王都会議午後の部(雨降って地固まらない)
ー王都クライム会議室ー
ステータスの存在により王都クライムでの会議は騒然とし王の一声によってお手洗い休憩を挟む事になった。
30分後、
ユウシは会議の場で、様々な改革案を吐き出した。
「魔物にも名前があるんですよ? 醜き緑色のはゴブリンですからね! 簡単な名前表は作ってきました。」「冒険者ギルド作って、冒険者沢山で魔物なぎ倒しですよ! それに魔物の素材でウハウハですしね。」「農業はこっちの方がいいですよ! 間にこういったものを植えたりね? 家畜も増やせますし、生産量が段違いですよ。え、家畜ないの? エデンの果実?」「鍛治のやり方も改善点が沢山ありますよ! まず鉄は叩くと強くなるんですよ、それに合金というものがありましてね…。え、魔物から取れる? でもこの製鉄法ならいいでしょ! ね。」「スキルはこれとこれは必須スキルです! なにせ…。」「なぜか勇者召喚が行われた日からしか経験値が入っていないみたいなんですよねぇ。だからこれからみんなで前線?に行ってレベリングしましょう!」「法律だっていろんな考えがありますからねーこれとこれがわかりやすいですかね! いや、考え方だけですよ、王政否定はしませんよ?」「そういえば宗教とかって……いや、なんでもないです。」
ふふん、色々予想外ではあったがこれで理想の異世界が作れるぞー! 後はさっさと前線とやらに行ってレベリングだな。獲得したスキルも試したいからなー。戻って来る頃にはギルドも出来て、ザ異世界が!
そんなユウシだったが勢い任せに提案していく姿をみて、王とルカ、そして職人派閥の面々は不快感をぬぐい去れなかった。
「ちょっと待っていただきたい。 ユウシ殿、王としては話を聞く前に…」
(あれがユウシ殿の素なのだろうか、なんだ、この不快感は?…俺の王の部分がこの男に任せるのは不安だと囁いてくる。確かに冷静に考えればステータスというものを発見したこの男の語る未来は理想的だが、ステータス以外でユウシ殿が話している事はまやかしの可能性もあるんだ。真実なら是非使いたいぐらいのものだ。しかし一体、なんなんだろうか、この不快感? いや不安感は?)
「王の仰るとおりです!ユウシ様はいったい何を言っておられるんですか?」
(確かにステータスには驚きました。この先の事を考えれば胸の高まりは抑えられません。しかし、ユウシ様のこのような言動とは話は別です!私は法の番人。このような事で流されてはいけません!)
「え?一体なんなんですか?」
一体、なんなんだ? 昨日から必死に効率的な魔王討伐への改革案が自分でも信じられないくらい浮かんできたんだ。いい案だと思うんだが…。 ん、なんだ?王様とルカと職人トリオの顔が浮かないぞ? パペリーニョさんとかジャックさんは目をキラキラとさせてるのに、女の子はいいとして。虎が目をキラキラさせてるのはシュールすぎる。お前の所為でこの会議の雰囲気に気がつかなかったからな。よくみるとモフモフじゃないか。
「一体なんなんだ? じゃありませんよ。突然あらわれて魔王討伐は簡単だと言った結果がこれなんですか? 挨拶ばかりに、ステータスを見つけた功績を発表してそれを利用して改革案とは名ばかりに我々に命令する。仮にもここは王都クライムを担う重鎮が集まる場です。いくその重鎮達にあなたはなんて口のきき方なんでしょう! 王女様が召喚なされたといってもですね……」
「ルカ殿の言うとおりです!それに、そんな嘘くさい方法で収穫量が上がれば我々はここまで苦しんでおらん! 我々にはエデンの果実で十分じゃ!」「そうだそうだ! 我々の製品に文句をつけるなステータスの発見は素晴らしいがそれ以外は本当だとは限らん! 鍛治についてはわしが一番知ってるんじゃ。」
「おいおい!ちょっと待てよ。ユウシ殿言っている事は実に的を射ているんじゃないか?兵たちもずっと剣の刃こぼれや切れ味がひどいと言っている。この改革案を実行すればきっと兵士達も喜ぶに違いない!!」「そうやでー。これで我々商人もがっぽり稼いで、大繁盛や!正直ここに来るの嫌やったんやけど、きてよかったでー、役得やな!ユウシ殿とはもっと深〜い大人な話をしたいなぁ〜。異世界の商人はすすんではんでー。」
