表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

第6話 二度目の説明は女神様からで

特に変わったことが起きない日々だった。

朝起きて、井戸に水を汲みに行き、お世話になっているマオの両親に挨拶をする。

朝ご飯を食べた後は、薬草を取りに向かい、ゴブリンなどが居ないかなど安全に気を付けながら薬草を取る。

時折ゴブリンが居ることがあったが、気付かれないよう引き返して、村の大人達に相談する。

この村の大人達は、めちゃくちゃ強かった。

朝起きて挨拶しに広場へ出ると、ゴブリンから贈り物が山積みになっていた、なんてこともあった。

どうやらこの付近に住み着いたゴブリンは友好的らしい。…妙に人に詳しいらしく、人が喜びそうな物、例えば野菜や果物、鉱石、魔物の素材などだ。それもどれも高価な物だったそうだ。

怪我人が出た時は村長さんが素早く回復魔法をかけて回ることが多いが、多過ぎる場合や村長さんが腰をやってしまった場合俺が手伝うことになっている。

「村長より、嬢ちゃんに薬塗ってもらう方が治りやすいのにな」などと軽口を叩く人も居た。毒込めといた方がいいだろうか。

村長さんが癒してまわることや、そもそも怪我人が出ること自体が少ないはずだが、俺やヒカリ、マオが取ってくる薬草を村の大人達は高額で買ってくれた。

薬草を料理に混ぜるといい感じになるからだそうだ。

友好的なゴブリンに敵対するゴブリンを狩ったり、デカい虫を狩ったり、護衛したり、薬草を刈ったりして稼いだお金はお世話になっている礼として、マオの両親に渡した。

そんな特に変わりのない生活をしていると、ある日急に夢に女神様が出てきた。

「勇者様、早く王都に向かってくれませんか…?」

この部屋テレビ置いてあるじゃん。

俺は女神様の要求そっちのけで、現代の物に目を引かれていた。

というか漁った。

なるほどなるほど、えっちなゲームはどこかな…?と漁っていると

「君消す」

と怒られたのでしっかり謝った。

「ごめんなさい」

綺麗な土下座。これぞ日本人の誉れかもしれない。

「では、貴方の付近にちょうど聖女が居るのでその聖女を向かわせます。話をきちんと聞いてあげてくださいね。」

聖女様が来てくれるらしい。

事前の話をすっ飛ばして本題をぶち込んでくるが、ゲーム漁りで話が一切入っていなかっただけかもしれない。

それと、俺はこの女神様の名前知らないからなんて呼べばいいのか分からないのは困る。

「質問があるかと思いますので、その前に飲み物持ってきますね。」

飲み物を持ってきてくれるらしく、女神様は扉を開けて出ていった。

今の内に聞きたいことを整理していこう。

まずはこの世界の状況、一旦説明されたとはいえ忘れている可能性がある。改めて説明してもらいたい。

次に女神様の名前。

何故俺は女の子になってしまっているのか。

そして最後に、何故ジャージ姿なのか。

長くないだろうか。

───10分経過

「長くない!?ちょっと見てくるか…!」

「遅れてすみません、持ってきました、エナドリです。」

思わずフリーズした。

お茶じゃない…!?いやお茶持ってこいって訳では無いがエナジードリンク!?と困惑していると、口の中にエナジードリンクの後味だけが広がってきた。

何故か注がれていたエナドリも減っている。

「何かしました?」

「なんでもありませんよ?」

真面目に答える気がなさそうなのと、何か急いでいる様子なので質問を始める。

まずは一つ目。

「女神様の名前って何ですか?」

「私は女神…、時を司る女神、クロノスです。

えぇ、先程の『何かしました?』という質問にお答────、こほん、なんでもありません。勇者様のことは今後エレナさんとお呼びしますね。」

転生する時に色々話しかけてくれたのもこの女神、クロノスだろう。ライトノベルを読んでいたので、雰囲気的にこいつ女神なんだろうなと分かっていた。ジャージ着てたけど。

確か俺達がこの世界に召喚された際は、確か胡散臭そうな聖職者による説明だった。その胡散臭そうな聖職者の横に居た綺麗なお姉さんに見惚れていたことしか覚えていない。

ん、説明…?説明されてなくないか?十人の魔王があーだこーだと王都へ行けくらいしか説明されてないぞ?

