皇妃様、皇帝陛下に溺愛される。
R15は保険です。
さらっと読めると思います
題名、本文の王妃、を皇妃に変更しました。
なんだかゴロが悪くなってしまいました(; ・`д・´)
教えてくださって本当にありがとうございます<(_ _*)>
政略結婚。
いまどき珍しくもない。貴族のうち、恋愛結婚したのはほんのひと握りだろう。
だから、自分も嘆いてはいけない。
恋愛結婚に夢見てたのは昨日まで。
今日から私はユースタシア帝国の皇妃なんだから。
例え、、人質として嫁ぐとしても。
♦️♦️♦️♦️
「これは一体どういうことなの?サーシャ」
「私にもわかりかねます、姫様」
私は今日からユースタシア帝国の皇妃。
表向きは和平のために、実際は人質として小国から嫁いできた一応王女だ。
帝国についたその日に婚儀をあげさせられるあたり、軽んじられているのがわかるだろう。
ただ急いであげたにしては用意されたドレスはぴったりだったし会場も豪勢だった。
どうしてもこちらでウェディングドレスを用意させて欲しいと言われたから、てっきり見るにたえないボロをきせられるのかと思ったが、そんなことはなく今までに見たこともないほど美しいドレスだった。
母国からただ一人だけ連れてきた異母姉妹兼メイドのサーシャなんて「姫様の御髪の色や肌の色に完璧にあう配色ですね。」と評していた。
もう一度繰り返すが、私は人質として嫁いできたのだ。決して望まれての結婚じゃない。
私の立場はこの国では事実上その辺の有力貴族より低く、どんなにひどい扱いを受けても母国は文句すら言えない、という状況なのだ。だって帝国軍強すぎるから。
だが、いざユースタシア帝国について、謁見やら婚儀やらいろいろ済ませて部屋に来てみたらどうだろう。
ここにつくまでの廊下には大量の私の姿絵が飾られていた。鳥肌ものだ。
城のメイドから護衛に至るまでの使用人に何故か大歓迎を受けている。私って人質よね?
部屋に入ってみれば調度品、小物、全て私の好みで揃っている。偶然なのか。
そして一番不可解なのは夫となるこの男、現皇帝アレクサンダー・ユースタシア。
送られてきた絵よりもよっぽど整った顔立ちで軍人かと思うくらいの立派な肉体を持った文句なしの美丈夫である。
その男が私をうっとりとした目で見つめ、よく来てくれた、待ちわびていた、と甘い声で囁いてくるのだ。
「あ、あの………」
聞きたいことがたくさんある。
べたべたと触ってくる男をべりっと引きはがして真正面から向き合う。
体を離した直後は不満気な顔をしていたアレクサンダーは私と目が合うと頬を染めて微笑んだ。
「なんだ?愛しいナターリア。」
…………愛しいナターリア?
ナターリアって私よね。そ、そりゃあそうよね。
ちょっとまってこれは本当に軍神と恐れられている皇帝陛下ですか?
どうしよう。なにから聞いたらいいんだろう。
戸惑ってる私とは対照的にアレクサンダーは何が嬉しいのか始終笑顔だ。
「あの、廊下に飾ってあった絵なんですが………」
本当は私って人質ですよね?と聞きたいがとてもそんな雰囲気じゃない。
「あぁ!あれか。君と会えない日々が辛くて描かせていたらあんなにも増えてしまったよ!微笑んでいるナターリア。眠そうなナターリア。頬を染めているナターリアなんて可愛すぎてどうかするかと思った。」
あれ?おかしいな謎が深まった。
あとなんだろうこの漂う残念感。それから非常に気持ち悪いです。
「サーシャ、私って人質よね?」
つい、側で控えているサーシャに訪ねてしまった。
脳のキャパを超えていて皇帝陛下の前だとかさっきまではそんなストレートに聞けない!と思ってたこととかは全て消え去っていた。
私の問にすばやく反応したのはサーシャではなくアレクサンダーだった。
「人質だと?とんでもない!!私は君と結婚したくてしたくて、つい君の母国を脅してしまうくらいには君といたくてやっと夫婦になれたというのに!今日から毎日政務の前にはいっらっしゃいのキス、帰ってきたらおかえりなさいのハグ。それから食事の時はその愛らしい声で私に今日一日の出来事を聞かせて欲しいな。夜は…………」
そこまで言ってアレクサンダーは感極まったように目を潤ませた。
あぁ
こいつ
頭が弱いやつだ。
賢帝だとか軍神だとか関係ない。
もう恐怖なんてかけらもない。
