えんぴつで魔王をやっつけたら、呪われてしまった!?
「行くぞぉ、魔王! たあっ!」
休み時間、自分で作ったゲームを使って、魔王討伐に盛り上がっていた。
僕たちは今、真剣に足し算しながら、魔王と戦っている。
「うわぁぁ、ダメージ、少なすぎるっ。これじゃ全然だよ」
「じゃあ次、ボクの番」
「待て待て、先に魔王のターンだ。消しゴム転がすから」
魔王からの攻撃は、消しゴムに書かれた4人が対象で、名前が出た子が受けることになっている。
攻撃されたら、一回休み。
ノートに手描きした円を数等分に区切って、真ん中に鉛筆を立て、みんなで順番に倒していく。
鉛筆が倒れた先にある数値が、魔王へのダメージ。
え? 魔王はどこにいるのかって?
そりゃあ、僕たちの頭の中と横のメモ。
ダメージを足していって、魔王のHPをすべて削ったら勝利だ。
誰が一番ダメージを与えて、誰が最後にやっつけたか、そこが重要。
小学校の休み時間、仲良し4人組で作ったゲーム。
もう少しで魔王、倒せるんだけどな~~。
「よ──し。とっておきの"伝説の剣"を使うぞ──!!」
僕は筆箱からお気に入りの鉛筆を取り出した。
人気アニメの絵が入った、かっこいい一本。
「これで届け──!!」
パタッ。
鉛筆はクリティカル・ヒットの欄に転がり、僕の攻撃は魔王にとってトドメとなった。
「やったぁぁぁ」
「ついに倒せた──!」
「結構、時間かかったよな」
「あっ、チャイムだ!!」
あわてて散らばり、みんな自分の席に戻る。
僕もノートや鉛筆を片付けている時だった。
耳に。
声が聞こえた。
くぐもったような、大人の太い声。
《ぐぬぬぬ、よくも我を倒してくれたな……。伝説の剣とやらを呪ってくれようぞ。その剣はもう使い物になるまい……》
「えっ?」
あたりを見るけど、それらしい人はいない。
教室は同じ年の子どもだらけで──、あ、いま先生入って来たけど。
(空耳……?)
変だなって思いながら、起立して礼。
午後の授業が始まった。
その日からだ。
僕のお気に入り鉛筆は、削るたびポキポキと芯が折れるようになってしまった。
削り続けるせいで、あっという間に短くなって、すっごい悲しい。
なんでぇ?
「まあ、紘くん。その鉛筆ずいぶん短くなったわね?」
お母さんが言った。
「削ってる時に、すぐ折れちゃうんだ」
「あらぁ。どこかで落とした? 中で芯が折れちゃってるのかもよ」
「えぇぇ」
────あ!!
もしかして、あの時?
(魔王の呪いって、これかぁ)
僕はガッカリしながら、もう魔王退治に鉛筆使うのはやめようって、そう思ったのだった。
ひどいや、魔王。
おしまい
お読みいただき有難うございました!
魔王の呪いですが、その後えんぴつを丁寧に扱っていると解けたみたいです♪
突然どうした?と思われそうですが、こちら「旧執筆途中」に入れていたお話のひとつ。
整理していたら娘に見つかりまして、で、「えんぴつで魔王を倒したら呪われた話って何?」とめっちゃ食いつかれてしまいまして(笑)。8歳なので、もういろいろと読めてしまうのですよ。興味津々なお年頃。
今作は過去に"なろうラジオ大賞"のお題「えんぴつ」用に書いたのですが、「ゲームの説明箇所がラジオ向けじゃないよね」と投稿してなかったのです(;´∀`) あとジャンルどこかなぁと。
でもせっかく書いたお話だったので、このたび出してきました。
少しでも楽しんでいただけましたら嬉しいです(*´▽`*)/
【注】落としたくらいでは中の芯は折れないそうです。折れるのは削り方と、芯の柔らかさのせい。カッターが良いそうです。娘の鉛筆も、よく折れるんだよな~。