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不倫は

「はいはい。助手席乗ってくださいね」

 2-Cの駐車場。黒いSUV車の傍の助手席のドアを開け、忠犬よろしく奏を待つ朗太に何度目かの溜息をこぼした。

「後部座席がいいんだけど」

「えー、ヤですよ。味気ない。はい。乗って乗って」

 急かれるまま仕方なく助手席へ乗り込むと、シートベルトをするや否やカバンを窓に押し当て、それに身を隠すようにシートに身を沈ませた。

 運転席に乗り込んだ朗太がそれを見て肩をすくめる。

「犯罪者の送還じゃないんだから」

 滑らかに走り出す車。

「何笑ってんのよ」

 終始笑顔の朗太がより一層相好を崩しているのを見て、つい口に出してしまう。

「えー、いやあ、なんつか、清白さんって、なにげに漢らしいよね。実は薄々そうじゃないかなーって、そんな気はしてたんだけど、オレが話しかけても全然相手してくんないからさぁ」

 ルームミラー越しでもわかる、人を虜にする朗太のオーラ。

 さすがアイドル社員。

 そんなことを思っていたら、ミラーの中で視線が合って全開の微笑みを向けられる。

 奏は、慌ててその目を逸した。

「眩しい奴って苦手よ……」

 奏の呟きに、あからさまに心外そうな声で応える朗太。

「え!?オレ禿げてないよ!」

「……はぁ……そうね」

 車の中は適温で、揺れもあって急に体が睡眠を欲している事実を呼び覚ます。

「清白さんてさ、あんま誰とも話さないけど、相良さわらさんと、仲いいでしょう?」

 相良は奏の中学の同級生だ。

 社内でそれを公表しているわけではないが、馴染みの雰囲気は自ずと出てしまうのだろう。

「ひょっとしたら二人、付き合ってんのかなとか思ってて、まえ相良さんに聞いたら、笑ってごまかされたから、ああ、やっぱりそうかーとか」

 ……あいつ相良めっ。

 人をスケープゴートにしたな?

 今相良は自社の副社長と不倫関係にあった。

 副社長と相良はもともと大学の先輩と後輩の関係で、その頃から付き合ってたから、昨年籍を入れた旦那よりもよっぽど長い。

 副社長の結婚は完全な政略婚で、旦那は関西に離れて住んでいる。

 だからって大っぴらに出来る関係ではなく、不倫という道を選んだ相良には奏も少し驚いたほどだ。

 だって、あいつに不倫なんて、似合わない……。

「相良さん、すげえ人だし。相良さんならしゃあないかなとか思ったけど、でも、オレ拾ってホテル連れてってくれたんだから、それもないかなーとか。となると、誰にも遠慮いらないしーとか?……ん?あれ?清白さん?」

 奏は驚くほど簡単に、眠りの世界に引き込まれた。 

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