「クロノスさん、まず説明してもらっていいですか?説明してもらう前に森に放り出されたんで分からないことだらけなのと、忘れっぽいので…、改めて説明して下さい。」

「では、この世界……。

……アレ、名前…?何だったかしら…えっと台本台本…。こういう説明の時の為に書いた台本どこに置いたかな…。」

この女神様ひょっとして駄女神かもしんない!

「すみませんエレナさん、台本探してくれませんか?殴れば人を殺せそうなくらい分厚くて青い本です。」

「はい、分かりました。」

と言っても探せそうな場所は…割とあるな。

椅子やソファ、クッション、ベッドや机、本棚、テレビ、ゲーム機と至って普通な部屋だ。

元の世界で見たことあるものばかりで、本棚には漫画や小説が並んでいるが、順番がバラバラである。

台本を探しつつ、ついでに本の並びを整理しておく。

気になってしょうがない、というか凄くイライラする。

『転生したらユニコーンだった件』、『この無敗の女騎士に敗北を!』、『社畜転生〜異世界行ったし働きます〜』、『時々ボソッと銀行強盗する狼さん』、『死亡フラグクラッシャーになりたくて!』、『ねずみのこ』、『うしのこ』、『とらのこ』、『うさぎのこ』、『おしるこ』、『たつのこ』、『へびのこ』、『うまのこ』、『ひつじのこ』、『さるのこ』、『とりのこ』、『いぬのこ』、『いのししのこ』、『ユニコーンボール』、『ユニコーンクエスト』、『レース・ア・ライブ』、『ユニコーンアーカイブ』、『ホーホーの絶妙な冒険』、『ユニコーンボール』、『◯魂』…アニメ化されてるタイトルしか無い。

…ユニコーンと十二支の圧と他はパチモンばっかなのに最後だけ本物があるってところ以外は普通である。

「ん?空洞あるな」

この本棚、妙なスペースがある。

どう開けるか分からないので持ち主のクロノスに聞く。

ゲームならまずは自力でやるが、これは他人の物である。他人の物である以上変なことをして壊すわけには行かない。

変なことをして、クロノスの機嫌を悪くしてしまえば最悪消される。やらしいゲームを探そうとしたり、適当過ぎる態度を取ったりと既に2アウトなので次はないかもしれない。というか君消すって既に言われていた。

「本棚に変なスペースあるんですけど、どう開けるんですか?」

「えっ、あ、いやー、そんなとこには無いと思うし開ける必要ないと思うなー。うん、開ける必要無いし教える必要ないようんうん」

なんという棒読み&早口、挙動不審である。目も合わせてくれないし。

「もしそこにあった時はどうしてくれるんですか?」

「だって見られたくないものが…。あっ」

何かを思い出したかのように本棚へ近付き、妙なスペースに手を当てる。

そしてその妙なスペースを開けると女神様は固まった。

「切腹します」

「急にどうしたんですか!?」

急な切腹発言はやめてほしい、心臓に悪い。

「台本ありました」

…あぁ。うん、そりゃ謝りたくなるだろう。

「見られたくないものってなんです?」

非常に気になってしまう、見られたくないものって何、すっごい気になる。気になりすぎて昼も寝られない!

女神様が身体を使って見られないように隠してくるので、俺はつま先を伸ばし見ようとする…と。

本が一冊落ちてきた。

表紙には薄着の女性が二人───

「なるほどいい趣味してますね」

「えっ」

褒めたつもりが、妙な空気になってしまう。

「ちゃっ、ちゃうんすよ、私はかなり下の方の分体だから感性とかそういうのも人に近くになってて…、だから本体のクロノスはそういう趣味じゃないはずだから!神全般のこと勘違いしないでね!!!!!」

動転していて口調がおかしくなるクロノス。それはそれとしてとても大事な設定が飛び出ていた。

「親しみやすい神様は基本的に分体って認識でいいの?」

「そうですね!例外も居ますけど分体はもう名前だけ一緒の別の…、凄く弱い神様だと思っちゃってください!」

「例外は?」

「ゼウス様」

なるほど理解した。

結構落ち着いてきてくれたらしい、口調も戻ってきている。

「それはそれとしてぇぇぇ!!!」

唐突に全身全霊のビンタを繰り出してきた!

最後までお読みいただきありがとうございます。誤字・脱字報告、感想お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