第7話 夢
「この世界は『シフリア』と言います。
私の力で未来に10人ほど魔王が出現することを観測したので、かつて世界を救った貴方に力を貸して欲しいのです。」
痛みの続く右の頬を押さえながら、発言する。
「すみません、一つだけいいですか?」
「どうぞ。」
「俺はただ、魔王軍同士のいざこざに乗じて漁夫の利して回っただけで、世界を救ったとは言えないと思いまして…」
俺がやったことと言えば…。
魔王とその娘に命を助けられたので相談に乗ると何故か魔王軍同士で戦闘が起きてしまい、命を助けてもらった恩があるので魔王の方に味方し、蹴飛ばして回っただけである。
攻撃弾いて蹴っ飛ばしていただけであり、直接的にトドメを刺していない。
結果だけ見ればただの漁夫の利だったと言えるだろう。
これは世界を救ったとは言えないはずだ。
「結果的には世界を救っていますよ。人類の脅威も減り、今の魔王は神々に敵対する気は無いですし。」
「じゃあ新しく出てくるっていう10人の魔王は…?」
「分かりませんね!」
何故キッパリと言い切ってくるのだろうか。
「未来を見ようとすると妨害されるんですよ、すっごく頭が痛くなって鼻血が出ます。
恐らく未来の私が干渉しているんでしょうね。」
過去に干渉して見せようとしないのは何故だろう、もしかすると姿を見たら殺しにくるタイプの魔王とか居るのだろうか…。それとも…。
「お願いしますよ、なんでもしますから」
「ん?今なんでもするって…」
「えぇ、全キャラ完凸とか未来のゲーム遊び放題とか、チート能力付与とか運を良くしたりとか色々出来ますよ。」
全キャラ完凸の意味が分からないが、未来のゲーム遊び放題は気になる。
…そうだ!
「そのなんでもする回数を増やしてください。」
ランプの魔神さんや、7つ集めるとなんでも叶えてくれる某龍さんとかを見る度に思っていた願い事を伝えてみる。
「分かりました、10回に増やしますね。ではあと9回になります」
思っていたよりすんなりと通ってしまった。
「知っていたので」
と返される。
まぁ未来見れるとか言ってたしそうなんだろうと納得し、お言葉に甘えさせてもらう。
「アレルギーが無くて、病気にならない健康な身体にしてください!」
アレルギーや病気は怖い。
病気は魔術で治せるけど、それを使える人が居なくてそのまま…のパターンや、病気は魔術で治せないなんてパターン、金が足りなくて医療出来ずに…なんてパターンや怪我が悪化して病気になるなど色々あるだろう。
薬代や治療費は高そうなので、それを無くせるのは大きい。
可能性の話になるが、好きな食べ物が今の身体だとアレルギーで食べられない、なんてことになったら耐えられない。
実は小麦粉アレルギーでうどん食べたら死にかけましたとかも起きかねない。
「確かに、花粉症って困りますよね…。スギ絶滅させた方が早い気がしますけど。」
「あはは……あとハーレムとチート能力と全キャラ完凸と運良くなるのと未来のゲーム遊び放題と俺を全肯定してくれる属性盛り盛り超絶美少女お願いします。」
「ハーレムについて詳しく教えてください、やらかしかねませんよ私は。」
やらかすって何をやらかすのだろうか。
「えっと…そりゃ沢山の女の子囲まれる奴ですね。」
「ヒロイン候補多いんでちょちょいのちょいですね。つい沢山の男性に愛されたいのかと…」
やらかすってそっちか、危なかったな…。
というかそれって逆ハーレムって奴だよね、ジャンルが違うのでは?
「先程の『俺を全肯定してくれる属性盛り盛り超絶美少女』に関しては……、まぁ用意出来ますよ。」
『』内をちょっと真似しながら言うのやめてほしい。
「よく分からないスキルが複数あるので、そのスキルの使い方を教えてほしいです。」
「なるほど…分かりました。後ほど教えますね。」
「後ほどなのは一体何故ですか…?」
「今からゲームさせてあげるから」
「しゃあっ!!」
異世界に来て数年間一切ゲームに触れられなかったのだ。
そして未来のゲームも遊ばせてくれるというのだ。
「いくら時間があっても足りねぇぜぐへへ…」
「時間は良い感じに歪めるので沢山楽しみましょう!!」
ということで俺とクロノスは一旦ゲームに没頭してしまった。
が、そのゲームを楽しんでいるシーンなどカットである。
序盤こそ盛り上がっていたが、1000時間を越えてからは無言でコントローラーカチカチしているだけだったのでカットである。
最低でも10000時間以上はプレイしてた。
「ふぅ…楽しかった…。最後のお願いはね…、今後俺の言うこと全部都合の良い感じに叶えて欲しいかな!」
「職権乱用で怒られちゃうよぉ…私は悪くない私は悪くない私は悪くないお前が悪い」
現実逃避をしだす女神様、本当に叶えてくれるのだろうか…、と少し不安になる。
なんでもすると言ってくれたおかげで忘れかけていたが、大事なことを聞くべきだった。
「なんで俺は女の子になってるの?」
「そうですね…、今の貴方は降霊術というスキルによってその身体に降ろされた、といったところですね。
スキルを使用した元の肉体の持ち主ですが…、無事ですよ。恐らく部屋で先生とかトレーナーとか開拓者とか強化人間とか褪せ人とかハンターとかマスターとかデュエリストになってると思います。」
ハンターとトレーナーとマスターしか分からない…、何故か焦土作戦、銀行強盗、闘争などといった物騒な文字が頭に浮かび上がってくる。
