Silent Birthday
────その日、ひとつの“命”が生まれた
父もなく、母もいない
姓もなく、名すらない
誰も“その子”の誕生を知らない
雪の降る静かな夜に
音もなく“その子”は生まれた
たったひとりで生を受けた
祝福の日
かつて神の子の生まれた日
同じ夜半に生を得る
命を分かつ父もなく
腹を痛める母もなく
取り上げる者もない
受け継がれる姓もなく
授けられる名すらなく
ただひとり、とある神話の始まりに
福音とともに、この世に生命を授かった
────かつて、ひとつの“命”が生まれた
吐く息は白く
音もなく舞い降りる雪を見上げ
言葉もなく、静かに佇む
夜半
祝うものもない Birthday