31話:解呪
それから私たちは二人で寮へと帰る。
腕や胸の傷がズキズキと痛む。
けど、そんなことよりも優先することがある。
「昧、ちょっと胸見せて」
寮に帰って来て早々、私がそう言うと
「う、うん…」
と恥ずかしそうに胸元を広げてくれる。
…やっぱり。呪印が残ったままだ。
このままだとまた同じことが起きてしまう。
そうなる前に解呪をしないと…。
私は動く右手を呪印にそえる。
「今から解呪するけどかなり痛いと思う…ごめんね」
「ごめんは助けてもらった私が言うセリフだよ。」
えへへ、と強気に笑ってみせる昧。
意識を集中させる。
解呪というのは何本もの絡まった糸でできた毛玉を全てほどいて、一本一本に綺麗に分けるようなイメージだ。
そもそも術や呪いというものは術式という構築された式によって成り立っている。
そのためそれをバラバラに分解してしまえば効力を失い、何も起こらないのだ。
そしてそのバラバラにする作業が解呪。
ただ、分解をしていくという都合上ミスをすれば何が起こるのか分からない。
例えば車を修理に出したとしよう。
車を分解された後、何処かの部品が足りないまま修理が終わり手元に返ってくる。
どの部品が不足しているかも知らずに車を走らせるとどうなるだろうか?
そもそも走らないのか、ブレーキが効かないのか、はたまた爆発するのか。
それすら何かが起こるまで分からない。
解呪とはそういう危険な行為なのだ。
「んっ」
痛みを我慢しているくぐもった声。
できるだけ早く終わらせてあげたいのだが、かなり複雑にできているようでその分慎重にならざるをえない。
一つ一つ慎重にバラしていく。
「っ!」
痛みを堪えるようにギュッ、と私の巫女装束を強く掴む。
それに対して心配そうな顔を見合わせると
「だい、じょうぶ、だから。続けて…?」
苦しそうに強がって見せる。
私は昧の言う通りに再開する。
心の中でごめん。とそう謝りながら。
「っ〜!」
ビクンッ!と大きく昧の身体が跳ねる。
5年前から今までの間、どうして気づいてあげられなかったのか。
そんな後悔に胸を押しつぶされるようだった。
息が絶え絶えになりながらなんとか解呪を成功させる。
昧の胸にあった目玉模様は消えて無くなった。
「その…ごめんね。あと、助けてくれてありがとう」
申し訳無さそうに顔をうつむかせながら言う昧。
「ごめんは私の方だよ。もっと早くに気づいていれば…」
「いやいや!私が舞桜に迷惑かけたくなくて隠してたんだから気づかないのは仕方ないよ!」
いや、私のほうが…。と続けようとしたが多分押し問答が始まるだけなので
「…ありがと。昧は優しいね」
と話をすり替える。
「私なんかよりも舞桜の方がずっと優しいよ。
それに…私達が舞桜に優しくしなきゃ、舞桜が甘えられる人がいなくなっちゃうでしょ?」
えへへ、と笑う昧。
…そういうところが優しいって言うんだよ。
それからは昧に何処か変なところはないか。など色々話した後、申し訳無さからなのか自分の寮へと帰ってしまった。
明日も学校があるため、あまり夜ふかししないようにと私はシャワーを浴びたあとに布団に入った。




