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転生ファミリー  作者: 佐久間 枢


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1/5

1・家族旅行で事故ったら森にいたんだが!?

初めての投稿です。拙いですが宜しくお願いします。

薄曇りの空の下、車は山道をゆっくりと進んでいた。

ハンドルを握るのは春日恒一、三十八歳。

大手企業の企画部長という肩書きを持つが、今日はただの父親だ。

後部座席から声が飛ぶ。

「ねぇー?まだ着かないの?」

長女、凜。

スマートフォンのメッセージを確認しながら、不満そうに言う。

「もう少しだと思うんだけど」


-----------LAIME

RIN <まじ山!山!マウンテン!!!もうすぐ電波届かなくなりそ;;>

空 <3日間、頑張れ!!応援してるよ♪>

ちぃ <そんなこと思ってもないくせにww>

RIN <あぁぁ旅行なんてだるすぎるぅううう;;>

空 <たまには親孝行しなさいって!た・ま・に・は!>

RIN <もぅっ!いつもしてますよっ!!>

ちぃ <うそばっかww>

空 <あれ、明日凜の推しの配信なかったっけ?>

RIN <ソシオ君の新衣装発表会!!!リアタイマストなのに!!>

ちぃ <諦めたまえwwアーカイブあるさw>

RIN <それなぁ・・・;;>

----------------------


助手席から振り返ったのは母、美咲。

どこかのんびりした声だった。

「ほら凜、景色きれいじゃない」

「山ばっかじゃん」

その隣では、弟の悠人がタブレットを抱えていた。

画面にはモンスター図鑑のようなゲームが映っている。

「このモンスター、弱点は火属性だな」

誰に聞かせるでもなく呟く。

凜が呆れた顔をする。

「誰と会話してんの」

「別に」

恒一は思わず笑った。

いつもの家族の空気。

なんでもない日常。

――そのはずだった。


カーブに差し掛かろうかというとき

対向車線から大型トラックが現れた。

大きく蛇行している。

「……え?」

一瞬。

本当に一瞬だった。

恒一はハンドルを切った。

タイヤが悲鳴をあげる。

衝撃。

世界が回る。

金属が潰れる音。

ガラスが砕ける音。

遠くで妻が自分の名を叫ぶ声が聞こえる。

視界が回る。

すべての色が混ざり合い、目を開けていられなくなった。

恒一の意識は途切れた。

そして――

静寂。

「ゴホッゴホッ……みんな、大丈夫か」

恒一は必死に声を出した。

胸が痛む。

体が重い。

やけに喉が渇く。

「パパ……?」

凜の声。

「う、うん……」

悠人も返事をした。

美咲もかすかにうなずく。

全員生きている。

それだけで奇跡だった。

だが――


「……ここ、どこだ?」


割れた窓の外を見て、恒一は固まった。

森だった。

見たことのない植物。

木々は太く、高く鬱蒼としている。

さっきまで走っていたアスファルトの道はどこにもない。

あるのは巨大な木。

絡みつく蔦。

見たことのない草花。

淡く青く光るコケ

「え、なにこれ……」

凜が外を見て顔をしかめた。

「山……?」

悠人が首をかしげる。

「違う」

恒一は小さく呟いた。

外を見回す悠人

「もしかして……これって……」

ニヤつく弟を、姉が訝しげに見つめる。

「悠人?……」

車は大破していた。

フロントは潰れ、タイヤは歪み、ガラスは砕けている。

「……これはまずいな」

恒一は苦く笑った。

警察へ連絡するにも場所がわからない。

ポケットのスマートフォンは割れていた。

「美咲、スマホ生きてるか?」

「私のもダメだわ、圏外・・みんなケガもなさそうだけど、

警察に通報しなきゃね、大事故よ……」

「凜のスマホは動くか? 悠人のタブレットは?」

「僕のはもうバキバキだよっ!」

悠人はあっさりとタブレットを投げ捨てた。

壊れた端末よりも、窓の外に広がる未知の光景に興味津々なようだ。

凜はスマホが壊れている現実を受け入れたくないとでもいうように

何度も電源を押しているが反応は無い。父の言葉にも反応しない。

「凜のもだめっぽいな。とりあえず、出てみようか。みんなでれるか?」


運転席のドアを押す、ギィ・・

「ウッ……かなり硬いぞ!!」

ドアを押し開けると、湿った森の空気が流れ込んできた。

