表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
てんせいファミリー  作者: 佐久間 枢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

5・ラマイの団員と、凍てつく刃!?

ガルド、カム、バーの3人がキャンプ地へ戻る。

日は暮れ、キャンプの焚き火や魔法の灯りがキャンプ地を照らしている。

キャンプ地の周りは建物も街灯もない。

深い、深い闇の世界だ。湖だけは月明かりを受け時折キラキラと漣を反射している。

「見て驚け!さすが狩りマスターと称えてくれてもいい!」

「今日はフォレストブルがいたんだ!」

意気揚々と大きな獲物をドン!と見せるカムとバー。

一同「おぉおお〜!!」

「ご馳走じゃない!」

「いいね!」

「酒が進むな」

獲物を見た団員は口々に言う。

その声が恒一達の元まで聞こえる。

「ガルドさんたち帰ったみたいだな、行こう」

子供達に声をかける。

「私、ここにいる。」

「凛、みんなに色々聞きたいし、お腹も空くだろ?行って手伝おう。気分も変わるかもしれない」

父に言われ渋々テント中央の人だかりに向かう。

美咲は調理担当らしいミラと親しげに話しながら、クルアルガの食について色々聞いているようだ。

トトと呼ばれた女性は馬たちの食事を作っていたようだ。


5人程の人の輪の中央に大きな獲物が鎮座していた。

(歓声が上がっていたが、あれがフォレストブル?牛?だよな……?

緑っぽくみえるし、角が4本あるぞ……)

牛はミラによって手早く捌かれ、調理されていく。

辺りを動いている人たちを見る。

(全部で10人位いるみたいだ)

恒一は観察、凛、悠人は何をしたら良いか分からず、

輪の外でキョロキョロ。

「ぁ!コーイチさん!リンさん!ハルトくん!」

呼ばれた方向を見ると、にこやかにウングルが手招きしていた。

「ミサキさんに手伝ってもらえて、すごく早く準備できましたよ〜ありがたいありがたい!

さぁ、今みんな揃ってるかな?お肉が美味しく焼けるまでみんなの自己紹介をしちゃいましょう!」

なんだかんだと出来ていなかった団員達と春日家の邂逅イベントである。


ガヤガヤとしていた団員たちはスッと静かになり、春日家へ視線が集まる。

(プレゼン前より緊張するかも…………)

調理をしていた美咲はサッと恒一の横に滑り込み、

夫の左腕にそっと自分の手を置き大丈夫よと言っているように微笑んだ。


「改めまして、みなさん、私は、恒一と申します。

えっとまずはお礼を……あの森で拾っていただき、ありがとうございます。

こちらは妻の美咲です。」

妻を一歩前へ促す。

「美咲です、みなさん宜しくお願いします。

そしてありがとうございます。お料理しかお手伝いすることができないですが

なにかお役に立てるよう頑張りますね」

美咲は一歩さがり娘を促す。

「えっと……凜です。宜しくお願いします。」

ペコっと頭を下げ、母の陰に隠れるように戻る凜。

「僕は悠人!宜しくお願いします!僕いろんなこと知りたいです!

なので、色々教えてください!」

促される前にぴょんと一歩前に出て元気に悠人は挨拶をした。

「はっはっは! 実に素晴らしいご家族だ!」

ウングルが豪快に笑いながら手をたたく。

団員達も春日家の挨拶が終ったと判断し、拍手をする。

(歓迎されている?)

恒一はほっと胸をなでおろした。

「さて、続いては……私から!」

プルンと前に飛び出す団長。

「オヤジはもう挨拶終わってんだろ!!」

カムにつっこまれ、シュンとするウングル。

「さっき、狩りの前にちょっと挨拶したけどよ、俺はカム。んでこっちは双子の弟バー

俺たちはネコ科の獣人だ。尻尾がキュートだろ?サーカスでは曲芸を披露するんだ」

その場で二人同時にバク宙をし、ポーズを決める。

「おぉ!!」

春日家一同拍手で答える

「次は私ね!私はミラよ。御覧の通り、火を扱うのがとっても上手なの。

私は魔人族だから、魔力は人族よりずっと多いのよ♪」

ミラはかぶっていた帽子をサッととり、魔人族特有の角を披露する。

頭部前方に3㎝程だろうか、三角錐の突起があった。

「このサーカスは例外だけど、魔人族はこの辺りにはあまり居ないから、普段はこうして

角を隠すようにしているのよ」

帽子をかぶり直し、調理に戻るミラ。

(ま、魔人??いやでも、獣人もいるし、いてもおかしくはないのか……)

にこやかに聞いている恒一、内心は焦りまくりである。

「次は私が行こうかな?」

ウングルの背後からしなやかに現れた女性に、恒一は思わず目のやり場を失った。

羽織ったマントの前面が開かれ、真夏の海でも見かけないほどにきわどい、

ビキニタイプの薄着を披露した。

豊かな曲線を描く肢体。

焚き火の明かりに照らされた陰影が、彼女の野性的な美しさを残酷なまでに強調している。

「私はトト。人族よ。魔獣や動物と話ができるの♪」

恒一は慌てて視線を逸らしたが、横に立つ美咲と凜の視線が、

トトの抜群のプロポーションと自分たちを交互に比較していることに気づき、

さらに冷や汗をかいた。

「人といるより獣と一緒にいる時間の方が長いかも?

