悪い意味の有名人
ラキュレスとリングは有名人になった。悪い意味の有名人だ。家に火を放ったドラキュラとして、噂になったのだ。
ラキュレスはさぞかし不満だったろう。嫌ならば、火を放たなければいいものを。
ラキュレスは未だに、城には帰れていなかった。道が分からず、昼夜関係なく森を彷徨っていた。昼間は太陽の光が届かない洞窟などを選んで歩き、夜は昼間に歩いた洞窟から出て城を探した。
飲み食いをしていないため、当然、空腹状態だった。空腹なら尚更、苛立つものだ。獣のような状態で、動物ですら近づかなかった。
ラキュレスが城を探し始めて3日目、ようやくリングと再会した。
ラキュレスは汚いものを見るような目で見た。
「おい、なぜ沼にはまっているんだ。沼があるのが分からなかったのか?」
ラキュレスは聞いた。リングはとても嬉しそうな顔をして言った。
「はい!見えていませんでした!」
なぜか堂々と、自信満々に言った。それが気に食わなかったのか、ラキュレスは糞でも見るような表情になった。そして、何も言わずにその場を立ち去った。
響はそわそわしながら、モンゴルの中心部の街に向かった。
生活のために中心部に向かうことに加えて、蓮を探すという目的もあった。
(蓮ちゃんがモンゴルにいるとは限らないけど、行かないより行った方がいいよな。)
響はそう考えた。
モンゴルの街に着いた。街にしては人が少ないように見えた。しかし、それはおそらく東京の街を見ていたからだろう。人口密度は東京の方が高いからだ。
「着いた!街、街!」
翔はいつになく嬉しそうだった。
(美味しそうな匂いがする。)
みつきは匂いにつられて、ふらっとどこかに行ってしまった。
響は自由奔放な2人の世話が大変そうだった。
響がみつきを連れ戻そうとした時、誰かに呼び止めれてしまった。
「あの、少しよろしいでしょうか。」
その言葉に響は振り向いた。何事かという顔だった。
「私は朝売新聞の記者の高田という者です。では早速、この前の飛行機墜落事故で、救助隊に道を教えたという男性はあなたですよね!」
響は顔を真っ白にした。まずいと思ったのだろう。どう答えるか、早く答えなければ不審に思われる、と彼は焦りを見せた。
すると、みつきが戻ってきた。記者との会話を聞いていたのかは分からないが、何もかも知っているような顔で響の元に来た。
「記者さん。帰ってください。迷惑なんです。他所様の話に首突っ込んできて、タダで帰れると思わないでくださいよ。」
みつきの言葉は冷たく、とてもキツイ言い方だった。カメラが回っていたため、その様子もしっかりと撮られてしまっていた。
(すげー、俺こんなにビシッと言い返せないよ。)
響はただただ感心していた。
高田記者は歯がゆい気持ちだった。しかし、このままインタビューを続けたとしても、一切答えてくれる気がしなかった。
高田記者は渋々帰って行った。
「よっしゃ、記者帰って行った。ありがとよ、みつき。」
響は満面の笑みを浮かべた。
しかし、喜んでいられるのも今のうちだった。
みつきが記者に言い返したシーンがネット上に拡散されていたのだ。悪口のようなことを記者に言ったみつきと、救助隊に道を教えた響。
響とみつきは自分たちにとって、悪い意味の有名人になっていた。




