第4話 1度目の襲撃は直感で
マオの家に寝泊まりさせてもらって数日が経った。
「エレナ、狩りに行くぞ」
急だなぁ…
「急げ急げ、ヒカリも待っておるぞ」
「私行くって一言も言ってない…」
寝泊まりさせてもらってるんだから仕方ないので行くことにした。
寝泊まりさせてもらっていた間にスキル《武装創造》で武器をいくつか作っておいた。
10歳ほどの俺でも、扱えそうな武器。
短剣5本と弓が一つ。
短剣は何かあった時の予備用として多めに作っておいた。
《鍛冶》スキルも合わせて使う。
武器を創造し魔術で強化を施す。強化された武器を投影し複製、複製された物を分解し、それをリソースとして再度強化する。
それを何度も繰り返すことで武器の質を上げる。
魔力が切れるまでそれを何度も繰り返す。
そして出来上がった物を複製すれば上等な物を大量に量産出来る。
欠点は凄く時間がかかること、そして俺の体調が著しく悪くなることだろう。
狩り、と言ってもただ薬草を集めるだけの簡単な…だけど大変な仕事だった。
子供に任せる仕事なんてそんなもんだよね…。
鑑定スキルがあるので判別自体は楽だった。
マオに先程創造した短剣を貸し、薬草を刈っていく。
…ここに現物があるし、ちょっとズルしちゃうか。
《投影魔術》
物体を魔力を用いて投影する魔術。この魔術はイメージ力が大事となる。今回の場合は現物があるので簡単な手段、左手に持ったオリジナルを見つめて、丁寧に模写するイメージで、複製する。
スキルレベルを上げる為にも沢山使って行かないといけない。その為にも日課頑張らないと。
体調を崩さない程度であれば薬草ならば30本程度は出来そうだ。
「二人共もう集め終わったんだ。じゃあ片付けしてさっさと帰ろ」
「もう済ませといたよ」
薬草を袋に詰めるだけだった。
マオに貸していた短剣を返してもらい、その場を離れる。
帰るまでが遠足…じゃなかった、依頼だ。
油断は禁物であろう。気配察知を起動しておき、周囲の警戒を怠らないでおく。
気配察知により近くにゴブリンが数匹居ることが分かった。
「二人とも止まって。」
二人に警戒を呼び掛け、臨戦態勢へ。
俺は短剣を構え、ヒカリも直剣を構える。
マオは既に魔術がいつでも迎え撃てるよう準備している。
エレナとしては初の戦闘だ。
虫さん?アレは逃走だから戦闘じゃない。
数はどのくらいだろうか分からない。複数居るのは分かるんだが、感知スキルのレベルが低いせいかそれともゴブリン達のレベルが高いのか…、もしくはその両方か。
茂みからゴブリンが複数飛び出す。
素早く前方に7匹、後方に5匹居ることを確認した。
3対12、数はこっちが不利だ。
ゴブリンが12匹も居る、斥候にしては数が多いな。付近に巣穴があると考えた方がよさそうだな。短時間で殲滅しないと増援の恐れがある。
内1匹はかなりデカい。ゴブリンではなくオークではないかと間違えるほどの大きさだ。
「チッ、あいつホブゴブリンじゃぞ!取り巻きから仕留めるぞ!」
なら先手必勝、先制攻撃で確実に一匹は持っていくしかない。
持っている武器は魔術で強化を施しただけの短剣が5本、そのうち1本はマオに貸している。弓は持ってきたが矢を忘れてしまったのでノーカウント。先程薬草を投影してしまったばかりなので矢の投影は不可能だろう。
不意を突く必要がある。
なら…右手に持っている短剣を投げ、手を離す瞬間に風魔術を発動させて加速させると同時に走り出す。
「ヒカリはマオの援護お願い!」
「了解!」
ゴブリンの右目にクリーンヒットし、視界を奪うことに成功した。
「ギイッ!?」
魔術には応用技がある。
魔力を過剰に込める【オーバーチャージ】。
そして魔術を使いながら斬るようなイメージをする【スラッシュ】。
どちらも普通に魔術を使う時よりも魔力を多く消耗してしまうが、威力は結構上がる。
普通のファイア4発で仕留められたトゲ虫をオーバーチャージであれば2発、スラッシュであれば3発。そして重ね合わせた物なら一撃。
威力は4倍以上になっていると考えていいだろう。
それを左手の短剣に纏わせ、右目に刃が突き刺さった痛みで動けない獲物の腹に向けて突き刺す。更に右目に刺した短剣を引き抜きながら魔術を発動。
その烈風によりゴブリンは臓物を撒き散らしながら上半身を無くした。
奇襲により同胞が一瞬にして刈り取られた事実が受け止められないのだろうか、唖然としているゴブリンの首元めがけて、逆手持ちした右手の風魔術を纏わせた短剣で斬り上げの斬撃を浴びせ、体勢を崩したのを確認、その勢いのまま回転し左手の短剣に風魔術を纏わせ一刺し。
先程の同胞と同じく上半身が吹っ飛ぶ最期を迎えさせた。
この間で5秒。
両手の短剣に風魔術を纏わせながら次の敵を見据える。
動き始めたな、しっかり対応しないと…!
「でりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
声の方向を見ると、ゴブリン達があっという間に真っ二つになっていたり、氷漬けになったりしていた。
そして俺を見ていたことで横への警戒が疎かにしたゴブリンをヒカリが一刀両断にし、そのまま返す剣でさらにもう1匹を両断。
「【アイス・スピア】ッ!!」
マオが氷の槍を放ち、2匹を瞬く間に仕留める。
俺だって見ているだけではない。
魔術で隙を作り、ゴブリンに喉元を掻っ切る。
そして残ったホブゴブリンに対し、刀身に風魔術を纏わせた短剣を投擲。
腕で防がれた…だが、浅く刺さった!魔術を維持したままマオに指示する。
「マオ、短剣刺した腕に向かって魔法お願い!ヒカリはトドメ任せたよ!」
「「任せて!」」
マオが氷の槍を射出し、短剣をより深くまで刺さる。
深くまで刺さった短剣に纏わせた風魔術を炸裂させ、ホブゴブリンの腕を切断する。
「グギャァッ!」
「【ライトニング・アクセル】【ファイア・アクセル】!】
【ライトニング・アクセル】と【ファイア・アクセル】で二重加速をした俺はホブゴブリンの放つ苦し紛れの斬撃を避けつつ、右足の足首に対し斬撃を放つ。
さっき浅く刺さったのが奇跡だと思えるほどに堅いな。魔術で加速しているのに全く刃が通らない。
両手に持った短剣に風魔術を再び纏わせつつ暴れるホブゴブリンの斬撃を避け再び足元へ。
先程加速した状態で斬撃を浴びせた箇所に対し左手に持った風魔術を纏わせた短剣を突き刺す。
腕を切断したやり方と同じ方法だ、だが腕なんかよりも脚のほうが太い。
二つ同時に炸裂させれば落とせるはずだ。
だが、ホブゴブリンは俺の方ではない方向、マオの方へ駆け出す。
「こいつっ!」
すかさず、右足に刺した短剣に纏わせた風魔術を炸裂させつつ、一気に距離を詰めその勢いのまま斬りつける。
走っている体勢で足首を切断されたことによりに勢いよくこけ、致命的な隙が生まれる。
その隙をヒカリは見逃さない。
ヒカリは直剣を輝かせ、斬撃を放つ。
【ブレイヴ・ストライク】
それは希望の象徴である者のみが放つ事が可能な、希望の象徴のチートっぷりを表す通常攻撃である。少し溜めが必要な代わりなのだが空間属性を持ち、空間属性であるが故に防御を許さない。
そしてその斬撃の軌跡は、爆発する。
最後までお読みいただきありがとうございます。誤字・脱字報告、感想お待ちしています。
ヒカリ「うーん、大ボスにトドメを刺す。これは主人公の活躍だね、間違いないよ」
マオ「メインヒロインネタの次は主人公ネタか、飽きない奴じゃの」
エレナ「主人公私なんだけど」
ヒカリ「じゃあメインヒロイン誰だよ!」
エレナ「私…かな?」
ヒカリ「驕るな─────!」
エレナ「司祭っぽく言うな────!」