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怨みの花  作者: 桐生初
12/20

お腹空いたの…

不思議そうな顔のカールを連れて酒場を出ると、牛飼いが怯えた様子でアレックスに半泣きで訴えた。


「竜国の旦那!あんたの大鷹がおらの牛をさっきからすんげえ目で見てて、牛が怯えちまって、動かねえんだけども!!」


「ああ!しまった!イリイにエサをやるのを忘れてた!」


アレックスは、外で待たせていたイリイに駆け寄り言った。


「ごめんな。うっかりしてしまった。あの牛はダメだよ、イリイ。幾ら何でも生肉過ぎるから。解体に時間がかかる。」


「そういう問題なの?アレックス…。」


つぶやくカールに返事もせずに言う。


「すまん。金が無い。生肉買ってきてくれ。5キロな。」


「ー生肉を!?僕が!?」


「早く。このままでは、牛だの馬だのに齧りついてしまう。」


カールはこう見えて、ペガサス王である。

肉屋にお使いなど初めてだが、渋々肉を買って戻って来た。


イリイが満腹になったので、イリイに乗って、鍛冶屋の下へ行く。


「人型の棺桶を作ってくれ。こう、前後でカチッと人間を挟むような感じで、隙間無く覆うんだ。今日中に作って欲しい。」


「ええ!?随分な急ぎだな、旦那!」


「人間250人の命がかかってるんだ。頼む。」


「うーん…。お代は弾んでくれよ?」


「ああ!俺が払えなかったら、このカール王が払ってくれるさ!安心していい!」


「へえ。王様が?そりゃ確かに安心だ。」


「ちょっとアレックス?何勝手に保証人にしてるんだよ…。」


「仕方ねえだろ。依頼の範疇超えたら、賞金貰えねえかもしれないんだぜ?結構仕事怠けてたから、スッカラカンなんだよ。」


「全くもう…。早く腰を落ち着けないと、マリーだって安心出来ないじゃないか。」


アレックスは笑った。


「有難い事に彼女は金銭感覚というものが無いんでね。危機感も無いんだな。」


「笑い事じゃないでしょう!」


鍛冶屋が仕事にかかったので、2人は外に出た。


「でも、捕まえた後、どうするの?」


「麒麟国にいい医者がいる。そこに連れて行ってみる。原因が分かれば、治療法もあるかもしれない。」


「でもさ…。大罪人だよ?もう既に500人もの罪の無い人達を殺してるんだ。」


「そうなんだよな…。特に兄上は生かしちゃおかぬと言うだろうな…。」


「いくら親戚でも…っていうか、親戚だからこそ、厳しくしないとなんでしょう?竜国の騎士道精神だと。」


「その通り。まあ、その時その時で考えるしかないな。とりあえず、リチャード様にあの町が狙われている事を伝えて、住民を避難させなくては。」


「それなら、伝書はやぶさにさせるよ。」


「伝書カラスじゃなかったのか。」


「カラスはね、妙な具合に賢いからね…。伝書させた途中で、いい話持ちかけられると、乗っちゃって、手紙をそいつに渡しちゃったりするんだ…。」


「飼い主に忠義が無いんだなあ。あんたから改めるべきなんじゃないのか、それ。」


「うるさいなあ!マックス!」


苦労人衛士長のマックスを呼び、手紙をしたため、伝書はやぶさに届けさせた。


「でもさ、まあ、勿論、捕獲に使う道具は作らなきゃだけど、結構のんびりしてるっていうか、間に合うって思ってる感じだよね。どうして?」


「被害にあった村、初めは3日置きになってる。100人超えてからは、4日置き、5日置きと、間隔が延びているだろう?」


「ああ…。そうだね。移動時間?」


「いや。恐らくあの乗り物は、大鷹より少し遅い程度の速さだろう。移動時間じゃない。目撃情報でも、大体そんな感じだった。だから俺は、腹が減らなきゃ、効力が発揮出来ないんじゃないかと思ってる。」


「つまり、たらふく命を吸い込んじゃうと、怨みの花効果が出せないという事?」


「そうだ。だから、人数を徐々に増やして、一気にどれ位の人間を殺せるか実験してるんじゃないかと思う。古代の時も、アーヴァンク人全員を殺す前に終わってる。なんらかの原因で呪い効果が止まって、誰かが殺して終わったんじゃないかとね。」


「酷いな。実験だなんて。で、その古代の時の犠牲者数は?」


「それはどの文献にも載っていなかった。だから、実験が必要なんだろう。」


「そうか…。じゃあ、あと、二日後位なわけだね。」


「そういう事。で、あんた行くよな?」


「ーはい!?なんで僕!?」


「今まで結構助けてやったろう?」


「その都度賞金巻き上げてるじゃないか!マリーだって、持って行っちゃったくせにい!」


「俺一人じゃ、捕獲出来ないじゃないかよ。手伝えよ。国王が身体張って民を守らないでどうすんだよ。」


「ええー!そんなあ!」


「賞金ちょっと分けてやるからさ。」


「要らないよ!お金なんて!」


「じゃあ、ただ働きな。棺桶が出来上がり次第、出立だ。」


「ちょっとお!?いいなんて一言も言ってないよ!?」


「はっはっはっは!」


アレックスは声高らかに笑うと、どこかへ行ってしまった。


「もう…。勝手なんだから…」

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