いたぞ」

「……でかっ」


 目の前に、アニメでしか見たことがないような王宮がそびえ立っていた。


「それでは、中に入るぞ」

「あ、はい」


 ……やべえ、完全に萎縮しちまった。


「……よし、この部屋で待っていてくれ」

「わかりました」


 ……見たところ、会議室のようなところだろうか。


「イツキさん、イツキさん!」

「……なに?」

「イツキさんは、女性の方とお付き合いされているのでしょうか?」

「いや……してないけど」


 ……なんか、シャルがさっきからくっついて離れないのだが。


「年下とのお付き合いは、ありですか?」

「……ありと思うけど」

「……む、胸のない女の子は、嫌いですか?」

「別に……嫌いじゃない」


 この質問は一体何なのだろうか。


「……わ、私のことは……どう思います?」

「……可愛い、と思うよ?」

「イツキさんは、おいくつなのですか?」

「17だ……てか、さっきからこの質問は―――」

「すまない、待たせたな」


 扉が開き、グローリアスさんと、若い女性が姿を現す。


「……そちらの方は?」

「うむ、私の妻の『エリザベス』だ」

「どうも初めまして、主人とシャルを助けてくれてありがとうねえ」

「いえ、たまたまですよ」


 長い金髪、紫の瞳……シャルにそっくりだ。


「それでイツキ君、お礼の話なのだが……聖金貨10枚ほどでどうだろうか?」


 ……いや、通貨の相場がわからんのだが?


「えっと……それってどのぐらいの価値なんですかね?」

「通貨の相場がわからないのか?聖金貨は1枚で金貨10枚の価値がある。金貨は1枚で銀貨15枚、銀貨は1枚で銅貨20枚の価値だ」

「……え、じゃあ聖金貨10枚って銅貨で考えたら―――」

「そうだな……銅貨3万枚だろうか」


 3万?! 


「そんなに貰えるんですか?!」

「気にしなくていい……ところで、君に頼みたいことがあるのだが、いいだろうか?」

「あ、はあ……なんでしょうか?」

「1週間後に『獣国』に行くのだが……道中、そして国内での護衛を頼みたいのだ」


 んー……護衛か……

 あんまり危険な目には遭いたくないけど、護衛くらいならいいかな?


「はい、俺でよければ力を貸しますよ」

「すまない、助かる……ところで、今日泊まるところは決まっているのかね?」

「あー……適当に宿でも探そうかと」


 日が暮れる前には探しときたいな。


「ふむ……今日は王宮に泊まってもいいのだぞ?」

「いえ、大丈夫です」


 多分俺の心臓が『王宮に泊まるとかやべえ!』ってなって逆に疲れそうだ。


「それじゃ、俺はこれで失礼―――」

「イツキさん、ちょっといいですか?」


 王宮を後にしようと席を立ったら、シャルが腕に抱きついてきた。ありがとうございます、違う、そうじゃない。


「私の眼を見てください」

「は?眼を―――」


 シャルが眼帯を外し―――隠されていた左目が現れる。


「シャル……?!」

「……………」


 グローリアスさんの焦ったような声が室内に響く、だが、俺はシャルの左目に騒然としていて、その声に気がつかなかった。


 ―――人間の眼は、普通黒い部分と白い部分に別れている。

 白い目玉に黒い瞳があるのが普通だろう。

 だがシャルの左目は、本来白いはずの目玉の部分が黒く、黒いはずの瞳の部分は真っ赤に彩られていて―――


「……どう、思いますか?」

「どうって……何が?」

「私の左目のことです……醜い、ですよね」

「いや、醜くはないだろ」

「ぇ?」


 ―――めっちゃかっこいい。


「何それ『魔眼』?」

「え、あの……何故『魔眼』だとわかったのですか?」

「そんなかっこいい眼、『魔眼』以外にないだろ?」

「……かっこいい、ですか?」

「ああ、めちゃくちゃかっこいいぞ」


 『異世界特典』の中には『魔眼』とかなかったし、羨ましいな。


「……お父様お母様、私、イツキさんと結婚したく思います!」


 シャルが外した眼帯をそのままに、そんなことを―――え?

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