プロローグ
処女作ですので生温かい目でよろしくお願いします(*^-^*)
黒髪黒目、不細工ではないと思うけれど、美人でもない顔立ち。今時の17歳の高校生からすると化粧っけのない私は地味な部類に入るが、気にしてはいない。身長は162センチで体重は多分平均値。
学校の成績は、3と4で埋まっている平均的なもの。遅刻も無断欠席もしないので一応優等生といえるかもしれない。人間関係は広く、浅い。クラスの全員と気軽に会話はできるが、休日に遊びに行くことはない。そんな感じ。それが嫌だとは思っていない。むしろ満足している。
私、名取紫信は簡単に説明するとそんな平凡な少女だ。
だがそんな私の愛すべき平凡な日常は、ある出来事で崩れ去ってしまった。
それは、私と同い年の叔母さんが1か月前に持ちかけてきたアルバイトを引き受けてしまったことから始まっていたのだろう。
私の通っている学校はかなりのマンモス校である。
学校の名前は『私立華宮学園』という。この学校は、小等部から大学院までがエスカレーター制の進学校だ。勉学に励めるようにと、中等部からは全寮制になっている。校舎も中等部からは、高層ビルの並ぶ都心から山ばかりの田舎へと移る。
小等部までは、公立の学校と同じ(小等部に途中編入してきた友人に聞いた)だが、中等部からは学科毎に分かれて勉強する。
人数が多い学科は、普通科、体育科、国際科、家裁科、音楽科、美術科、商業科、帝王学科などだ。他にも学科はあるし、さらにこの下に専攻があるが全部あげるとかなりの数になるのでやめておく。
因みに私は普通科文学専攻、叔母さんは武芸科護衛学専攻だ。
普通科は、一番多く生徒がいる学科である。特に高等部からは、学科変更をして普通科に移る生徒がかなりいるので全校の3割を占めている。
それに対して、叔母さんの武芸科はかなりの少人数で1クラスしかない。その名の通り武術が専門の学科なのだが、同じようなジャンルに思われがちな体育科とはかなりの差がある。それは、オールマイティーなところだ。運動能力だけではなく、学力も凄いのである。武芸科が、この学校の偏差値を上げていると言っても間違いはない。他にも色々とあるらしいが私は詳しくは知らない。
こんな学校なので当然ながら生徒数は多い。学校の校舎は6階建てで、26棟ある。運動場も、内外合わせて10以上はありそうだ。保健室、図書館、食堂などは各棟に3つずつある数の多さだ。学生寮は年齢ではなく、学部ごとに分かれているのだが、1つの学部につき平均で5つある。その寮も5階建ての普通のマンションのようなものだ。寮にも、それぞれ食堂、コンビニ、医務室が設置されている。
これだけの施設があると仕事も当然ながら数多くある。こられの仕事を全て外から人を雇うとかなりの金額になってしまう。何よりも費用がかかるのは雇った人達の住む場所の確保だ。何しろ田舎にあるので、周りにはこの学校以外の建物はほぼない。農家がちらほらあるだけだ。
そこで、学校では学生をアルバイトとして雇っているのである。これは『華アル』と言われている。
叔母さんが持ってきたアルバイトも、『華アル』のものだ。『華』は、私たちの通っている学校の名前から、『アル』はアルバイトだ。
『華アル』には、大きく分けて2つの種類がある。学校雇いのものと、個人雇いのものだ。
学校の施設の維持を手伝うのが、学校雇いのアルバイトだ。
もちろん、主要な部分は大人がやるが、下っ端の仕事は生徒にやらせるのだ。
たとえば、食堂の場合。メニューを考えるのは家裁科栄養管理専攻の生徒、厨房で働くのは家裁科料理専攻の生徒、ウエイターをするのは普通科の生徒、という感じだ。
このことを知った時私は、ウエイターは兎も角、他の仕事は大人が見ていたとしても、生徒で大丈夫なのかと思ったが、それは杞憂に終わった。
それらの仕事は高等部以上の、しかも成績上位者しか出来ない高給なものであった。事実、食事はその辺にあるチェーン店よりも遥かに美味しい。
将来、高級飲食店のシェフを目指している生徒達が作っているのだから当然と言えば当然だが。
で、先にも言ったが、私は平凡な少女だ。こんな高級な仕事ができるような学科ではなく、普通科の一生徒だ。ここで問題が発生する。私の様な一生徒がこの学校には3割もいるのだ。人数はいるが、出来る仕事はかなり限られている。寮の掃除やコンビニのアルバイトもあるがはっきり言って供給が足りない。
そこで出てくるのが、個人雇いのアルバイトである。
これは教師や生徒が学校を通して、生徒を雇うものだ。
学校雇いの場合は、働く場所は学校と寮に限られるが、個人雇いは場所に制限がない。外に働きに出ることも多々ある。
教師や生徒を通して、外部の人間が生徒を雇うこともあるぐらいだ。その場合、大抵は雇い主の親族や友人だが。
事によっては、これアルバイトの域を超えてない? と言いたくなるものもある。そういう仕事は給料もかなり良いが、特殊技能が必要だったりするので人気があるかと言うとそういうわけでもない。
出来ない生徒がほとんどなので、それ以前の問題なのだ。
私が遣るアルバイトは、個人雇いが殆どなのだが、今までやってきたアルバイトは良くて時給800円だった。しかも1日で終わってしまうものがほとんどである。はっきり言ってあまり稼ぎはない。
そんな私に叔母さんが持ちかけてきたアルバイトは時給1000円。
内容も大して難しいものではない。子供の遊び相手だ。
こんな美味しいアルバイトがあれば、乗らない学生はいないはずである。
決して私の考えが足りなかったわけではない!






