1話:人形
―ピピピ・ピピピ・ピピピ―
規則的なアラームの音で目を覚ます。
「んーーっ」
グーッ、と大きく背伸びをしながら起き上がり、頭元に置いてあるスマホを手に取ってアラームを止める。
スマホに映る時刻は5時半。
「はあ、起きるか...」
少々憂鬱になりながらベッドから出る。
眠気覚ましに顔を洗い、歯を磨く。
その後、いつものようにシャワーを浴び、髪を乾かす。
それから朝食を作る。
ご飯にわかめと豆腐の味噌汁、少し手間をかけて鮭のホイル焼き。
うん、我ながらよくできた。
どうせ来るであろう幼馴染のためにもう一人分作っておく。
一人で朝食を食べ終わったころ
―ピーンポーン
チャイムが鳴った。続けて
「ま~お~来たよ~」
という声。
やっぱり来た。
「今行く」
食べ終わった食器を台所に置いて玄関を開ける。
そこには茶髪のショートヘアーでどこか子どもっぽい印象を受ける女の子。
幼馴染みである古川昧がいた。
「えへへ、おはよ、舞桜」
嬉しそうにはにかむ昧。
「おはよう。来ると思ってご飯作ったんだけど食べる?」
私の質問に
「やったー!さすが舞桜!分かってるっ!」
と、両手でバンザイ。
こうも喜ばれると作ったかいがあるというものだ。
それから私は昧に作った朝食を出して学校に行く準備をする。
まあ、今日は始業式だからあまり持っていく物は無いのだが...。
「昧、食べ終わったの台所に置いといてね。洗うのはやっておくから」
部屋越しなので少し大きめの声でそういう。
「わかった~」
という昧の返事を聞きながら私は、ベッドの近くに立て掛けていた刀を手に取る。
今着替えた制服は武装用に改造してもらったものだ。
その後ろに、差し込むようにして刀を隠し持つ。
『生徒の武装を許可し、義務づける』
笑えちゃうくらいに普通じゃない校則。
机の上に置いてある紙を手に取る。
―転校届。
この狂った学校から抜け出すのに必要なもの。
名前を書こうとペンを握るが、紙にペンを当てたところで止まる。
手が、震える。書くことが、できない。
......じっと紙を見つめる。
──ああ、やっぱり私は『人形』でしかない。そう、思い知らされる。
そんな都合の良い人形であることから逃げられない。
私はその紙をそっと机の引き出しにしまい込み、昧のいるリビングに戻る。
私の願いが叶うことなんてないのだろう。
私はただ、幼馴染の2人と普通の日々を送りたい。
それだけなのに...。