やっとの思いで恒一が車外に出る。

森はむせ返るほど濃い緑の香りがした。

美咲は運転席側に移動しそのまま外へ。

「なんで?私のスマホが……動いて……」

凜はぶつぶつ言いながらまだスマホと格闘していた。

恒一は、悠人側のドアを外からこじ開け子供たちを外へ促す。

「警察へ連絡するすべがないな……どうする?」

「ガソリン漏れてるかもしれないし……少し車から離れましょう」

美咲の提案により、安全も考え一家は明るくなっている方向へ少し歩くことになった。

凜は半泣きでとぼとぼ後ろからついて歩く。

悠人は図鑑でも見たことない植物に興味津々で

「なんでこれ光ってるのかな!?きれーだね!

あ!あれは何の草!?あんなの見たことないよ、やっぱりこれって……」

悠人のワクワクは最高潮に達しようとしていた。

「ねぇ?パパ!!」

「ん?」

「僕の推測が正しければ、ここは異世界だよ!」

「何言ってんだ悠人、それはアニメや漫画の話だろ?」

と、恒一は大きく笑いながら息子の言葉を否定した。

心のどこかで、そうかもしれない、という予感があったとしても。


見渡す限り森だ。

人や文明の気配はない。

「なぁ悠人?もし異世界だったら、あの事故った車、見つかったらだめだよな?」

「どうだろうね、僕の意見としては、見つからないがテンプレだね」

「テンプレ?」

「異世界ものはだいたいそうなんだ」

父と息子の談笑を聞きながら、美咲はこの状況でも楽しそうな二人にほっと安堵の溜息をつく。

我に返った凜。

「ママ、あの二人何してんの?」

「悠人がここは異世界だって言いだしたのよ」

苦笑いで娘に説明し、二人は周りの景色を見渡す。

「こんな大きな木、見たことないわよねぇ……樹齢何年なのかしら……」

「ママ、見て!あの蝶!」

白く淡い光を放って飛んでいく蝶を二人はうっとり見つめる。

それはとても美しく、異世界もあながち嘘ではないかもしれないと思いはじめた。

恒一は振り返った。

潰れた車を見て、ぽつりと呟く。


「……あの車、見つかったら面倒だよな」

警察、事情聴取、説明できない場所。

面倒なことしか思い浮かばない。


この親子の会話は誰も気に留めなかった。

一家が車から離れた頃


一陣の風が吹く。

森がざわめく。

草木が揺れた。

どこからか蔦が伸びてきて、車体に絡みつく。

葉が落ちる。

枝が重なる。

気づけば――


車は、森に飲み込まれていた。

まるで最初からなにもなかったかのように。

しかし誰もそれを見てはいなかった。


どこかで鈴の音がした。


チリン……チリン……


「何か聞こえないか?」

「鈴?」

一家はきょろきょろとあたりを見回す。

鈴の音は大きくなっていく。


ひときわ大きな木の陰から何かが近づいてくる。

巨大なトカゲのような顔の獣人。


隠れる時間はない。

恒一の心臓は、耳元で鳴っているかのように激しく鼓動していた。

息子の興奮をよそに、自分は家族を守り抜けるだろうか――。

込み上げる不安と恐怖を押し殺し、恒一は家族を庇うように一歩前へ踏み出した。


「お前たち、何者だ?」

トカゲ男から低い声が発せられる。


「そ、そういうあなたは、どどどなたですか!?!?」

恒一は焦りからうまく言葉を発することができない。


その時悠人の興奮は最高潮に達した


「異世界確定じゃん!!!!やった!!!」

ガッツポーズで喜びを体現する。

おろおろする女性陣。


少年の歓喜を見たトカゲ男の表情は、驚きに満ちていた。

息子の歓喜により、少し落ち着きを取り戻しつつあった恒一は

高速で思案する。

視線はトカゲ男の手に握られた大剣に釘付けだ。


そしてトカゲ男の背後から馬車が現れる。

「お~い!ガルド~!」

恰幅の良い男が手を振りながら馬車を操っていた。

馬車の窓からは仲間であろう面々が顔を覗かせていたのだ。


焦り思考する恒一をよそに悠人は元気にご挨拶


「こんにちは!!!」


恒一は思わず息子を振り返った。


(お前今そのテンションなのか!?)


春日家異世界初日はこうやって幕を開けたのである。


まだ誰も知らない。

この世界でほんの小さな因果の揺らぎがすでに始まっていることを。

そしてそれがこの世界の運命を少しずつ変えていくことを。


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