55話:本命の服
「うひょー!天使!まじ天使だよ!」
大興奮する昧。
「いやいや、さすがに露出多すぎだって!ほぼ下着じゃん!これ!」
なぜかしっかりと輪っかと羽が用意されている胸とホットパンツに似たものしかない天使のコスプレに文句を言う。
「いいからいいから。ほら、次はこれね!」
ぐいぐいとまた衣装を押し付けられるがさすがに30分ぐらい着せ替え人形になりっぱなしなのでそろそろ注意しよう。
お客さんが少ないとはいえ迷惑だろうし。
「昧、目的忘れてない?私の服は?」
「むぅ、もうちょっと楽しみたかったんだけどなぁ」
そう言って持ってきた数々の服の山を漁り始める。
「お、あったあったはい、これ」
そう言って私に渡してくれたものをその場で広げてみる。
白いワンピースだ。あまり凝った装飾はなく、ワンポイントとして裾などに軽くフリルが散りばめられている程度のシンプルなもの。
「舞桜は素材がいいからね。こういうシンプルなのが1番似合うよ。とりあえず私はこの服返しに行ってくるね」
そう言うと駆け足で店の奥へ消えていく。
その間に私はワンピースを着てみる。
…とても、綺麗だ。
あまり一般的な感性がない私でも分かるくらいに。
鏡に映る自分が本当に自分なのか疑わしくなる。
白い服が自分の白い肌を引き立ててくれて、歩くたびに揺れるフリルがちょっとしたアクセントになっている。
ふんわりと優しいイメージの服だ。
これがシンプルゆえの美しさ、と言うやつなのだろう。
服一つでこうも印象が変わるものなのか…。
鏡の前でくるり、とその場で一回転してみたり、軽くポーズをとってみたり。
普段の私なら絶対にしないようなことをしてみる。
そのくらいテンションが上がっていた。
「どう?気に入ってくれた?」
「うん。とっても」
いつの間にやら戻ってきていたらしい昧にそういいながらカーテンを開ける。
「つぐっ!?」
バッ!と口元を隠す昧。
「どうしたの?」
「い、いや。あまりにも美しすぎて…」
よく見ると手に血がついてる。
…興奮しすぎて鼻血が出ているようだ。
実は昧にはよくあること。
理由を聞いたけど、舞桜が可愛すぎるのが悪いっ!だそう。
正直良くわからない…。
「い、一応他の服も持ってきたんだけど」
そう言って別の服を手渡してくる。
「あ、ゴムも持ってきてるからポニテでよろっ!」
と言った昧の発言の意味は服を着てみて分かった。
今日の昧のようなスポーティな服。
しかし、昧が着ているものよりはどちらかというともう少し女の子よりのものだ。
とても動きやすそうで着心地もいい。
この暗めの色のジャケットもいいアクセントになっていて違和感がない。
そこにポニーテールが加わることで女の子らしさとクールさが同居しているように感じる。
「変…じゃないかな?」
普段着ることのない服に少し不安になりそう聞く。
「うんうん!とっても似合ってる!さすがは舞桜!何でも着こなしちゃうね!」
と嬉しそうな昧。
それからもいくつかの服を試着していった。




