27話:もう一件
「苦労した…ね。それはどういう意味で?」
そう言いながら男子生徒を睨みつける。
「言葉通りの意味さ。そいつを操るのに苦労したのにって意味。それをいとも簡単にさぁ。ひどいと思わない?」
やれやれ、と呆れるような仕草をする男子生徒。
「…5年前、あの時昧が暴走したのもあなたのせいってことでいいの?」
「うん。そうだよ?」
なんの悪びれもなくそういう。
昧の勘によれば6年前の百鬼夜行は昧を狙ってのものだったらしい。
─つまりこいつはあの日の件に関わっている。
お母様が死んだ百鬼夜行に…。
そう思う前に体が反射的に動いていた。
──チャキ、と男子生徒の首筋にアヤメ(刀)を当てる。
「おい桜木、殺すなよ?」
私の明らかな殺気を感じ取ったのか天宮がそう忠告してくれる。
それのおかげで少しだけ冷静さを取り戻した。
「血の気が多くて困っちゃうよ」
やれやれ、と首を振る。
こんな状況というのに冷静さを欠かない。何かあるのだろう。
「っ!桜木!後ろだ!」
天宮の声で反射的に右側に避ける。
一瞬遅れて何かが私の頭があった所を過ぎ、続けてパァンッ!という発砲音がした。
「あ~あ、惜しかったなぁ」
特段驚くでもなくそう言う男子生徒。
発砲音がした方向を確認すると除霊高の女子生徒の…霊がいた。
「いいでしょ?こいつは依頼で死んじゃった子なんだけどね、ランクで言うとA。いい掘り出し物だったよ」
子どもがおもちゃを自慢するように言う。
「たす…けて。こんなこと…したくないのに…」
目に涙を浮かべる女子生徒の霊。
昧のように呪いで操られているのかまではわからないが、少なくとも自分の意思でやっているわけではないようだ。
「…ちょっと安心したよ。そこまで清々しいクズだとやりやすくて助かる」
「同感だぜ。よく分からんがこいつぶっ飛ばしゃ解決なんだろ?」
パシッ!と天宮が手のひらと拳を合わせる。
「さっきの一件の続きってことにしといてやるよ」
「へぇ~、意外と太っ腹なんだね」
そんな軽口を叩きながら私は女子生徒の霊、天宮は男子生徒の方へと向き直す。
「な~んかやる気みたいだけど誰も用意してる戦力が1人とは言ってないんだよね〜」
パチン、と男子生徒が指を鳴らすと同時に何処からか霊が集まってくる。
…目算で20数体。
鎧を着込んだやつに、獣の霊。ちらほら強そうなやつもいる。
「死人に口なし、だからね。みんな頑張ってね〜」
ニヤリ、と笑ってひらひらと手を振る。
「これはちょ〜っと面倒くさいかな〜」
苦笑する私に
「こんくらいならなんとかなるだろ?」
と軽く返してくる天宮。
多勢に無勢なこの状況をわかっていないのか…。
と思ったのだが口元が笑っている。
どうやらこの状況を楽しんでるらしい。
私も大概だがこいつもかなりの戦闘狂らしい。
「んじゃまぁもう一件、ちゃちっと片付けますか!」
天宮につられ私も少し頬を緩ませながらそう宣言するのだった。




