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転生ファミリー  作者: 佐久間 枢


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2/5

2・異世界人と初遭遇!?

読むことは好きですが、書くのは大変なのだと知りました。

チリン……チリン……

馬車を引く馬達に付けられた装飾から小気味よい鈴の音が響く。

カラカラカラ……

3台連なって進む馬車。正確には、二頭の魔獣が引く、三連結の巨大な魔導車両だ。

連結部がカシャカシャと音を立て、車輪はキャタピラのように連なっており

生き物のようにしなって森の凹凸をいなしていく。

御者席の手元には、複雑な魔導回路が刻まれたレバーがいくつも並んでおり、

ウングルはそれを器用に操っている。


サーカス団「ラマイ」一行は、森を南に向かっていた。

森には魔物や魔獣などもいる為決して安全ではないが、

日程に遅れが出てしまったので、仕方なく森を抜けることにしたのだ。

「うん、この調子なら問題ないだろう」

ひとり呟くのは御者席のウングル。サーカス団ラマイの団長である。

慣れた手つきでレバーを操作し、もう片方の手で魔獣の手綱を制御している。

とても人の良さそうな顔をした男で、

立派なハンドルバー(カイゼル髭)を鼻の下に蓄え、派手なベストを身につけている。

ベストが小さいのかウングルの成長しつづけるお腹の為なのか、ボタンは閉められていない。

馬車の揺れとともにウングルのわがままボディも揺れていた。

馬車の横には団の護衛ガルドが周りを警戒しながら歩いていた。


柔らかい風が木々の間をぬけ一行の元を駆け抜けていく。


スン……

森の匂いが変わった気がした。

魔物の気配は無い。


スン……

もう一度匂いを嗅ぐ。

チロッと舌を出し、森の違和感を探る。

爬虫類型の獣人族である彼の舌は細く、先端が二股になっている。

特別な機関をもっており、違和感を感じた際は舌を出し確認するのだ。


今までかいだことの無い偽物の花の様な異質な匂い。

鉱物の匂いも混ざっている。

人間の匂いも確かにする。得体のしれない者がいる。


ドンッ!!

ガルドは前方へ一気に飛び出し匂いの元まで走る。

「おぉ!?ガルド??」

驚くウングルの腹部はガルドの風圧により更に揺れることとなる。



一際大きな木を迂回したところで匂いの元を発見する。

(大人2人、子供2人……?)


「だからね、パパ絶対そうだって!あんなでっかい木見たこと……わぁああああ!!」

大木へ視線を向けた子供と目が合う。

(武器の類は持っていないな、奇妙な匂いは確かにあの4人からする……)

ガルドは人間たちの手前で止まる。

野盗の類ではないと判断しているが、念の為背中の大剣に手をかけたまま。

「お前たち、何者だ?」

この者たちは、なぜ丸腰でこんな場所にいるのか。

パパと呼ばれていた男は、子供達と女の前に立ち、穴が開くほどガルドを凝視している。


「そ、そういうあなたはどどどなたですか!?!?」

上擦った声、汗の匂い。男は相当慌てているようだ。

目には恐怖が浮かんでいるが、それでも必死に女、子供を庇うように立っていた。

「………………」

チリリリン……チリリリン

ちょっと慌てた様子のウングルは魔獣の足を早め追いかけてきていた。

「お~い! ガルド~!」

恰幅の良い男性が操る馬車が姿を見せた。

「いたいた、ふぅ〜追いついたぁ、ガルド、なにかあったのかぃ?」

ウングルはガルドを見る。

ガルドの視線の先を見る。

……え? と、一度視線を逸らしてから、再び驚愕の表情で一家を凝視する。

いわゆる二度見というやつだ。


「こんにちは!!」

悠人のご挨拶が響く。

「うわぁ!!びっくり!!どうしなさった?こんな森の中で!」

警戒心ゼロの男ウングル。

馬車の荷台からは団員たちが何事かと顔を出していた。


団長の驚きも揺れも無視したガルドは地響きのような声で最後尾の馬車に呼びかけた。

「おい!!リハット!!」


「ぅわっ!!耳がッッ!」

団長のことは再度無視するガルド。


名前を呼ばれ馬車から降りてきたのは、妖艶という言葉がぴったりの女性だった

浅黒い肌、漆黒の髪、紫の瞳。

彼女の周りだけ時間の流れが止まっているように感じる。


リハットは一家を一瞥し

「危険はない」

それだけ口にするとサッと馬車へ戻っていってしまった。


ガルドにはそれだけで十分であったため、警戒を解き

一家に背中を向け馬車へ向かう。

あとのことは任せた。と言わんばかりだ


ガルドが下がると改めてウングルは春日家に声をかける。

「耳が壊れるかと思ったわ……。

ところであんたたち、魔物除けも付けずに、こんな森の中でどうしたんだい?」

「えっと……」

緊張状態だった恒一は喉がカラカラでなんて答えて良いのか、

わからず次の句がつなげずにいた。

恒一の後ろからぴょこっと飛び出したのは息子悠人。

口ごもっている恒一をよそにウングルに一歩近づき

「あの!僕たち家族で旅をしてたと思うんです!でもぉ……

旅に出てからの記憶がなくて……ここもどこかわからないんです」

「記憶がない??ワスレ菜でも食ってしまったのか?」

「ワスレ菜?」

「なんと、ワスレ菜のこともわからなくなっているのか、名前はわかるかい?

おっといけない、名前を聞くときは自分から名乗るもんだな。

私はウングルというもんだ。サーカスの団長をしているんだよ。

後ろはサーカス団の馬車さ!」

「僕は悠人といいます!それで、後ろのあたふたしてるのはパパの恒一で

ママの美咲とおねぇちゃんの凜!」

「ぼっちゃんしっかりしてますねぇ」

「ありがとうございます!」

「あの、すみません、この子の父の、かすウッ」

恒一が言いかけたところで悠人に足を踏まれ、しゃがみ込む。

「アーゴメンパパ!フンジャッター」

ピンときた悠人は、わざとらしく謝るり父に顔を近づけ小声囁く。

『パパ苗字はたぶん言わないほうがイイよ!』

父は息子と目を合わせ、頷く。

ズキズキ痛む足の甲については無視することした。

改めてウングルと向き合い

「父の恒一と申します。ウングルさん初めまして」

「コーイチさん、初めまして、ですな!いやはや、ワスレ菜を食っちまうなんて

災難ですなぁ、ハハハ。それじゃぁ目的地もなんもかんもわからんのでしょう?」

「そうなんですよ、お恥ずかしい。」

「んー……どうでしょう?うちの馬車に乗っていきませんか?我々は南のポルト・オーレに向かってましてね。

道中思い出すこともあるかもしれませんし、こんなところじゃ困ることも多いでしょうし」

「よ、よろしいんですか!?」


思わぬ申し出により、一家はサーカス団の馬車に乗り込むことに。

着の身着のまま森を彷徨わなくてよくなったのは不幸中の幸いであった。


「みんなぁ今拾ったご家族を1号車に乗せますからね~、

ワスレ菜食べちゃったみたいだから、困らせないようにね~」

ウングルの一言で窓から出ていた顔たちからまばらに返事が聞こえ

1号車に乗っていたと思われる初老の男性と少女は後ろの車両へ移動した。


春日一家を乗車させ、得意げなその馬車は一路南へと進むのだった。


最後尾の馬車。揺れる車内で、リハットは静かにカードをめくっていた。

「星が重ならないわ……」

その呟きは誰の耳にも届くことなく森の中へと消えていった。

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