45話:日巫女
図書室に一人取り残された私は特にすることもないし、ついでだからと本を手に取る。
教員科から連絡が来るまでの間なので物語系統ではなく、雑学的な本だ。
「卑弥呼について、ね…」
私のご先祖であるその名前を見て反射的に手にとってしまう。
──卑弥呼。
正しい漢字は日巫女であり文字通り太陽、天照大御神の巫女だ。
私の緋巫女とはこの目に合わせた伏せ名のようなものだ。
本の内容としては邪馬台国がどこにあったかもだの、卑弥呼はどういったことをしていただのありきたりなことばかり書いている。
卑弥呼は私達一族の最初にして最大の汚点でもある…らしい。
どうも自分で作った掟を破ったらしいのだ。
奥の手それを3回使った後は自害しろと、そう言われている。
そして卑弥呼はそれを破り何処かに消えたらしい。
掟を破れば鬼になるとそう言われている。
つまり、言葉の通り卑弥呼は鬼になって今のなお生きながらえているのでは、ということが神社に残されてた書物に書いてたっけ?
…なんというか、バカらしい話ではある。
けどわたしは奥の手を一回使ってしまっているし、あと2回使えば死ななければならない。
「鬼になる…ね」
にわかには信じがたいが決まりなら受け入れるしかない。
......それが都合のいい人形である私の仕事だ。
そんなこんなで時間を潰しているうちにスマホにメールが届いた。どうやら面談の準備ができたらしい。
指定された場所に向かってみると申し訳程度に手錠をされた男子生徒が椅子に座っており、その隣にルキア先生が立っていた。
「ほな、後はお二人さんでゆっくり話しい。うちは外で待っとくわ。何かあったらよびぃな」
そう言ってさっさと出ていってしまった。
「えっと…その、先生にも言ったのてすが僕は記憶がなくって…。
その、聞かれても答えられることはほとんど無いかと…」
おどおどと話す男子生徒に嘘は見えない。
どうやら本当に記憶がないらしい。
「う~んとならせめてその記憶がなくなる前後くらいは覚えてない?」
「あ、はい。
ルキア先生にも言ったんですけど記憶がないというのは少し違ってて。
曖昧、というか...ところどころ覚えてる感じという感じなんです...。
なので自分がしちゃったことは朧げながら覚えてます」
「本当にすみませんでした」とそう頭を下げる男子生徒。
「…本当なら何発か殴っておきたいんだけど。
やったかどうかの記憶が曖昧な人殴っても仕方がないし、今は情報さえくれれば許してあげる」
男子生徒が自責の念にかられ過ぎないようにそう言う私。
「はい。ありがとうございます。
......それで、覚えていること、でしたよね」
そうしてう~んと必死に頭を捻りながら覚えていることは話し始める。




