「あの雲のこと、ちょっとだけ調べてみた」
【おはなしにでてるひと】
瑞木 陽葵
お風呂あがり、
ふと思い出して検索してみた“ひこうき雲”。
蓮と一緒に見たから、
なんか、ちょっとだけ“ちゃんと知ってみたく”なった。
――調べたことを共有したいって思える相手がいる夜って、うれしい。
荻野目 蓮
ベッドに入って、スマホを手にとる。
陽葵とのメッセージ履歴が、その日のしめくくり。
短い言葉のやりとりの中に、
なんとなく“好き”がにじんでて、
それを読むたびに、ふわっと眠くなる。
【こんかいのおはなし】
夜。
電気は落として、ベッドに潜り込んだあと。
スマホの画面だけが、
顔の近くで、やさしく光ってる。
《さっきのひこうき雲さ》
《ちょっとだけ調べてみたんだけど》
蓮へのメッセージは、そこから始まった。
《あれって、空の高さとか湿度でできかた違うらしい》
《長く残るやつは、湿度が高いからって》
《なんか、“雲の持続力=空の水分”って、ロマンない?》
少し待ってから、
ぽん、と返事がきた。
《陽葵がロマン語り出すと、だいたい次の話題も飛ぶよな》
《ばれた(笑)》
《でも、たしかに今日のやつ、長かった》
《湿度のせいだったのか》
《“今日の空が、ちゃんとやさしかった証拠”ってことで》
《そう思うと、また見たくなるな》
しばらく、
画面の文字をじっと見つめてた。
そのまま、
なにか言いたくなるけど、
言葉がまとまらないとき――
《……明日も、空見よっか》
そう送ってみたら、
《ああ。明日も見よ》
それだけで、
なんか、すごく安心した。
《おやすみ、蓮》
《おやすみ、陽葵》
画面を伏せて、
目を閉じた。
“今日のことを誰かと話せる”って、
すごくしあわせなことなんだと思った。
明日もまた、
空は見上げられる。
だって――この会話が、その理由になるから。
【あとがき】
ひこうき雲の余韻は、空じゃなくて、
“心の中”に残ってるんだなって思う夜でした。
調べてみた豆知識を、誰かと共有したくなるとき、
それはもう“好き”の証です。
次の空も、ふたりの話題になりますように。