私がアレクサンダーに向ける視線は最早憐憫だ。憐れみ。それか呆れ。
「皇帝陛下。」
「アレクと呼んでくれ。」
にっこりと微笑むアレクサンダーに私も笑顔で返す。可愛い……とつぶやきが聞こえるが無視だ。
「皇帝陛下、廊下の絵を全て撤去してください。」
「?!な、なにをいうのだ!!あれはナターリアコレクションの中でも特に大事にしているもので……」
「撤去してくださらないなら………実家に帰らせていただきます。」
にぃっこりと笑った私とは対照的にアレクサンダーはボタボタと大粒の涙を流している………。
でも廊下中に自分の絵が飾ってあるなんて耐えられない。
「……………リーヴィッヒ」
「はい、皇帝陛下。」
どうやら侍従らしいが、一体どこからでてきたんだろうか。
「ナターリアの絵を………………うっ……藍の間へ」
「かしこまりました。」
号泣。いい大人が滝のように涙を流している。
リーヴィッヒはさっさと部屋から出ていってしまい一気にじめっぽい空気に包まれる。
「ナターリア………」
悲しみから生還したらしいアレクサンダーが涙の残る瞳を私に向けている。こうしてみると本当に美しい人だと思う。潤んだ藍色の瞳が宝石のようだ。
「私は、君を深く愛している。大切にすると誓う。どうか、私と夫婦になってくれないだろうか。」
アレクサンダーの瞳はどこまでも優しい。
私達はとっくに夫婦だが、彼が言っているのはそう言う事ではないだろう。来てすぐに婚儀をあげたから、これは少し遅れのプロポーズだろうか。
「……私を、いつから……」
なんだか気恥ずかしくてその先は言えなかったがアレクサンダーは意味をわかってくれたらしい。
「わからない……私はずっと君を好きだったから。でも、初めて君を見たのは12年前の連国会議の時だ。天使だと思ったよ。会議はまとまらなくてその三年後戦争が始まってしまったけど、私はそれまでたびたび君を見に行っていた。見に行くことも出来なくなってから成長していく姿を絵を通して見ていた。だから城中の者が私の長い片想いを知っているし、みんな君を待っていたんだ。美しくなっていく君を絵でしか見ることができない、誰かに先を越されるかも知れない、そう思って焦って君を人質のようにここに呼んでしまって本当にすまない。でも、愛しているんだ、ナターリア。」
アレクサンダーの瞳が愛しい、と如実に伝えてくる。なんだか泣きそうだ。
いろいろ決意をして、この国に来て、恋愛結婚はおろか愛のない結婚をして、人質として障害を終えるんだろう、とかそういう考えが全て裏切られて………。
でも
なんだか無性にアレクサンダーに抱きつきたい気分になった。
嬉しかったのだ。私は望まれていたと知って。
「私、あなたとなら恋ができそう……」
そう言ってアレクサンダーの手を取るとアレクサンダーはぱぁっと破顔し、私を抱きしめた。
「ありがとう、ナターリア。」
そう言ってしばらく抱きしめられたままだったがそっと背中に手を添えるとぱっと手を離して真っ赤になってうずくまってしまった。
なんだこの純情ぶり。
「ナターリアが………本物が………」
なにやらブツブツ言っているが行き場を失ったこの両手、どうしてくれる。
「皇帝陛下、抱きしめてくれないんですか?」
私の言葉にハッと立ち上がり震える手で私を抱きしめて言った。
「ナターリア、子供は五人以上欲しい」
「調子に乗らないでください。」
無理矢理私にいうことを聞かせることもできるのにそれをしなかった優しくて少しヘタレな私の皇帝陛下。彼と唇を合わせながら、恋愛結婚をする、は叶わなかったけど、結婚してから恋愛するのもいいかもしれない、と胸を弾ませた。
その後のお話
「姫様はどうして皇帝陛下のことをなまえでよばないんですか?」
「心の中では呼んでるわよ。それにたまに呼んだ方がありがた感がますでしょう?」
「そういうものですか?」
「あ、アレクー、お茶にしましょう」
「(?!姫様、今ですか?!)」
「?!?!!ナターリアが、私を、名前で……(号泣)」
「なるほど、確かにすごい威力ですね」
「リーヴィッヒさん、あなたいつもどこからでてくるんですか?」
みたいな。誰が話しているかはだいたい察してください。
わかりにくくてすいません。
誤字修正しました。
報告ありがとうございます。
誤字脱字気をつけます(*´つω・。)