−白き世界− 神の制約
行ったか。会議を開かなければな。
女神姿から元の姿にもどった神々の長は見送った青年から感じたものから危機感を募らせていた。
あの清々しさあれは確か…最初の男に似ていたな。
とまた世界を破壊するのではないかという不安が長を襲っていた。
おーい……おーい
気づくと長の周囲には神々が集まり皆が円卓を囲っていた。
やっと気付いたか長よ。濁りは大丈夫かね?
おお悪いのう。大丈夫じゃお主ほども濁ってはおらんよ
と長は返答しながら他のものたちと円卓を囲んだ。
そうだろうな。長は我々のなかでもっとも大神さまを敬っておる、制約を破る時はやむおえない時じゃ。先ほども女神姿で頑張っておったのじゃ。ほっほっほ。
おっほん。いまはあの勇者のことを心配せい
あやつは異世界に行くのがさも当然だとばかりに我々のリソースをむしり取る気満々じゃった。
そうだな。まあ大神様の世界では異世界に行くお伽話があるそうじゃないか。そのせいだろう。まあそんな心配するなって、俺にはそんな悪い奴には見えなかったぞ?
そうじゃがな…。 我々はもとは下界の者。各々数多の修行を乗り越え仙人といわれ、肉体を捨て、精神体にとして別次元宇宙へと到達した存在じゃ。しかし制約が課せられている。その禁を大きく破れば濁り、下界行き、記憶もなくしまた1からの修行じゃ。いや、0からだ。そんな危険を犯してまでこの計画を実行したのじゃ。心配にはなろうて。
それに得られたリソースのその使い方にも制約があるからのう。前は単純に力とか魔力とか呼んでおったがもうこれは資源じゃ。
そうじゃそうじゃ。心配じゃ。
わかったわかった。御老人方、そろって若者をいじめないでくださいよ。俺が悪かった。
ほっほっほ。まあ心配じゃがな。その為の世界をわざわざ作ったのじゃ。あの世界の住人は我々の力も教えていないからな。全て勇者とあの世界の民に任せている。これで我々の力が必要ない世界を構築できればよいのだがな…。
まあその点、大神さまは素晴らしい方だった。まるで悪ガキのようにあらゆる法則の抜け道をみつけて、一時はズルだなんだと問題にもなったのう。詰問したもんじゃ。ほっほっほ。
神々が語り出すといつも大神さまの話題を話す。大神さまが大神となってからは制約とは大神さまがいるという高みの者が決めたのだろうというのが大方の見解だった。
…はっ、いかんいかんいまは勇者の話じゃったろう。それで先ほども話題には出たが…その世界構築はどうじゃった?
おお、それがな思わず唸るほど微妙なさじ加減で作ってきたぞ。ほぼ宇宙にもとから存在するダークマターのみで創ってきたからな。人類はもはや絶滅寸前だ。俺自身びっくりしてるぜ。
鉄やら金やら、資源の量は変えられんのは制約通りじゃな。しかし、ダークマターには制約は存在せんしそのような世界になるのは仕方ないが。ダークマターから生まれる魔物達と少ない我々の加護ではそもそも世界として成り立たんのではないか? 魂が成長する場所が世界なのだから、我々はその管理を任されているようなものだろう?
大丈夫だと思うぜ。制約は守っているし、我々の管理は行われているみなされるはずだ。それにあの世界の人類はそう簡単には滅びないようにしてある。
ほう! その方法とは?
おうよ。3つぐらいは安全策を講じてあるぜ。
一つ、魔王復活はしばらく時間がかかる事
二つ、魔物は森から出ようとは思わない、まあ人類の生存圏は平野だ。だから人類が知る範囲ではあの世界は南から崖、海、平野、森、未知、にしといたぜ。ああ、わかってますぜ。こんなわかりやすい世界で大丈夫かと。まあ大体複雑な方が匙加減も楽でいいのはわかってますが…まあ大丈夫だろ! だからこそもう一つ安全策を講じてる。そう、秘密結社を作ったぜ!
これが若さか…
まあ人の時から考えればかなりの時を経たはずなのだが。
おいおい、いくら俺が新人でも頑張ったと思うぜ? 奇跡だろ。
そうじゃな。
頷く神々達。
そうだな。低リソースでよくやった。これなら人類が科学技術を手に入れても争う余裕などなく、人類が増えても世界のバランスが崩れることはないだろう! 幸いにも、世界創造による濁りが少なくなったおかげで力が振るえる。もしもの時は勇者を殺せばよいな。全く大神様の所の魂は我々の世界に来て傷つくどころか質が上がるとはな…まあそのおかげで殺せるのだが。まあこれで計画の成功は間違いなしじゃろ!
うむ。楽しみじゃな。
楽しみだ。
喜ぶ神々
だが勇者がもたらす技術、発想は人々を争いに導き、たとえ勇者が死んだあとも争い合い、魔物にも殺され、世界の崩壊を止めることはできないだろうな。
それぞれに思い悩む神々
人々を救うという大義名分で世界を崩壊させた者がいたな。増えすぎた人口に、資源を求めての戦争。魂の質は下がり続けたものだ。まったく、大神様はどうやって世界を維持しているんだ? 適度に魔物という存在や聡い者には我々の援助を与えなければ、人類は勝手に滅んで行くだろうに。
それは神々が大神になれない由縁だった。
さて皆のもの、これが出来うる限り最大のことだな。世界構築による、我々の濁りはすさまじい。また修行の日々だ。それぞれの世界で人々をよく導くのだ。この試みは我々が大神さまのもとへ行くためであることを忘れるな。
神々は深く頷き。気づくと円卓も神々も消え
白い世界だけが残った。
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