竜国到着
ミリイのお陰で、あっという間に竜国に到着したが、アデルはなかなか現れず、マリアンヌはカールを置いて、迎えに来たフィリップと遊びに行ってしまった。
暫くして、やっとアンソニーがやって来たが、酷く忙しそうである。
「お待たせして申し訳ありませんな、カール様。只今、我が国の消えた村から調べに出した報告の者が戻ってきたと同時に、新たな被害が出た報告も入りまして、少々取り込んでおります。」
「ペガサスでも、消えた村があるんだ。」
「存じ上げております。ご用向きは、その事でございますな?」
「うん。アレックスに調べてくれないか頼もうとしたら、アレックスは人探しの仕事に出ていて、暫く帰らないというから、アデルさんに一緒に調べて貰えないか、頼みに来たんだ。」
「その事でしたらもう既に着手しております。他国の消えた村も同時に調べております。」
「ああ、ありがたい…って事はやっぱり、全部同じ状態なのかい?」
「はい。全て同じ状態なので、やらかしたのは、同じ人物といえばいいのか、集団といえばいいのか…。人間が出来ることとも思えませぬが、そう見ております。」
「そうか…。それで、新たな被害って?」
「我が国の比較的大きな町でございます。今度は、他の村よりも、人口も規模も大きいのですが、やはり同じ状態で。ただ、今回は、逃げ延びた者が数名おりますので、回復を待って、話を聞く予定でございます。」
「その人達は無事なの?」
「はい…。しかし、衰弱が激しく、かなりの興奮状態で、話が通じません。」
「可哀想に…。よほど怖い思いをしたんだね…。」
「その様でございます。」
カールが考えながら聞いた。
「この国で二件、ペガサスで、一件。あとはどこで?」
「麒麟国の北東でございます。今のところ、竜国の息のかかったところでしか起きておりませぬな。」
「つまり、ターゲットは竜国という事?そしたら、敵は、ワイバーンかな…。獅子国と竜国は今は仲良しだものね。」
「そうなりますが、斥候の話では、ワイバーンに特別な動きは無い模様。つまり、軍を動かしている形跡は無いのです。」
アデルがやっと来た。
用件も分かっている様で、直ぐに本題に入った。
「お待たせして申し訳ない。カール殿、そちらの調べは如何か。」
「それが、何も無いんです。強いていえば、やたらと灰が多かったな位でしょうか…。」
「その灰はお調べになられたか。」
「いいえ…。灰が何か?」
「その灰、どうも人間や家畜が灰になった様なのだ。灰に成り切ってない部分を我が軍の兵士が見つけて帰って来たが、人間の骨だったそうだ。」
「つまり、一晩で、村人全員を灰にしたという事なんですか!?」
「そういう事になる。しかし、燃えたような形跡は無い。もうアレックスの力を借りるのも躊躇していられなくなった。何処に居るかご存知ないか。」
「アーヴァンク国の王子探しの仕事だという話ですから、アーヴァンクではないでしょうか。」
「アーヴァンクだな。使いを出そう。カール殿、調べはこちらで進めるから、ペガサスに帰りたまえ。」
そう言い残して、また忙しなく仕事に戻って行った。
アンソニーが補足した。
「生き残りの証言その他、分かり次第、直ぐにお知らせ致します。」
「有難う。宜しくね。」