「ええい、脳筋と子供は黙っておれ! いまはユウシ殿に言っているのだ!」
「脳筋だとぉ⁉︎ 誰のおかげでテメェは畑を維持できてると思ってんダァ?あぁ?」「貴方の畑消えるで…。」
「ちょ…」
いやー命令する気とかなくて、さっさと任せて、魔物と戦ってみたいんだけどなぁ。それに職人さん達はこの顔がいや、このメガネが見えてないのかな?職人の眼を疑うね。あぁ、この世界には高品質な物がないからか。眼がないんだ。あぁ大変だわまったく。これでどんな性格かは確認できるかー。まあここまでくれば、王の采配になるでしょ。そしたらアン王女に召喚された者の俺に悪い方にはいかないだろう。アン王女が悲しむからな。ああ、ちょろいな! まあここまできたからには、何か聞かれたら正直に答えておくか、ここで変な誤解とかあると後々効率悪くなるだろうし、予防線だな。なんか聞かれたら素直に言おう。
ここにきて会議はユウシ賛成派と反対派にわかれてしまっていた。そんな中、ユウシは自然と安心していた。王が親バカだからである。
「静かにせよ‼︎ ルカよ俺の言葉を遮るな。それでも法の番人か? 皆も熱くなりすぎだ。」
『ハッ!申し訳ありません。王よ。』
「もうよい。さて、ユウシ殿、王として尋ねる。そなたはこの国を良くするために様々な方法を我々に伝えた。しかし、ユウシ殿、そなたにはこの国を、いや世界を担うつもりがあるのか?この方法を試した結果の責任を。なんの成果も得られなかった場合の責任を。」
(そうだ、この不安感の正体はこの男の責任感の無さにあるのか。改革案を話す姿はまるで御伽噺に出てくる子供の邪神のようだ。我々の生活を考えずに変革改革を無邪気にしていく邪神のようだ。)
「ありません。私は皆さんがいる世界を、よりよくしていく手助けをしたいんです。そのアイデアが浮かんだから、ぜひ伝えたかった。そしてアン王女には悪いですが、私は勇者として活動するつもりはありません。政治に口を出す気も資格もありませんし、そういうものからは距離を置きたいです。それにいま伝えた事も各自で検証して使ってくださって結構です。騙すつもりもありません。つい熱くなってしまいましたが命令する気なんてこれっぽっちもありません。失礼な言動は重ねて謝罪します。」
責任か…そんな事考えてもいなかったな。なんだろう。一度死んだからか現実感がないんだよな。
「ふむ。謝罪はよい。先に伝えられていたのだからな。」
バンは顔の前で手を組み少し間を作るとなにかを思いついたのかユウシに話し出した。
「先ほどから俺が感じていた不安は払拭されたようだな。よし、わかった。この改革案を活かすも殺すも我々だと言うことで皆も、もう十分だろう。ユウシ殿には退室してもらえるか? 熱くなりすぎた。」
「わかりました。」
ふー緊張した。素直すぎたかな? ラストに重い話を聞かれるだなんてな。まあ改革案自体は出したんだし。勝手にザ異世界になっていってくれるだろう。カモン、理想の異世界生活!
「それと、ユウシ殿とは夕食を共にしようと思う。その時にでも会議の結果を報告しよう。あぁ、もちろんアンも一緒だ。心配するな! そうだ。アンもユウシ殿と一緒に退室しなさい。ユウシ殿と話す事もあるだろう。ユウシ殿もよろしいかな?」
「わかりました。」
そうしてユウシとアンはカーティスに連れられ自室と化した書物蔵に向かったのであった。
勇者殿ではなくユウシ殿とは…偽物なんじゃないんですかね?
いえいえ、勇者とは称号ですからね。氏名に勇者とつくわけないんですよ。そんな嘘つく詐欺師がいるもんですか。そもそもステータスとやらがあってはごまかせないそうですから、よっぽど間抜けな人が早とちりしたんでしょうね。
だれがそんな勘違いしたんですか…
ユウシ−ハセガワ殿もなかなか訂正できずにいたんでしょうね。過去にも勘違いとかされたらしいですよ。
アッハッハッ