49話:信じてたから
ナイフを捨て、バッ!と距離を詰めてこようとした天宮に対して焔の弓を構えて牽制する。
「ちょ」
慌てて退く天宮。
ヒュッ
それに対してそれぞれの指の間に挟んだ焔の矢を3本放つ。
それぞれの矢の軌道はまっすぐで単調なもの。
もちろん天宮は難なくそれらを避けてみせる。
「まだ舐めプしてんのかよ?」
ニヤリと余裕の笑みでそう言う。
しかし、過ぎ去ったはずの矢がグンッと軌道をいきなり変えて天宮に襲いかかる。
「ほら、ちゃんと避けなきゃ死ぬよ」
一応巻き込まれないようにバックステップで距離をとる。
弓矢は追尾する焔に気づかせないためのブラフだ。
弓矢にすれば勝手にまっすぐしかいかないと勘違いしてくれる。
ドォンッ!と重々しい音と砂煙を立てて直撃する。
「あちちちっ!」
砂煙が晴れるとところどころ制服が焦げた姿の天宮が見えた。
「おまっ、マジで殺す気かよ!この服が防火性じゃなきゃマジで燃えてたぞ!?」
ほとんどダメージのなさそうな姿を見て「ちっ」と舌打ちをする私に
「マジかこいつ…」
とドン引き。
「そうはいっても、あなたが死んだところで私は別に困らないし――」
私が話している途中で一気に距離を詰めてくる。
初撃は腕で弾く。
パンッ!と人間から出ているとは思えない銃声のような大きな音。
ビリビリと弾くために使った腕が痺れる。
天宮の攻撃を受け流すたびにパンッ!パンッ!と大きな音が鳴る。
──一撃一撃が重い。
腕の感覚がなくなってきているしこれ以上下手に受け止めるのは危険だ。
すっ、と姿勢を低くする。
そして片手を後ろにやり、そ半身になることでその手を隠す。
天宮が目ざとくその手を目で追うのが見えた。
これは短剣使いがよくやる自身がどんな刃物を使ったのか、何処を狙っているのかを悟られずに、相手に一太刀を浴びせるために用いられる技術。
…もちろん今の私は短刀なんてものは持っていない、ただの嘘。
でも、さっき天宮は私がナイフを投げたのを見た。
(なら、もしかしたら2本目があるかもって、そう思っちゃうよね?)
ヒュッ
天宮の首元をなぞるように隠した右手を振るうふりをする。
同時に天宮が大きく体をひねる。
攻撃を仕掛けようとしていた天宮にとってはとっさのことでバランスを崩す羽目になる。
そして自身に投げ技をかけたような状態になりドタンッ!!と地面に倒れる。
私は天宮を煽るように何もない手をひらひらとさせる。
「くっそ、マジで焦った俺がバカみてぇじゃねぇか!」
はたから見れば天宮が勝手に体勢を崩して勝手に倒れたようにしか見えない。
「というか!俺が気づかなかったらどうする気だったんだよ!」
さっきの嘘は相手がこれを知っている。
つまり戦い慣れていることを前提とした技だ。
つまり天宮が知らなければ私はそのままノーガードで一発もらっていただろう。
でも、そんな問題はない。
「それはないよ。あなたが強いことは知ってる。
万に一つも警戒しないなんてことはないって信じてたから」
そう言う私の言葉に嬉しいような、悔しいような顔をする天宮。