魔獣の事聞きたくなったらいつでも歓迎よ♪」

パチンとウィンクを投げるトト。


「おいおいトト、いつも服を着なさいって言ってるだろ?」

白いケープを羽織った男性が前に出る

「だって邪魔なんだもん」といいながらそそくさと馬たちの方へ駆けていくトト。

「失礼、いつもああなんですよ……私はメムブット、もちろん魔人です。」

帽子を取り角を披露する。

「私は薬師でしてね、旅の間のみんなの健康管理の係みたいなもんです。

なにか体調にお困りの事がありましたら、いつでも相談してくださいね、

ちなみに、毒薬も作れますよ」

ニヤっと不敵な笑みを浮かべるメムブット。

「よ……よろしくおねがいします……」

「まったくもって二人はコーイチさん達を驚かせるもんじゃありませんよ・・

よっこいしょっ……っと」

立ち上がったのは初老の男性。

「はじめまして、わしはジェノといいます。しがない音楽家ですよ。

ほら、スァラ……」

ジェノの陰に隠れた女の子がちょこっと顔を覗かせる。

「……………………」

顔を赤くしてサッと隠れてしまった。

「この子はスァラ、精霊の歌姫なんですよ、人見知りで初めて会う人にはだいたいこんな感じですな、ハハ……そのうち慣れるでしょう。歌ってるときは別人なんですがねぇ」

隠れつつもスァラは凜を見つめていた。

「皆さん勝手にさらさらと進めて……オホンッ

私はパドゥットと申します。」

恭しく一礼する。

スマートな身のこなし、スラリとした背の高い男性で、カチッとした黒いスーツのような服を纏っていた。

「私も魔人族なんですよ、角はここに」

クネクネとした長めの髪に隠された突起がこめかみから後頭部に向かって伸びていた。

「髪に隠れてくれるので帽子は不要なのですよ。サーカスでの役割は道化ってところですかね。以後お見知り置きを」

またも恭しく一礼をし、最後の占い師、リハットに場所を譲る。

リハットはその場を動かず一言。

「リハット、占い師よ」

続きがあるかと黙ったままで待つが、リハットはそれだけ言うと背を向けて去った。

挨拶を返すタイミングがなく気まずい空気になる。

「えーっとぉ……そろそろ焼けたかな?」

ウングルが料理を気にするふりをして、気まずくなった空気を壊す。

「焼けたわね!挨拶も一通り終わったし、

スープも良い頃合い!食べましょう!」

と調理してくれていたミラの号令。

各々が皿を持ち食べたいものを好きに盛る

「ハルトこっちこいよ!」

カムとバーに誘われ、2人の元で食事をする悠人。

大人組のテーブルに着く父、母

なんとなくその近くに座る凛。

テーブルにはナンのようなもの、外見とは裏腹にとても美味しそうに焼かれた肉、

煮込まれた野菜のスープ等が並ぶ

朝から何も食べてないことを思い出した凜のお腹はぐぅ~と鳴き声を上げる。

けど、大人たちの会話はあまり面白くない。

「食べて食べて!」

「……いただきます」

色々聞かれるのも面白くない。

でも料理はすごくおいしい。けどそれも面白くない。

凛が心配していることをなかなか確認しない父にもイライラ。

気遣ってくる母にもなんだかイライラ。

チラチラこちらを見てくる精霊も気になる。

今日は冷えますな。春なのにおかしいな。なんて会話が聞こえる。

(寒くなんてないんですけど……)

心の中で思う凜。

凛は自分がイラついてることにもイライラしている。


テントの中は広く、15人いても混雑してる雰囲気は無い。

魔導馬車の機能で温度を快適に保つというものがあるが

ウングルの話し方では夏と冬に活躍するようなことを言っていた。


お酒が入っているためか、父も母も団員たちと

和気あいあいと談笑している。


一通り食べ終えた凜は席を立ち、みんなから離れる。

父や母はおしゃべりに夢中で自分の事は気にしていないようだ。

1人テントの端へ行き、湖畔をみつめる。

湖は昼間の美しい色とは真逆。

時折月明りを反射して煌くが、漆黒の闇を纏っていた。


なんで父も母も帰れるか聞かないのか。

「一番気になるのそこでしょ・・信じられない。」

ひとり呟く。

凜は安全な日本の自分の部屋を思い浮かべる。

ふかふかのベッド、綺麗に並べた推しグッズの棚、

壁にはクリーニングから戻ったばかりの制服がかけられ

机の横のコルクボードにはお気に入りの写真や雑誌の切り抜き

かわいいシール等が張り付けてある。

(帰りたい………………)

「凜?」

父の声に驚く。

「どうした?こんなところに一人で……」

「帰れそうなの?」

凜はふぅっと息を吐き、父の疑問を無視して聞く。

「いや、帰れるかっていうか、悠人がこういう場合だいたい帰れな……」

「はるとはるとはると!!パパもママも悠人の言うことは聞くのね!!

悠人が言ったからなに?!悠人が言うことが絶対なわけ!?

そうよね、悠人はこういうことに詳しいし?!

私の心配より、悠人がいうことの方が大事なのよね!?もういい!」

父の言葉を遮り、怒りを爆発させる凜。

そのままテントの外へ出ようとする。

慌てて凜の腕をつかみ止める父。

テントから一歩出ると危険なのだ。

「触らないでよ!!」

凜の叫びと同時に、大気が凍りつくような鋭い音が響いた。

彼女の周囲に、月光を反射して煌めく無数の氷の刃が、凶器のような鋭さで出現する。

その一片が、制止しようとした恒一の肩を無情に切り裂いた。

「――ッ!!!」

鮮血が夜の芝生に散り、恒一が膝をつく。

怒りに燃えていた凜の瞳が、恐怖で瞬時に見開かれた。

感情の昂ぶりと共に溢れ出したその力は、

今の彼女にはあまりに鋭く、そして、あまりに冷たすぎた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