39話:欲張りなんでな
「──お、ま〜お、授業終わったよ?」
「ん…?あれ、昧?」
ごしごしと目をこすりながら机に突っ伏して寝ていたらしい身体を起こす。
「ずいぶん幸せそうな寝顔でしたなぁ。
よほどいい夢をみたと存じ上げますが」
ニマニマとそう言ってくる昧だったが
「まぁ、うん。お母様の夢をね」
というと少し申し訳なさそうになる。
「舞桜のお母さん。すっごくいい人だったもんね…」
お世話になった時のことを思い出しているのか、私から少し目を逸らし、しんみりとした顔になってる。
「そんな顔しないでよ。
完璧に整理がついたって言ったら嘘になるけど、ある程度は受け入れたんだから。
昧が気にすることじゃないよ」
「そう…だね!よし!とりあえずお昼食べよ!」
今の一瞬で気持ちを切り替えたらしい昧が「おー!」と右拳を上へ突き上げる。
昧のこういう切り替えが早いところは素直に尊敬できるんだよね。
色々なことを引きずりがちな私にとっては…。
「あ、ごめん。先に屋上行ってて。
今日お弁当作り忘れちゃって。食堂寄ってくから」
本当は休もうと思ってたから作ってないだけだけどね…。
「へぇ~珍しいね。分かった。ほら!行くよ阿津斗!」
そう言いながら静かにパソコンを打っていた阿津斗を無理矢理引っ張っていく昧。
そんな微笑ましい?光景を横目に食堂へ向かおうと教室を出ると
「よ」
と天宮が出待ちをしていたらしく声をかけてくる。
「…何の用?こっちは急いでるんだけど?」
はぁ、とため息混じりにそう言う。
それとほぼ同時にポイ、と私に向かって何かを投げてくる。
反射的にそれを受け止めて見てみると
──アンパンだった。
「結果として体調悪いやつを無理矢理登校させたからな。
それでチャラってことにしてくれ」
「昨日のことあるしこんなことしなくても…」
なりゆきとはいえ一緒に昧を助けてくれた恩がある。と言うと
「それはそれ。これはこれだ。デカいやつはデカいやつで、返してもらうさ。
──俺は欲張りなんでな」
ニヤリと不敵に笑う。
何やら面倒くさそうなことを考えていそうなんだけど…。
まぁ、実際に助けてもらったわけだからできることはするつもりではあるし。
うん。諦めよう。
「…分かった。それなら遠慮なく貰っておくね」
というか、きちんと私の好きな餡子を買ってくるあたり、かなり詳しく調べてるよね…。
あんまり知らないっていう言葉はどこへやらだ。
「んじゃま放課後楽しみにしてるぜ」
と言って何処かに行ってしまう。
私も昧と阿津斗を待たせてるし、早く行かなきゃ。
そう思い少し駆け足で屋上へ急ぐのだった。




