アレックス悩む
アレックスは、この国で賞金稼ぎの取次をしている古本屋の親父の元へ行った。
賞金稼ぎの取次は、どこの国でも、大体は雑貨商か本屋、あるいは、武器屋がやっている。
取り扱うものが、昔の物だったり、曰くがあるものだったりするので、情報が入手しやすいからかもしれない。
「おや。色男の旦那じゃないか。聞いたよお?ペガサス王妃奪い取ったんだって?」
「おいおい。情報が古いな。もう3年も前の話だ。」
「つー事は、3年もご無沙汰だったんだよ、旦那が。」
「なるほど。そうだな。ここは遠いから、あまり仕事先に選んでないんでね。」
「ふーん。カミさんのそばから離れたくないってか。」
「うるさい。」
「仕事探しかい?」
「いや。今仕事中だ。レーベン王子探し。」
「ああ。旦那が。確かに旦那向けだ。超危ねえ仕事だぜ。」
「獣に変身するとか?」
「そうそう!もう掴んだのかい。流石旦那だねえ。」
「ところで、獣に変身してしまうような病気、又は魔法なんてのがあるのか。」
「はああ…。聞いた事無いね。
魔法では、そんな様なのもある様だけども、それは、自分がなりたい時だけのもんだし、魔法ってのは、時間が経てば、効果がなくなるだろ?
それに、魔法でなるのは、獣じゃなくて、ドラゴンとか、獅子とか、もうちょっとかっこ良くて、役に立ちそうなやつじゃねえのかい。
まあ、俺の知識は書物だけだけども。」
「確かにな…。黒魔法でも無いか。」
「無いと思うよ。それにもう、黒魔法使える人間は世界から居なくなったじゃないか。旦那が退治してくれたんだろう?」
「ああ…。」
世界中の黒魔道士はウロボロスに集結していたため、ウロボロスの崩壊と共に、黒魔法も滅んでいた。
「じゃ、なんか無いか。」
「なんかってなんだい。」
「例えばそうだな…。我が子でも、そうなったら、殺さなくてはならないような状態というか…。一瞬にして人が死ぬような技を身につけてしまうとか…」
「我が子でも殺さねえと…?なんだい、そりゃあ。」
「人目につくこと無く、遠く離れた場所に移動出来るとか…」
「旦那あ、疲れてんのかい?変な事ばっかし言っちゃって。」
アレックスは、珍しく不貞腐れた顔で、店先の椅子にドスンと座った。
「疲れもする。全く分からん。」
「へえー。旦那が分かんねえのかい。こりゃ大変だ。」
「ワイバーンに行ってみるか…。」
「旦那がワイバーンは危なすぎるぜ!?あんたもろ竜国の人間の顔してるし、そのでっかい剣。そんなもんぶら下げて歩いてんのは、騎士位、騎士といえば、竜国。顔でばれなくたって、剣でバレちまうよ!」
ワイバーンと竜国は敵国もいいところで、平民同士が他国で会っても、血を見ることになるという位、下々に至るまでの犬猿の仲である。
本屋の親父が言う事も尤もだ。
「しかし、これが無ければ、戦力が激減してしまう。」
「やめときなよー。ワイバーンはさあ。」
「商人にでも化けたらどうだろう。」
「そんな目付きのおっかねえ商人なんか居ねえよ!」
「はあ。勝手に入り込んで、暴れまくったら、兄上に怒られるしなあ。」
「は?兄上って?」
麒麟国の賞金稼ぎ取次をしている雑貨商の親父しか、アレックスが竜国の第二王子である事は知らない。
アレックスは咳払いをすると、話を変えた。
「ワイバーンについて書かれているもの、全部出してくれ。とりあえず、書物から調べてみよう。」
「はいよー。」