「あの、ウ◯娘とかモ◯ハ◯とかFG◯とかは日本から出てるゲームだけどブルー◯ーカイブとか崩壊ス◯ーレイルとかゴーストオブツ◯マとかの日本産でないゲームはOKなの?ちょっと怒られそうじゃないかな…」
「そういうのはこれ書いてる人がなんとかするのであって私達には関係ないんでセーフだと思いますよ?向こうだってオ◯ガのパロディだのヤム◯ャのパロディやってますし。こっちは大笑いさせて貰ったんですから敬意を持ってパロディし返して大笑いさせてやるくらいの精神で行かなきゃ失礼じゃないですか?」
「うへ…そんな難しいことおじ「はいパロディしましたお前の負けですー。そんなんだから◯ーモンド◯イに負けるんじゃないんですかーー?」
「◯ーモンド◯イに負けて八つ当たりにア◯シュベ◯ド狩りに行ったらア◯シュベ◯ドにも負けてるような女神様だけには言われたくないですー。ホ◯ノ引けてないくせに!」
「てめーは私を怒らせたぁ…!」
「やってみなよ◯ーモンド◯イに勝ててない癖に」
「ぐすっ…」
「泣くのはやめてよ」
凄く脱線してしまっていた事に気付いたのはクロノスが泣き止んだ後だった。
「何の話してましたっけ。」
「…えっと降霊術が云々ってとこ。」
「あっ、ラフィのこと言おうと思ってたんでした。沢山の神様の分体に甘やかされながら無事にゲーム三昧ですよ。」
無事ではあるのだが…、将来が不安だ。
異世界の文明に触れ、ゲーム三昧となると凄く不安になる。
身体を返した後に不便過ぎて変な事しないか不安だ。
「ここは時空が歪んでるのであの子…ラフィはもう20歳ほどですよ。」
「もっとダメじゃん!」
より不安になってしまった。
「あの子の名前ってラフィっていうんですね」
「そうですよ」
「会いに行ってきてもいいですか?」
「いいですけど、オススメはしませんよ?自己責任です。」
ふと気になったので行ってみることにした。
20歳…俺?と言っていいのか分からないが、まぁ、未来の自分の姿が見れるのだ。
まずは扉をノックする。
部屋に入る時には絶対ノックが必要だろう。
着替えているなどのラッキースケベイベントが起き、理不尽に殴られたとしても悪いのはあっちの方になるはずだ─────多分。
「ラフィさん、入りますよ~」
返事してないのに入るのはダメだと思う。
バンバンッと机を叩く轟音。
そっと扉を閉め、見なかったことにする。
後ろ姿しか見れなかったが、凄く元気そうなので心配なさそうだ。
とりあえず特徴的なアホ毛と、明らかに不健康そうな生活を送っているのに太っていないことだけは確認出来た。
「お話の続きしようか」
「スルー!?」
だって関わりたくないもん。20歳にもなって甘やかされて育った台パンしてるゲーマーの女とか。
元の部屋に戻り、話を戻す。
「では、俺が女の子になってることへの説明をですね…」
「そうでしたそうでした。説明の続きですね。ラフィは追い詰められ、藁にも縋る思いでスキル【降霊術】を使い、貴方をその身に降ろした…、というわけですね。まさか神に干渉するほどの力をただの人間、…それもあんな幼い少女が持っているとは思いもしませんでした。」
魔物とかそういった類だろうか。それか人攫いか…?
「少し失礼しますね、気になることがあるので」
と考え事をしていると、俺の胸にクロノスは顔を押し当ててくる。
「12歳なんですから、あまり無茶はしていけませんよ?」
「12歳だったんですか!?てことは俺、2歳くらいサバ読んでたのか…」
ちなみにだが、この夢を見ているのは前回の話から4年後である。
目覚めた時は10歳だと思い込んでいた為、今は14歳くらいだと思っていたが12歳だったとは。
「では、そろそろ現実に戻りましょう。それと、貴方が前世で使っていた…一度も抜刀することのなかった神器を都合の良い感じに渡します。
…あっ、クロノス様って十回書いた紙を枕にしたに置いて寝るとここに来れますよ」
…この世界の紙ってまぁまぁ高いのにな…。
目が覚めた、時計を確認する。
朝の5時か……まだ早いし、あと3時間くらい寝よう。
時計、高いはずなのに安く売ってくれた店主の顔を思い出す。この村の人々が善良過ぎて心配になる。
また、夢を見た。
太陽のように煌めかせている長い金髪、だが髪の先端だけが蒼く輝いている。
そんな遠目からでも目を奪われる美貌をした少女…だけどその姿にはノイズのようなものがかかっていた。
…俺を見下ろし、俺へ向け杖を構えていた。
その少女と、目があった途たん
むねが、とっても、あつくなった
あおいひかりがわたしにささって
いたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくてつらくてくるしくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくていたくて
めのまえがまっくらになった
「■度はき■と、■■■な■から。」
最■までお■みい■■きあ■がと■■ざい■す。誤字・脱■報告、感想お■■■■■■■。
エレナ「ホラー展開やめてくんない?」
…………
エレナ「今私だけかよぉっ…!」
■■■■■■「■…居■…」
エレナ「ひゅっ…」
■■■■■■「■も■■■■かっ■ん■け■な…」
ちなみにですが、クロノスはエレナが何を言ってくるのか事前に分かっていました。
なので未来を見て適当に言っただけで、未来のゲームを遊ばせるのとスキルの使い方を教える以外は特に何もしていません。