表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怨みの花  作者: 桐生初
2/20

竜国では…

「陛下、またでございます。」


竜国国王であるアデルの下に、ダリルが深刻な顔で告げに来た。


「我が国か。」


「いいえ。ペガサス国の南東の小さな町でございます。」


アデルは地図を広げ、新たなバツ印を付け、ダリルとアンソニーと共に、地図を睨みつけるかのように見た。


「場所に法則性は見て取れ無いな…。

1番最初は我が国の北東の小さな村。

次が麒麟国の北東。

今回のペガサス国…。

どれも小さく、国境の小さな村や町。

然も一晩で、住民が消え去り、草木まで枯れるとは。

一体、どういう事だ。アンソニー、黒魔法か?」


魔導師のアンソニーが、深刻な面持ちで、首を横に振った。


「いいえ。斯様な魔法は聞いた事がございませぬ。古代の文献を全て当たり、父や他の魔導師にも聞きましたし、ジュノーにも聞きましたが、そんな魔法はこの世には無いと。」


「では、軍隊が…と考えても、この様な技…。いくら小さな町とはいえ、住民は50人は下らない。それを一晩で移動だなどというのは、人間には出来ぬ…。

我が国の消えた村の調べはどうなっておる。」


ダリルが答えた。


「我が国と申しましても、大鷹を飛ばしても3日かかる場所。また、生き残りもおりませぬ故、相当難儀しておる由。しばしご猶予を。」


「ーうん…。しかし、この7日余りの間に、既に3つだ。あまりのんびりともやって居れぬぞ。」


「は。」


ダリルが出て行くと、入れ違いに、拙い足取りでフィリップが入って来た。

その後をエリザベスが慌てて追いかけて来る。


「フィリップ!駄目ですよ!?父上はお仕事中です!」


アデルは笑いながらフィリップを抱き上げた。


「構わん。」


約束通り、またアデルの所に生まれて来たフィリップは、そろそろ1歳になろうとしていた。


「おじしゃま、来ないのですか。」


おじしゃまとは、叔父様、即ち、アレックスの事だ。


「どうだろうなあ。そろそろ仕事しないとならないんじゃないか。ここへ遊びに来ている訳にも行かないだろう。」


アレックスは、ウロボロスの一件から2年近く、仕事もせず、アデルからの小遣いも受け取らずにいた。

何せ大鷹というのは、よく食べる。しかも生肉しか食べないから、イリイとミリイにカレンの大フクロウまでとなると、相当な食費だ。

この間のウロボロスの一件でいくら稼いだとはいえ、もうそろそろなくなっているはずである。

今までのようにここへ来て、マリアンヌと2人してフィリップと遊んでいるという暇は無いはずだった。


アデルの机の上を見ていたエリザベスが、悲しそうな顔になっている。


「どうした?」


「また消えた村が出たのですね。おいたわしい事です。」


「全くだ。」


エリザベスは、アデルの顔を心配そうに見つめた。


「相変わらず、何も分からないのですね…。」


「そうなんだ。目的すら分からない。」


「ーアレックス殿に頼まれてみては?」


「それも考えたんだが、魔法でも無いとなると、いきなり近付いたら、アレックスまで消えてしまうのではと考えるとな…。」


エリザベスは、くすっと笑い、からかう様な目でアデルを見た。


「相変わらず、過保護なお兄様です事。」


アデルは咳払いをすると、フィリップと遊び始めてしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