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平凡な私と可愛い彼、そして時々ファンタジー?  作者: 成露 草
第一章 兄弟と宿題、そして時々イカサマ
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第二回保護者達の会談 パート2

 待っていましたとばかりに口を開こうとする梗也に静かにとジェスチャーをする。

「はいはい。ブラコン発言は昨日だけでもうお腹一杯。一先ず私の話を聞いてね」

 にこにこ、と言うよりはニヤニヤに近い笑いを浮かべながら言うと、梗也は不満そうな表示を浮かべながらも「わかった」と言った。

「はっきり言って、私は彼方君に特別何か思っていることはないよ。可愛いとは思っているけど、それも梗也君の弟って前提があってのことだし」

 意味もなく天井の柄を見ながら淡々と語る。梗也は訝しげな表情を浮かべながら向かいのソファーに移動した。

「では、姪を紹介したのも俺のためだと言いたいのか?」

 眉間に皺を寄せただろうことが不機嫌な声から察せられる。低く威圧感がある声だが、怖さを感じることはなかった。

「まさか。そんなわけないよ。…昨日の続きだけど、紫信は彼方君と本当に相性がいいと思う。だからきっと、双方に良い影響を与えられると思うんだよね」

 私は意識してにっこりと笑い、梗也を見た。彼は不機嫌さをなくし、次には納得したと一目で解る表情をする。

「なるほど。そういう事なら違和感はないな」

「違和感? 何に対して?」

 最早問題は何もないと言う空気が漂う部屋に、梗也の呟きが落とされた。不可解なそれに私は瞬きを繰り返す。

 梗也が説明を求めないなら、もう話し合うことなど何もない。後は決まった通りの仕事をこなすだけだ。紫信と彼方の事は2人で勝手に何とかするだろう。助けを求められたら当然助けるが、そんなことは早々無いはずだ。つまり、ここから先の会話はただの雑談ということになる。

 そのことは梗也も勿論分かっている。だからこそ、表情や声音が随分砕けたものになったのだろう。

「念の為に言っておくが、これは悪口ではないからな? 本当のことをそのまま言うだけだ」

「何、私が怒りそうなことでも言うつもり?」

 言葉は続く会話を重そうに思わせるが、雰囲気は実にのんびりとしている。

 だが、梗也のブラコンの深刻さを思うと微妙な気持ちになるのは普通の事だろう。弟の話題が終わった途端に雰囲気が変わり過ぎだ。まぁ、私が何か言える立場ではないので何も言わないけど。

「緋乃は学校では疑いようもなく慕われている。『代表監査副会長』と言う肩書きもあるだろうが、その人柄だろうな」

 代表監査は、私立華宮学園にある特別な役職だ。正式名称は『生徒代表役員監査委員会』となっている。

 マンモス校である華宮では、役員の数も他の学校に比べると非常に多い。学部と委員会ごとに委員長と副委員長。それを束ねる生徒会役員達。部活と同窓会、サークルごとに部長と副部長。それを束ねる部活動組合役員達。

 これらの生徒代表達の活動を補助し、意見の一致を手伝うのが生徒代表役員監査委員会の仕事だ。時には生徒達からの個人的な意見を生徒代表達に伝えることも稀にだがある。まぁ、名称は堅そうに聞こえるが、砕けて言えば只の中間管理職だ。

 視線だけで続きを促す。

「だが、緋乃は常に第三者なんだ。まぁ、緋乃だけではなく代表監査役員全員に言えることだが。だからこそ余裕がある。その余裕さが学生コドモには安心感に思えるんだろうな。だから好かれる」

 私は「ふふっ」と小さく笑った。馬鹿にした訳ではない。以外でもないが、梗也の言葉が中々に的を射ていた為だ。勿論、必死さが感じられないと言う部分に。

 梗也は気にすることなく話を続ける。

「だがな、だからこそ緋乃が他人の為に何かをするというのが予想外で、違和感を覚えたんだ。緋乃は優しいが、誰にでも無邪気に優しさをばら撒く様な性格ではないからな。……だが、緋乃が家族愛に厚いのは知っている。その行動が自分の姪の利益になるなら納得するのは難しくはない」

 最後に「ふぅ」と満足げな溜息を吐いた梗也は、私の表情を伺う。おそらく、私の表情の中に不機嫌さが無いか探っているのだろう。私は右手を振りながら「本当のことだしね」と返した。

 あれだけ好き勝手言ったくせに気にしていたらしい。意外と可愛い所もあるな、と笑った。その笑いで本当に怒っていないと分かったのだろう。梗也は眉間に皺を寄せながらも少し顔を赤らめた。

 部屋に時計が昼を告げる音が響く。小さい鈴の音はリンリンという涼やかなものだ。

「もうすぐお昼だね」

 私が時計を見ながら言うと、梗也は「そうだな。今日もここでいいか」と言い、部屋にある電話に向かった。短縮設定をしてあるのだろう。1つボタンを押しただけで電話はつながったようだ。一言「昼食を持ってきてくれ」と言うと電話を切り、ソファーに再び腰かけた。

 問題が解決したからか、本心を語ったからか、食事中の会話は妙に弾んだ。とは言え、その殆どが梗也のブラコンによるものだったけどね。……知りたくなかったけど、あれでも今までは遠慮していたのか。梗也の私への認識が聞けたのは面白かったけど、これはしくじったかなぁ。

 深く溜息を吐いた私を責められる人はいないと思う。

第二回保護者達の会談は、これで終了です。

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