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モテ期の再来は

 まだ休憩時間を残してオフィスに戻れば、耳に飛び込んでくる朗太の噂。

「どうも彼女できたらしいよ」

「なんか一緒に釣り行ったんだって」

「あー、そんで日焼けしてたのか」

 その言葉に、奏は慌てて化粧室へ飛び込んだ。

 朝はUVカット機能のある乳液を使っているから朗太よりマシな日焼けではあるものの、改めて鏡に目をむければ、あきらかに、それも夕べよりも赤くなっている。

 ま……まずい。

 朝から、眼鏡が影となって頬の日焼けを隠してくれていたのだろう。

 そして何より地味な自分と朗太をダイレクトに繋げて考えるとも思えないが、やはり打てる手は打っておかなければならない。

 更衣室へ向かい、入社しばらくしてからはすっかり使用しなくなったファンデーションを取り出すと、放置しすぎてやや油の匂いが勝ち気味となったそれを肌に乗せて日焼けを隠した。

 顔だけに塗ると、それはそれで浮いてしまう。

 仕方なく、これまた放置していた口紅を少量つけて、唇の表面に極力薄く伸ばした。

 なんとか色味を抑えることに成功し、なるべく俯き加減でオフィスに戻る。

 そう。それがいけなかった。

 曲がり角。 

 人の影に気づけず、出会い頭、向こうから来た相手にぶつかってしまった。

 勢い、その人物に抱きとられることとなる。

「大丈夫!?わー清白さん細っこー」

「あのっ、ごめんなさい。すみませんっ」

 慌てて体を離した視線の先、自分を抱き取った長身の人物の横に、目を丸くしてこちらを見ている朗太を目があい、二重に焦った。

 一礼し、そそくさと立ち去ろうとする奏の腕を、長身の人物が捉える。

「一昨日の夜、二次会来てくれなかったよね?」

 そこにきて、ようやく自分の手を抱きとめた相手が、今月から営業部に配属となった各務だと気づいた。

 二次会に誘われたのだといえば、まあそうだったかと改めてその時の会話を思い返す。

 確かうちのオフィスに来た際に例の飲み会に誘われていたが、その日は顧客と会うから二次会から参加すると言っていた。

 たまたま各務の居た場所に近かった奏に、二次会行くんでしょう?と聞いてきたことは覚えている。

 それに対して、まあ、とか、ええ、とか適当に返したような記憶も。

「なのに居ないからさあ、もうガッカリ。ね、今度メシ、いかない?」

「……何かの会ですか?」

「ちゃうちゃう。オレと二人。個人的に」

「おい、各務っ!!」

 目を見開いて各務を制する朗太を思わず見てしまい、慌ててまた視線を下げた。

 おーい……。

 モテ期の再来なのか、これは?

 まあ、よく話しかけられるなとは思っていたが、元々誰にでも人懐っこいところがある各務なので、浮いている女子社員に情けでもかけてくれているのかなんて、漠然と思ってはいたけれど。

「なんだよ、友部。人の恋路の邪魔する奴の末路知ってるか?普通に生きてたら有り得ない死に体だぞ」

 まあ、確かに馬に蹴られるのは、この現代日本においてかなりレアな確率だろう。

 朗太はと言えば、食ってかかるような目を各務に向け、

「馬に蹴られんのはおま……っ」

 そう言いかけて、奏と目があい、慌てて口をつぐんだ。

 なんなんだ。

 なんなんだ、これは。 

 胃が軋む。

 何より、目の前で「恋路」と言い切った各務。

 とりあえず周囲に人目はないが、このまま各務から話を大きくされ、広がるなんて、有り得ない。

「あの……困ります。そういう冗談、対処できないんで」

 精一杯の大人しさを装う。

「冗談と違うんだけど、マジで。彼氏いないって言ってたからさ、こりゃ神のタイミングだと思って二次会でコクろうと思ってたのに、帰ってんだもんなぁ」

 下げた目線の先。

 朗太が拳をイライラと握ったり開いたり。

 むすんでひらいてかっ。

「困ります。ごめんなさい。とにかく、ここでこんな話もなんなんで……失礼します」

 奏は困った表情をして、それでも朗太にだけは、ちゃんと釘を刺しとけよオーラを向けて急ぎ足でオフィスへ戻った。

 くそー。

 各務も、朗太ほどじゃないにしても男前だぁ。女子が目つけてたよ。

 ほんと、マジない。

 最悪だ。

 頼むぞ、朗太!!

 わけのわからないこと触れ回らすなっ!!

 

 

 

 

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